🛡️ 保険

「若いうちに入るほど保険料が安くて得」は本当? 安いのは月額だけです

🗣️営業トーク

「保険料は若いうちに入るほど安くなりますよ。今のうちに入っておくのが一番お得です」

結論

若いと保険料が安いのは事実ですが、理由は「早く入った人への割引」ではなく、その年齢の死亡率が低いからです。厚生労働省の生命表で計算すると、同じ保障を80歳まで持つ場合、月額は30歳加入で約6,430円、50歳加入で約10,602円と1.6倍違うのに、払込総額はどちらも約380万円台でほとんど変わりません。保険料は年齢ごとのリスクを織り込んで決まるため、加入年齢で有利不利が生じにくい設計になっています。

よく言われます。

「保険料は若いうちに入るほど安くなりますよ」

「今のうちに入っておくのが一番お得です」

前半は事実です。問題は後半です。

先に結論

この記事の結論

安いのは事実

ただし理由は「早く入った人への割引」ではありません。その年齢の死亡率が低いからです

▼

安いのは月額だけ

若く入れば払う期間が長くなります

▼

計算すると

同じ保障を80歳まで持つ場合、月額は1.6倍違うのに、払込総額はほぼ同じ(約380万円台)

▼

つまり

加入年齢で有利不利が出にくい設計です。「早く入るほど得」にはなっていません

🔴 なぜ若いと安いのか

保険料は3つの予定率で決まります。そのうちの一つが予定死亡率です。

予定率 何を見込んでいるか
予定死亡率 保険金の支払いに必要な額
予定利率 会社が運用で得られる収益
予定事業費率 会社の運営に必要な経費

(生命保険文化センター)

保険料は、その年齢で保険金を支払う確率から逆算されています。 では、その確率を見てみます。

厚生労働省の生命表(令和7年・男性)です。

年齢 1年間に亡くなる確率 30歳との比
20歳 0.00041 0.8倍
30歳 0.00051 1.0倍
40歳 0.00095 1.9倍
50歳 0.00234 4.6倍
60歳 0.00617 12.1倍
70歳 0.01660 32.5倍

(厚生労働省「令和7年簡易生命表(男)」)

💰実際は

30歳と50歳では、亡くなる確率が4.6倍違います。 保険料が違うのは当然で、若い人を優遇しているわけでもありません。リスクに見合った額になっているだけです。

🔴 では、総額はどうなるか

ここが本題です。月額が安くても、払う期間が長くなります。

同じ条件で比べます。保険金1,000万円の保障を80歳まで持つとして、何歳で入るかだけを変えます。

図解① 月額と総額を並べる(生命表から計算)

30歳加入
50年払う
月6,430円 → 総額 約386万円
40歳加入
40年払う
月8,042円 → 総額 約386万円
50歳加入
30年払う
月10,602円 → 総額 約382万円
60歳加入
20年払う
月14,894円 → 総額 約357万円

厚生労働省「令和7年簡易生命表(男)」の死亡率から計算。計算方法は下に書きます。

月額は30歳と50歳で1.6倍違います。それでも払込総額はほぼ同じです。

約380万円台何歳で入っても、80歳まで持てば総額はほぼ同じ

💰実際は

「若いうちが安い」のは、あくまで月額の話です。 安くなった分だけ、長く払うことになります。

なぜ、こうなるのか

理由は単純です。保険料が年齢ごとの死亡率から逆算されているからです。

図解② 設計の向き

保険会社は

年齢ごとの死亡率を先に把握しています(生命表は公開されています)

▼

保険料は

その確率に見合うように逆算されます。若い人は安く、高齢の人は高く

▼

結果

どの年齢で入っても、収支が成り立つように作られています。加入年齢を選んで有利になる余地は、ほとんど残っていません

🔴 そもそも「得をする」設計ではありません

もう一段、踏み込みます。上の計算は純保険料——つまり保険会社の経費をまったく含まない数字です。

実際の保険料には予定事業費率が上乗せされます。つまり、実際に払う額は上の金額より多くなります。

そして受け取る側を見ると、こうなります。

図解③ 30歳の男性が80歳までに

亡くなる

35.7% ── 保険金を受け取ります

▼

生きている

64.3% ── 保険金を受け取らないまま、約386万円を払い終えます

▼

つまり

多数派は「払っただけ」で終わります。それが保険という仕組みです

簡易生命表の死亡率から計算した数値です。実際には健康状態の審査があるため、加入者の死亡率はこれより低くなる傾向があります。

💰実際は

得をするのは、平均から外れた人だけです。 平均よりかなり早く亡くなった場合。平均よりかなり多く病気をした場合。 逆に言えば、得をしたということは、不幸が起きたということです。

