「持ち家は資産になります」は本当? 建物は築20〜25年でゼロと見られています
営業トーク
「家賃は払っても何も残りませんが、ローンなら払い終わったとき資産として残ります。しかも月々の返済額は、いまの家賃と変わりませんよ」
結論
資産になるのは事実です。ただし残るのは主に土地で、建物は減っていきます。国土交通省は中古戸建てについて「築後20〜25年で建物の市場価値をゼロとされる慣行がある」と書いています。そして持ち家には固定資産税・修繕費・火災保険料が別にかかるため、月々の返済額と家賃を並べる比較は成り立ちません。損得を決めるのは、最後にいくらで売れるかです。
住宅展示場でも、銀行でも、だいたい同じことを言われます。
「家賃は払っても何も残りませんが、ローンなら払い終わったとき資産として残ります」
「しかも月々の返済額は、いまの家賃と変わりませんよ」
前半は事実です。 家は資産として残ります。
問題は、何が、いくら残るのかです。
先に結論
この記事の結論
残るのは
主に土地です。建物は年数とともに減っていきます
国土交通省いわく
中古戸建ては「築後20〜25年で建物の市場価値をゼロとされる慣行」があります。35年ローンなら完済前です
しかも
持ち家には固定資産税・修繕費・火災保険料が別にかかります。家賃には含まれていた費用です
だから
月々の返済額と家賃を並べる比較は成り立ちません。損得を決めるのは、最後にいくらで売れるかです
「資産」は土地と建物に分かれます
不動産は、土地と建物という性質のまったく違う2つでできています。
| 減るか | 特徴 | |
|---|---|---|
| 土地 | 減らない | 使っても古くならない。値動きはするが、なくなりはしない |
| 建物 | 減る | 年数とともに価値が下がっていく |
税金の世界では、建物は毎年価値が減るものとして扱われます。国税庁の耐用年数表です。
| 構造 | 住宅用の耐用年数 |
|---|---|
| 木造・合成樹脂造 | 22年 |
| 木骨モルタル造 | 20年 |
| 金属造(骨格材3mm以下) | 19年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 |
補足
これは税金の計算に使う年数です。「22年で住めなくなる」という意味ではありません。手入れをすれば木造住宅はもっと長く使えます。 ただし、市場での評価は別の話です。次に見ます。
🔴 市場では、築20〜25年で建物はゼロと見られています
ここが、この記事でいちばん重い事実です。国土交通省の報道発表です。
現在、我が国の中古戸建て住宅については、取引時に、個別の住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年で建物の市場価値をゼロとされる慣行があり、中古住宅流通市場活性化の阻害要因となっています (国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」の策定について)
同じ指針の資料には、もっと具体的に書かれています。
中古戸建て住宅については、流通時の評価の際に主に原価法が用いられているが、その運用にあたっては築年数のみを基準とする評価(築後20〜25年で建物価値をゼロとみなす)が一般的
・リフォームをしても価値の下落ペースが変わらない ・メンテナンス状況によっては、建物がマイナス評価となる場合もある (同・指針のポイント)
実際は
「個別の住宅の状態にかかわらず一律に」——大事に住んでいても、リフォームしていても、築年数だけで判断される慣行がある、と国が書いています。 そして状態によってはマイナス評価、つまり解体費を引かれることもあります。
35年ローンを組んだ場合、建物がゼロと見られる築20〜25年は、まだ返済の途中です。
図解① 35年ローンと、建物の市場価値
0年目
購入。土地+建物を買います
20〜25年目
建物の市場価値はゼロとされる慣行。ローンはまだ10〜15年残っています
35年目・完済
残っているのは主に土地。「資産として残る」の中身はここです
だからマンションを含め、土地の持分が小さい物件ほど、この影響は大きくなります。逆に土地の価値が高い場所なら、建物がゼロでも資産は残ります。
公平に書いておきます
国交省は、この慣行を「問題だ」として指針を出しました。 変えようとしている側です。
指針では、基礎・躯体の性能に応じて20年より長い耐用年数を設定し、長期優良住宅なら100年超の耐用年数も許容する、リフォームで価値が回復・向上したと評価する、という考え方が示されています。
つまり「必ずゼロになる」という話ではありません。 ただ、いまの取引慣行はそうなっている、というのが国の認識です。
🔴 得か損かは「いくらで売れるか」で決まります
持ち家で金銭的に得をするかどうかは、結局ここに集約されます。買った額より高く売れるか。
国土交通省の不動産価格指数を見てください。2010年平均を100とした数字です。
| 指数(令和7年9月・季節調整値) | |
