「若いうちに入るほど保険料が安くて得」は本当? 安いのは月額だけです
営業トーク
「保険料は若いうちに入るほど安くなりますよ。今のうちに入っておくのが一番お得です」
結論
若いと保険料が安いのは事実ですが、理由は「早く入った人への割引」ではなく、その年齢の死亡率が低いからです。厚生労働省の生命表で計算すると、同じ保障を80歳まで持つ場合、月額は30歳加入で約6,430円、50歳加入で約10,602円と1.6倍違うのに、払込総額はどちらも約380万円台でほとんど変わりません。保険料は年齢ごとのリスクを織り込んで決まるため、加入年齢で有利不利が生じにくい設計になっています。
よく言われます。
「保険料は若いうちに入るほど安くなりますよ」
「今のうちに入っておくのが一番お得です」
前半は事実です。問題は後半です。
先に結論
この記事の結論
安いのは事実
ただし理由は「早く入った人への割引」ではありません。その年齢の死亡率が低いからです
安いのは月額だけ
若く入れば払う期間が長くなります
計算すると
同じ保障を80歳まで持つ場合、月額は1.6倍違うのに、払込総額はほぼ同じ(約380万円台)
つまり
加入年齢で有利不利が出にくい設計です。「早く入るほど得」にはなっていません
🔴 なぜ若いと安いのか
保険料は3つの予定率で決まります。そのうちの一つが予定死亡率です。
| 予定率 | 何を見込んでいるか |
|---|---|
| 予定死亡率 | 保険金の支払いに必要な額 |
| 予定利率 | 会社が運用で得られる収益 |
| 予定事業費率 | 会社の運営に必要な経費 |
保険料は、その年齢で保険金を支払う確率から逆算されています。 では、その確率を見てみます。
厚生労働省の生命表(令和7年・男性)です。
| 年齢 | 1年間に亡くなる確率 | 30歳との比 |
|---|---|---|
| 20歳 | 0.00041 | 0.8倍 |
| 30歳 | 0.00051 | 1.0倍 |
| 40歳 | 0.00095 | 1.9倍 |
| 50歳 | 0.00234 | 4.6倍 |
| 60歳 | 0.00617 | 12.1倍 |
| 70歳 | 0.01660 | 32.5倍 |
実際は
30歳と50歳では、亡くなる確率が4.6倍違います。 保険料が違うのは当然で、若い人を優遇しているわけでもありません。リスクに見合った額になっているだけです。
🔴 では、総額はどうなるか
ここが本題です。月額が安くても、払う期間が長くなります。
同じ条件で比べます。保険金1,000万円の保障を80歳まで持つとして、何歳で入るかだけを変えます。
図解① 月額と総額を並べる(生命表から計算)
50年払う
40年払う
30年払う
20年払う
厚生労働省「令和7年簡易生命表(男)」の死亡率から計算。計算方法は下に書きます。
月額は30歳と50歳で1.6倍違います。それでも払込総額はほぼ同じです。
実際は
「若いうちが安い」のは、あくまで月額の話です。 安くなった分だけ、長く払うことになります。
なぜ、こうなるのか
理由は単純です。保険料が年齢ごとの死亡率から逆算されているからです。
図解② 設計の向き
保険会社は
年齢ごとの死亡率を先に把握しています(生命表は公開されています)
保険料は
その確率に見合うように逆算されます。若い人は安く、高齢の人は高く
結果
どの年齢で入っても、収支が成り立つように作られています。加入年齢を選んで有利になる余地は、ほとんど残っていません
🔴 そもそも「得をする」設計ではありません
もう一段、踏み込みます。上の計算は純保険料——つまり保険会社の経費をまったく含まない数字です。
実際の保険料には予定事業費率が上乗せされます。つまり、実際に払う額は上の金額より多くなります。
そして受け取る側を見ると、こうなります。
図解③ 30歳の男性が80歳までに
亡くなる
35.7% ── 保険金を受け取ります
生きている