だから、保険で得をしようとすること自体が、考え方としてずれています。 保険は増やす道具ではなく、自分では背負えない損失に備える道具です。

⚠️ここに注意

「お得だから今のうちに」は、保険を選ぶ理由になりません。 理由になるのは「いま、その保障が必要かどうか」だけです。

早く入る意味が、まったくないわけではありません

公平に書いておきます。若いうちに入ることに意味がある場合はあります。

  • 健康なうちに入れる。 保険は健康状態の審査があります。持病があると入れない、条件が付くことがあります
  • 必要な時期がすでに来ている場合。 子どもが生まれた、住宅ローンを組んだ——必要だから入るのは筋が通っています
  • 保険料が上がらない安心。 加入時の保険料が続く商品なら、後から上がる心配がありません

どれも「得だから」という理由ではありません。 「入れなくなる前に」「必要になったから」です。

🔍CHECK

判断の順番はこうなります。 ① いま、その保障が必要か → ② 必要なら、いくらの保障が要るか → ③ その保障をいちばん安く買う方法は何か 「若いうちが得だから」は、この順番のどこにも出てきません。

計算の前提を書いておきます

数字を出した以上、再現できるように書きます。

図解④ 計算の前提

使ったデータ

厚生労働省「令和7年簡易生命表(男)」の年齢別死亡率

▼

計算方法

保険金1,000万円・80歳まで保障。支払われる保険金の合計 ÷ 保険料を払う延べ人数で、毎年同額の保険料(平準保険料)を求めました

▼

含めていないもの

会社の経費(予定事業費率)、運用収益(予定利率)、健康状態による審査の影響。実際の保険料はこれより高くなります

📝補足

これは実在の商品の保険料ではなく、仕組みを見るための計算です。 実際の保険料は会社や商品によって違うので、見積書の払込総額で確認してください。

まとめ

「若いうちに入るほど安くて得ですよ」

  • 安いのは事実です。ただし理由は割引ではなく、その年齢の死亡率が低いから
  • 30歳と50歳では、亡くなる確率が4.6倍違います(厚労省の生命表)
  • 安いのは月額だけ。 若く入れば、その分長く払います
  • 同じ保障を80歳まで持つ場合、月額は1.6倍違うのに払込総額はほぼ同じ(約380万円台)
  • 保険料は年齢ごとの死亡率から逆算されるので、加入年齢を選んで有利になる余地はほとんどありません
  • しかも実際の保険料には会社の経費が上乗せされます
  • 30歳の男性が80歳まで生きる確率は64.3%。多数派は受け取らずに払い終えます

見積書を見るときは、月額ではなく払込総額を見てください。月額 × 12 × 払込年数で出せます。

そのうえで、判断の基準はひとつです。

「得かどうか」ではなく「いま必要かどうか」。


保険が何のための道具かは「掛け捨てはお金を捨てている」は本当?、保険料に含まれる会社の経費は「予定利率1%の商品です」は、あなたのお金が1%増えるという意味ではありません、貯蓄と組み合わせた商品は「貯蓄型保険なら安心してお金を貯められます」は本当?にまとめています。

📋 契約前にここを確認

  • その保険料は、何歳まで払い続けますか?
  • 払込総額はいくらになりますか?(月額 × 12 × 払込年数)
  • その保障は、いつまで必要ですか?
  • 「安い」と言われているのは月額ですか、総額ですか?
  • 早く入る理由は「得だから」ですか、「必要だから」ですか?

参照した情報源

  1. 厚生労働省「令和7年簡易生命表(男)」(年齢別死亡率 nqx)
  2. 厚生労働省「令和7年簡易生命表(女)」(年齢別死亡率 nqx)
  3. 厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」
  4. 生命保険文化センター「保険料の仕組み」(予定死亡率・予定利率・予定事業費率)

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