|---|---|
| 住宅総合 | 145.4 |
| 住宅地(土地) | 120.7 |
| 戸建住宅 | 118.6 |
| マンション(区分所有) | 222.2 |
図解② 2010年からの値動き(2010年平均=100)
全国平均です。同じ「持ち家」でも、種類によって値動きがまったく違います。そして地域差はこれよりずっと大きくなります。
戸建住宅(118.6)は、土地の指数(120.7)とほぼ同じ動きです。建物の値上がりがほとんど乗っていない、と読めます。いっぽうマンションは222.2。
CHECK
同じ「持ち家」でも、結果はまったく違います。 「持ち家は資産になる」は、どの物件かを言っていません。決まるのは物件ごとです。
ここに注意
これは全国平均です。あなたの物件が同じように動くという意味ではありません。地域・駅からの距離・土地の広さで大きく変わります。
🔴 月々の返済額と家賃を並べても、比較になりません
ここが実務でいちばん誤解されるところです。
「家賃10万円、ローン返済も10万円。なら買ったほうが得ですよね」——この比較は成り立ちません。 中身が違うからです。
図解③ 同じ「月10万円」でも中身が違う
賃貸の家賃10万円
建物の税金も、修繕費も、火災保険(建物分)も大家さん側が負担しています。壊れたら直してもらえます
持ち家の返済10万円
これはローンだけの額です。ここに固定資産税・修繕費・火災保険料が別に乗ります
だから
同じ10万円ではありません。持ち家側は、この上にいくら乗るかを足してから比べます
持ち家で別にかかるものを並べます。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年かかります。固定資産税の標準税率は1.4%(地方税法350条)。住宅用地には軽減の特例があります |
| 修繕費 | 外壁・屋根・給湯器・水回り。戸建なら自分で積み立てる必要があります |
| 火災保険料(+地震保険) | 建物分は自分の負担になります |
| 管理費・修繕積立金 | マンションの場合。積立金は年数とともに上がる計画が一般的です |
| 購入時の諸費用 | 登記費用、仲介手数料、ローン手数料など。戻ってきません |
実際は
「月々同じ」は、比べる項目をそろえていません。 家賃には含まれていたものが、持ち家では別請求になります。
なお、火災保険の考え方は地震保険の記事、「無料」「実質」の見方は営業されたら確認する10項目にまとめています。
では、何と何を比べるのか
このブログのいつものやり方です。月額ではなく総額。
| 計算するもの | |
|---|---|
| 賃貸 | 家賃 × 住む月数 + 更新料 + 引っ越し費用 |
| 持ち家 | 購入価格 + 購入時の諸費用 +(固定資産税+修繕費+保険料)× 年数 + ローン利息 − 売却額 |
最後の項がすべてを動かします。 売却額が大きければ持ち家が有利になり、小さければ不利になります。
そして売却額は、買う時点では誰にも分かりません。
CHECK
だから聞くべきはこれです。 「この物件、20年後にいくらで売れると思いますか? その根拠は?」
答えられないのが普通です。それが正常な反応で、責める話ではありません。ただ、分からないものを「資産になります」と言い切っている、という構造は見えます。
持ち家の良さもあります
損得だけの話ではないので、公平に書いておきます。
- 自由に手を入れられる。 賃貸ではできないことができます
- 老後の住居費が読みやすくなります(税金と修繕費は残ります)
- 団体信用生命保険がつくのが一般的です。契約者が亡くなればローンが消えます
- 高齢になってからの賃貸契約の難しさを避けられます
これらは金額に換算しにくい価値です。 そこに価値を感じて買うのは、まったく合理的な判断だと思います。
この記事が言っているのは、「資産になるから得」という理由づけだけは検算しましょうということです。
まとめ
「家賃は何も残りませんが、ローンなら資産として残ります」
残るのは事実です。 ただし、
- 残るのは主に土地。建物は減っていきます
- 国土交通省は、中古戸建てについて「築後20〜25年で建物の市場価値をゼロとされる慣行」があると書いています。35年ローンなら完済前です
- 状態によっては建物がマイナス評価になることもあります
- 値動きは物件次第。2010年比で戸建118.6・マンション222.2(全国平均)
- 持ち家には固定資産税・修繕費・火災保険料が別にかかります
- だから月々の返済額と家賃を並べる比較は成り立ちません
言われたら、こう聞いてみてください。
「土地と建物、それぞれいくらですか?」
内訳が出れば、何年後に何が残るのかを自分で考えられます。
📋 契約前にここを確認
- その物件は、何年後にいくらで売れそうですか?
- 土地と建物の価格は、それぞれいくらですか?
- 固定資産税は年いくらですか?
- 修繕費は何年ごとに、いくら見込んでいますか?
- 購入時の諸費用(登記・仲介手数料など)はいくらですか?