🛡️ 保険

「地震保険も入っておきましょう」は本当? 家は建て直せない保険です

🗣️営業トーク

「火災保険だけだと地震のときに出ませんよ。地震保険もセットで入っておきましょう」

結論

地震保険は「家を建て直すための保険」ではありません。火災保険の半分までしか掛けられず、時価が上限で、一部損なら5%。制度の目的は次の住まいに移るまでの生活資金です。その金額なら、貯蓄でも用意できます。

「火災保険だけだと、地震のときは出ませんよ」

これは本当です。地震・噴火・津波が原因の損害は、火災保険では補償されません。

だから地震保険を勧められます。でも、その前に確認したいことがあります。

🔍CHECK

その地震保険、家を建て直せる金額が出ますか?

答えから言うと、出ません。 制度がそう作られているからです。

先に結論

この記事の結論

1. 上限が低い

地震保険は火災保険の30〜50%までしか掛けられません。しかも時価が上限(古い家ほど下がる)

+

2. 全額出ることは少ない

損害の程度で4段階。一部損なら5%しか出ません

=

3. だから

家を建て直す保険ではありません。次の住まいに移るまでの生活資金を補う保険です

▼

結論

その金額なら貯蓄でも用意できます。筆者は、優先度は高くないと考えています

① 火災保険の半分までしか掛けられない

まず、掛けられる金額に上限があります。

火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で地震保険の保険金額を決めることが可能です (財務省「地震保険制度の概要」)

火災保険で建物3,000万円を掛けていても、地震保険は最大1,500万円。さらに建物5,000万円・家財1,000万円という限度額もあります。

なぜ半分までなのか。財務省の説明が、この保険の性格をよく表しています。

地震は発生の予測ができず、また、地震が発生した場合の被害は広域にわたり、場合によっては、その損害額も巨大になります。損害保険会社の担保力、国の財政にも限度があることから、火災保険の保険金額の50%までに制限しています。 (財務省FAQ)

💰実際は

制度をつくった側が「全部は払えない」と言っています。

② しかも「時価」が上限です

もう一つ、見落とされやすい点があります。

支払われる保険金は時価額が限度です(財務省)。

火災保険の多くは「再調達価額」——同じ家をもう一度建てるのに必要な金額で契約します。一方の地震保険は時価。建ててから年数が経つほど、評価額は下がります。

図解① 同じ家でも、金額の基準が違う

火災保険

再調達価額で契約できる(同じ家を建て直す金額)

▼

地震保険は

その30〜50%までしか掛けられない

▼

さらに

時価額が上限。年数が経った家ほど、受け取れる額は下がる

「半分まで」の上限に加えて、時価という天井がもう一段あります。築年数の経った家では、掛けた保険金額より実際の支払額が小さくなることがあります。

③ 一部損なら5%しか出ません

さらに、損害の程度によって支払われる割合が決まっています。実額の補償ではありません。

損害の程度 支払われる金額
全損 保険金額の100%
大半損 保険金額の60%
小半損 保険金額の30%
一部損 保険金額の5%

(財務省「地震保険制度の概要」・平成29年1月以降始期の契約)

⚠️ここに注意

「一部損」は5%です。 建物3,000万円の火災保険に、上限いっぱいの1,500万円で地震保険を掛けていたとして、一部損なら 75万円。 壁にひびが入った、瓦が落ちた——多くのケースはこの区分に落ち着きます。

そして全損の判定は簡単ではありません。「被害を受けた」と「全損と判定される」の間には、大きな開きがあります。

計算してみると、建て直せません

数字を並べてみます。建物3,000万円の家で、地震保険を上限の1,500万円で掛けた場合です。

判定 受け取れる額 建て直せる?
全損 1,500万円 足りない(建て直しには3,000万円必要)
大半損 900万円 無理
小半損 450万円 無理
一部損 75万円 無理
1,500万円(全損でも、これが上限)

いちばん良い結果である「全損」でも、建て直しには足りません。 これは商品の欠陥ではなく、最初からそう設計されているということです。

この保険は、何のためにあるのか

地震保険法の目的は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することです。

家を建て直すためではありません。家を失ったあと、次の住まいに移るまでの当面の生活を支えるためのお金。そう考えると、金額の設定にも納得がいきます。

🔍CHECK

「家を建て直す保険」だと思って入ると、期待が外れます。 「引っ越し代と当面の生活費の保険」だと思えば、制度どおりです。

そもそも、成り立ちにくい保険です

もう一つ、構造的な話をしておきます。

大地震では、同じ地域の家が一度にまとめて壊れます。 保険の基本は「大勢で少しずつ出し合って、起きてしまった少数の人に渡す」こと。ところが地震は、加入者の多くが同時に被災します。

だから民間の保険会社だけでは支えられません。実際、この保険は政府が支えています。

民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険し……民間のみでは対応できない巨大地震発生の際には、再保険金の支払いを行う (財務省)

1回の地震で支払われる総額の上限は12兆円と決められており、そのうち11兆5,553億円は政府の負担です(同)。

民間の商品として単独では成り立たないから、政府が支えている。 補償が半分までに抑えられているのも、同じ理由です。

それなら、貯蓄で足ります

ここからは筆者の考えです。

地震保険が用意してくれるのは「次の住まいに移るまでのお金」。その用途なら、金額としては貯蓄でまかなえる範囲です。

しかも公的な支援もあります。住宅が全壊するなど生活基盤に著しい被害を受けた世帯には、被災者生活再建支援制度から最大300万円(基礎支援金+加算支援金)が支給されます。

  • 保険で受け取れるのは、多くの場合その程度から数百万円
  • 同じ額を自分で貯めておけば、地震以外の出費にも使えます
  • 保険料は毎年かかり続けます

前の記事で整理した4象限に当てはめると、こうなります。地震保険が本当に必要な「低確率・大損失」に見えて、実際に受け取れる額は大損失をカバーしません。 カバーできない以上、保険の役割を果たしていません。

💰実際は

筆者は、地震保険の優先度は高くないと考えています。同じお金を貯めておくほうが、使い道が自由なぶん有利です。

まとめ

「火災保険だけだと地震のときに出ませんよ」——これは事実です。

ただし、その先を確認してください。

  • 掛けられるのは火災保険の30〜50%まで
  • 時価が上限(古い家ほど下がる)
  • 一部損なら5%
  • 全損でも家は建て直せない

これは商品が悪いのではなく、制度がそう設計されているだけです。目的は建て直しではなく、生活の立て直し。

この保険に何を期待するのかを、先にはっきりさせておいてください。

「その保険で、家は建て直せますか?」

答えが「いいえ」なら、次はこう考える番です。同じ額を貯めておく、では足りないのはなぜですか?

📋 契約前にここを確認

  • 保険金額は火災保険のいくらに設定されていますか?(30〜50%の範囲)
  • 建物は時価でいくらと評価されていますか?
  • 全損・大半損・小半損・一部損で、それぞれいくら出ますか?
  • その金額で家は建て直せますか?
  • 同じ保険料を積み立てた場合と比べましたか?

参照した情報源

  1. 財務省「地震保険制度の概要」(保険金額の割合・限度額・損害区分と支払割合・総支払限度額)
  2. 財務省「地震保険は、なぜ火災保険の保険金額の50%までしか契約できないのでしょうか」
  3. 内閣府「公的支援制度について」(被災者生活再建支援制度)

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