「ペットも家族ですから」は本当? 家族です。だから治療費は、飼う前に引き受けるものです
営業トーク
「ペットも家族ですから、万一のときに治療を諦めなくて済むように。動物には健康保険がありませんから、手術になると何十万円もかかりますよ」
結論
ペットが家族だという前提には同意します。だからこそ、治療費は保険で何とかするものではなく、飼う前に引き受けるものです。動物愛護管理法は飼い主に「終生飼養」を求め、病気やけがをした動物の適切な保護を行わないことを虐待として罰則付きで禁じています。環境省も「飼い始めてから経済的な理由で行き詰らないように、あらかじめ必要な費用を考えておきましょう」と呼びかけています。ペット保険の多くは少額短期保険で、保険契約者保護機構の対象外です。監督指針には、更新時に保険料等を見直す場合があること、商品が不採算になれば更新を引き受けないことがあることが明記されています。保険で備えるのは、貯金では背負えない損失だけです。
ペットショップでも、動物病院でも、言われます。
営業トーク
ペットも家族ですから、万一のときに治療を諦めなくて済むように。動物には健康保険がありませんから、手術になると何十万円もかかりますよ
「家族です」という前提には、同意します。 この記事も、そこから始めます。
家族だとすると、順番が変わります。治療費をどう払うかの前に、その費用を引き受けられるかを決めてから迎える、という順番です。
この記事の結論
法律は
飼い主に「終生飼養」を求めています(動物愛護管理法7条4項)
しかも
病気の動物の適切な保護を行わないことは、罰則つきで禁じられています(44条2項)
ペット保険は
多くが少額短期保険。更新のたびに保険料が見直され、更新を断られることもあります
だから
治療費は迎える前に引き受けるものです。保険はその代わりにはなりません
🔴 法律は「終生飼養」を求めています
動物愛護管理法7条4項に、言葉の定義まで置かれています。
動物の所有者は、……できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
そして、治療に直接かかわる条文があります。44条2項です。
自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと……その他の虐待を行つた者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
「病気やけがをした動物の適切な保護を行わないこと」は、虐待として罰則の対象です。 努力義務ではありません。
遺棄も同じ罰則です(44条3項)。対象となる「愛護動物」には、犬と猫が明記されています(44条4項1号)。
実際は
つまり、治療費は「払えたら払う」ものではありません。 迎えた時点で、その責任は発生しています。 保険はその責任を軽くする道具ではなく、支払いの方法の一つにすぎません。
環境省も、迎える前に考えろと書いています
環境省のパンフレットです。
ペットを飼い続けるためには、フードや日用品、治療費などでお金がかかります。飼い始めてから経済的な理由で行き詰らないように、あらかじめ必要な費用を考えておきましょう。
「あらかじめ」です。 飼い始めてから保険で埋めるのではなく、迎える前に見積もる、という順番を国も示しています。
⚠️ 生涯にかかる費用について、当サイトで確認できた公的な最新統計はありませんでした。同パンフレットには年間費用の表がありますが、2015年1月の民間調査が出典で古いため、この記事では金額を引用していません。自分が迎える動物の種類・寿命で、動物病院に聞いて見積もってください。
🔴 ペット保険は、多くが「少額短期保険」です
ここから、商品の話です。
金融庁の少額短期保険業者向けの監督指針には、意向把握の対象分野として「死亡保険、医療保険、家財保険、ペット保険等」と列挙されています。ペット保険は、この領域の代表的な商品です。
少額短期保険は、通常の保険会社とは制度が違います。
| 保険会社 | 少額短期保険業者 | |
|---|---|---|
| 設立 | 免許制 | 登録制 |
| 保険期間 | 制限なし | 損害保険2年/生命保険・医療保険1年 |
| 保険金額 | 制限なし | 上限あり(損害保険1,000万円 など) |
| 公的セーフティネット | あり | なし(保証金の供託制度あり) |
保険契約者保護機構の対象外です。 生命保険や損害保険で用意されている仕組みは、ここには及びません。
⚠️ すべてのペット保険が少額短期保険というわけではありません。 損害保険会社が扱うものもあります。自分が検討しているものの引受先がどちらかは、契約のしおりで確認してください。