64.3% ── 保険金を受け取らないまま、約386万円を払い終えます
つまり
多数派は「払っただけ」で終わります。それが保険という仕組みです
簡易生命表の死亡率から計算した数値です。実際には健康状態の審査があるため、加入者の死亡率はこれより低くなる傾向があります。
実際は
得をするのは、平均から外れた人だけです。 平均よりかなり早く亡くなった場合。平均よりかなり多く病気をした場合。 逆に言えば、得をしたということは、不幸が起きたということです。
だから、保険で得をしようとすること自体が、考え方としてずれています。 保険は増やす道具ではなく、自分では背負えない損失に備える道具です。
ここに注意
「お得だから今のうちに」は、保険を選ぶ理由になりません。 理由になるのは「いま、その保障が必要かどうか」だけです。
早く入る意味が、まったくないわけではありません
公平に書いておきます。若いうちに入ることに意味がある場合はあります。
- 健康なうちに入れる。 保険は健康状態の審査があります。持病があると入れない、条件が付くことがあります
- 必要な時期がすでに来ている場合。 子どもが生まれた、住宅ローンを組んだ——必要だから入るのは筋が通っています
- 保険料が上がらない安心。 加入時の保険料が続く商品なら、後から上がる心配がありません
どれも「得だから」という理由ではありません。 「入れなくなる前に」「必要になったから」です。
CHECK
判断の順番はこうなります。 ① いま、その保障が必要か → ② 必要なら、いくらの保障が要るか → ③ その保障をいちばん安く買う方法は何か 「若いうちが得だから」は、この順番のどこにも出てきません。
計算の前提を書いておきます
数字を出した以上、再現できるように書きます。
図解④ 計算の前提
使ったデータ
厚生労働省「令和7年簡易生命表(男)」の年齢別死亡率
計算方法
保険金1,000万円・80歳まで保障。支払われる保険金の合計 ÷ 保険料を払う延べ人数で、毎年同額の保険料(平準保険料)を求めました
含めていないもの
会社の経費(予定事業費率)、運用収益(予定利率)、健康状態による審査の影響。実際の保険料はこれより高くなります
補足
これは実在の商品の保険料ではなく、仕組みを見るための計算です。 実際の保険料は会社や商品によって違うので、見積書の払込総額で確認してください。
まとめ
「若いうちに入るほど安くて得ですよ」
- 安いのは事実です。ただし理由は割引ではなく、その年齢の死亡率が低いから
- 30歳と50歳では、亡くなる確率が4.6倍違います(厚労省の生命表)
- 安いのは月額だけ。 若く入れば、その分長く払います
- 同じ保障を80歳まで持つ場合、月額は1.6倍違うのに払込総額はほぼ同じ(約380万円台)
- 保険料は年齢ごとの死亡率から逆算されるので、加入年齢を選んで有利になる余地はほとんどありません
- しかも実際の保険料には会社の経費が上乗せされます
- 30歳の男性が80歳まで生きる確率は64.3%。多数派は受け取らずに払い終えます
見積書を見るときは、月額ではなく払込総額を見てください。月額 × 12 × 払込年数で出せます。
そのうえで、判断の基準はひとつです。
「得かどうか」ではなく「いま必要かどうか」。
保険が何のための道具かは「掛け捨てはお金を捨てている」は本当?、保険料に含まれる会社の経費は「予定利率1%の商品です」は、あなたのお金が1%増えるという意味ではありません、貯蓄と組み合わせた商品は「貯蓄型保険なら安心してお金を貯められます」は本当?にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- その保険料は、何歳まで払い続けますか?
- 払込総額はいくらになりますか?(月額 × 12 × 払込年数)
- その保障は、いつまで必要ですか?
- 「安い」と言われているのは月額ですか、総額ですか?
- 早く入る理由は「得だから」ですか、「必要だから」ですか?