🔴 更新のたびに、見直されます
ここが、この商品の性質を決めているところです。保険期間が短い=毎年(または2年ごとに)更新する商品だということです。
監督指針は、法令で注意喚起することとされている事項として、これを挙げています。
a.自動更新タイプの保険契約について、更新時には保険料の計算方法、保険金額等について見直す場合があること。(規則第227条の2第3項第13号)
さらに、その注記です。
(注)なお、当該商品が不採算となり、更新契約の引受が困難となった場合には、その契約の更新を引き受けないこととすることも併せて記載するものとする。
図解① 「ずっと同じ条件で続く」商品ではありません
更新のたびに
保険料の計算方法・保険金額等を見直す場合があると、法令で注意喚起することとされています
さらに
商品が不採算になれば、更新を引き受けないことがあると書くことになっています
つまり
いちばん必要になる時期まで、同じ条件で続く保証はありません
動物が歳を取るほど治療費はかかり、保険はいちばん必要になります。 その時期に、保険料がどうなるのか、そもそも更新できるのか。契約のしおりで、高齢時の保険料と更新の上限年齢を見てください。
これは商品の欠陥ではありません。短期の契約を更新していく仕組みなので、そうなっているというだけです。だからこそ、その前提で選ぶ必要があります。
保険で備えるのは、貯金で背負えない損失だけです
当サイトでは「掛け捨てはお金を捨てている」は本当?で、リスクを確率と損失の2軸で整理しています。
お金を払って他人に引き受けてもらう価値があるのは、「起きる確率は低く、起きたら自分では背負えない」ものだけです。
図解② 治療費は、どのマスに入るか
低確率・大損失
自分では払えない。ここだけが保険の出番です
高確率・小〜中損失
貯金で対応する。歳を取れば通院は増えます。これは「万一」ではありません
分かれ目は
その手術代を、自分の貯金から出せるかです
人の医療保険と、考え方はまったく同じです。 違うのは公的保険がないことですが、それは「保険に入るべき理由」ではなく「自分で用意しておく額が大きい」という意味です。
ペット向けに毎月払う保険料を、そのまま治療費の口座に積み立てるという形もあります。どちらが自分に合うかは、手術代を貯金から出せるかどうかで決まります。
契約のしおりで見るところ
① 高齢時の保険料
いまの保険料ではなく、10歳・15歳のときの保険料を見てください。表が載っています。
② 更新の上限年齢
何歳まで続けられるのか。新規加入の年齢制限とは別です。
③ 既往症・先天性疾患の扱い
加入前からの病気は、多くの場合対象外です。迎えてすぐ入るかどうかで、後から差が出ます。
④ 補償の割合と上限
50%・70%といった割合のほか、1回あたり・1年あたり・回数の上限があります。上限を超えた分は自己負担です。
⑤ 引受先
保険会社か、少額短期保険業者か。公的セーフティネットの有無が変わります。
まとめ
- 「家族です」は本当です。だから治療費は、迎える前に引き受けるものです
- 🔴 動物愛護管理法7条4項は「終生飼養」を定義しています
- 🔴 病気やけがをした動物の適切な保護を行わないことは、虐待として1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(44条2項)
- 環境省も「あらかじめ必要な費用を考えておきましょう」と書いています
- ペット保険の多くは少額短期保険。保険契約者保護機構の対象外です
- 🔴 監督指針に、更新時に保険料等を見直す場合があること、不採算なら更新を引き受けないことがあることが明記されています
- いちばん必要になる高齢期に、同じ条件で続く保証はありません
- 保険で備えるのは「低確率・大損失」だけ。分かれ目は手術代を貯金から出せるかです
- 見るのは今の保険料ではなく、高齢時の保険料・更新の上限年齢・既往症の扱い・補償の上限・引受先です
保険の要る・要らないの考え方は「掛け捨てはお金を捨てている」は本当?に、同じ理屈を人の医療保険にあてはめたものは「医療保険は入っておいた方が安心」は本当?にまとめています。契約前の共通の確認手順は営業されたら確認する10項目です。
📋 契約前にここを確認
- その治療費は、自分の貯金から出せない金額ですか?
- 更新のたびに保険料はどう変わりますか? 高齢時の保険料を見ましたか?
- 何歳まで更新できますか? 上限はありますか?
- 既往症や、その保険に入る前からの病気は対象になりますか?
- 引受先は保険会社ですか、少額短期保険業者ですか?
- 補償の割合と、1回・1年あたりの上限はいくらですか?