🧭 営業の基本

「お断りステッカーを貼ればセールスは来なくなる」は本当? チラシは減り、訪問販売は止まりません

🗣️営業トーク

「お断りのシールは貼ってありますが、ごあいさつだけでもと思いまして」

結論

郵便受けの「チラシお断り」シールは、投函する側が拒否の意思を認識できるので実際に効果があります。一方で「訪問販売お断り」のシールは、消費者庁の運用指針に「意思表示の対象や内容が全く不明瞭であるため、法第3条の2第2項における『契約を締結しない旨の意思』の表示には該当しない」と明記されています。法律上の再勧誘禁止を働かせるには、その場で「いりません」「お断りします」「結構です」と言葉にする必要があります。ただし条例でシールを有効としている自治体もあり、消費者庁自身も「事業者は商道徳として、そのような消費者意思を当然尊重する必要がある」としています。

郵便受けに「チラシお断り」のシールを貼る。

小さなことですが、効きます。投函する側から見て、拒否の意思がはっきり見えるからです。

そこで、同じ発想でこう考える人がいます。

「訪問販売お断り」のシールも貼っておけば、営業も来なくなるのでは。

(「セールスお断り」「訪問販売お断り」のステッカーやマグネットもあります。この記事では、玄関や郵便受けに貼るものをまとめて「シール」と書きます)

ところが、ここで話が分かれます。

先に結論

この記事の結論

チラシお断り

実際に効きます。投函する人がその場で読めるので、拒否の意思が伝わります

▼

訪問販売お断り

国の法律では、断ったことになりません。消費者庁が運用指針で「該当しない」と明記しています

▼

法律を働かせるには

その場で「いりません」「お断りします」「結構です」と言葉にする必要があります

▼

ただし

条例でシールを有効としている自治体もあります。貼る意味がないという話ではありません

🔴 消費者庁が「該当しない」と書いています

まず、法律のほうを確認します。訪問販売にはこういう規定があります。

販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない (特定商取引法3条の2第2項)

一度断った相手に、また勧誘してはいけない。 これを再勧誘の禁止といいます。

問題は、何をすれば「意思を表示した」ことになるのかです。消費者庁の運用指針に、そのまま書いてあります。

また、例えば家の門戸に「訪問販売お断り」とのみ記載された張り紙等を貼っておくことは、意思表示の対象や内容が全く不明瞭であるため、法第3条の2第2項における「契約を締結しない旨の意思」の表示には該当しない。 (消費者庁「特定商取引に関する法律第3条の2等の運用指針」)

💰実際は

シールを貼ってあっても、法律上は「まだ断っていない人」の扱いです。 だから、来ること自体は違反になりません。

理由は「意思表示の対象や内容が全く不明瞭」だから、とされています。誰が、いつ、何について断っているのかが読み取れない、という理屈です。

では、どう言えば断ったことになるのか

同じ運用指針に、必要な言い方が並んでいます。

具体的には、相対する販売業者等からの勧誘に対し、相手方が「いりません。」、「関心がありません。」、「お断りします。」、「結構です。」など明示的に契約締結の意思がないことを表示した場合を指すものである。

図解① 断ったことになる/ならない

断ったことになる

「いりません」「関心がありません」「お断りします」「結構です」

▼

断ったことにならない

「今は忙しいので後日にしてほしい」→ その場の勧誘は止まりますが、日を改めた勧誘は止まりません

▼

同じく、ならない

玄関のシール。言葉にしないと、法律上の意思表示になりません

「今は忙しいので後日にしてほしい」の扱いは、同じ運用指針に「その場、その時点での勧誘行為に対する拒絶意思の表示」として整理されています。

指針には、「結構です」についての注釈まで付いています。

従来の被害実態としては、消費者が断りの意思表示として「結構です。」と答えた場合に、消費者が承諾したとして、事業者において一方的に契約成立を主張するケースが少なくなかったが、「結構です。」と答えることは、否定の意思表示として十分に一般的であり、その消費者は契約締結の意思がないことを明示的に表示していると解される。

🔍CHECK

「結構です」で断ったのに、承諾したことにされる。 そういう事例が実際にあったから、わざわざ注釈が付いています。 言った・言わないになりやすい言葉です。迷ったら「お断りします」と言い切るほうが安全です。

なお、電話でも同じです。「電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し……勧誘をしてはならない」(同法17条)。一度断れば、かけ直してはいけません。

違反した事業者は、主務大臣から是正のための措置を指示される対象になります(同法7条)。

🔴 それでもシールには意味があります

ここで終わると誤解を招くので、続けます。消費者庁自身が、シールを否定していません。

同じ消費者庁が、こう書いています。

条例の中には、そのような張り紙・シール等を無視して消費者を勧誘する行為につき不当な取引として指導や勧告、公表の対象とするものもあると認識しています。そのような取組は、地域の消費者トラブルを防ぐための有効な手段であり、上記の特定商取引法における再勧誘禁止規定の解釈によって何ら影響を受けるものではなく、特定商取引法と相互に補完し合うものと考えています。また、張り紙・シール等がある場合には、事業者は商道徳として、そのような消費者意思を当然尊重する必要があるものと考えます。 (消費者庁取引・物価対策課(平成21年12月10日))

図解② シールの位置づけ

国の法律(特商法)

シールだけでは「断った」ことにならない

▼

自治体の条例

シールを有効な意思表示として扱う自治体があります。無視すれば条例違反です

▼

商道徳として

消費者庁も「当然尊重する必要がある」としています。守る業者は守ります

たとえば大阪市では、こうなっています。

「訪問販売お断り」のステッカーを貼るなど、あらかじめ勧誘してほしくない意思を表示しているにもかかわらず、事業者が勧誘する行為は「不当な取引行為」に該当し、条例に違反することになります (大阪市消費者保護条例(平成2年大阪市告示第472号 第1項第12号))

📝補足

同じシールでも、住んでいる場所で扱いが変わります。 条例の有無は自治体のウェブサイトか、消費者ホットライン188(局番なし)で確認できます。

チラシが減るのも、同じ理屈です。 法律で止まっているのではなく、投函する側がその表示を尊重するから減ります。だから守る業者には効き、守らない業者には効きません。

買い取りの訪問は、逆に厳しくなっています

意外に知られていない話を、ひとつ。

売りに来る訪問と、買いに来る訪問では、法律の厳しさが違います。

図解③ 売りに来る/買いに来る

訪問販売(売りに来る)

来ること自体は禁止されていません。断ったあとの再勧誘が禁止されます(3条の2第2項)

▼

訪問購入(買いに来る)

呼んでいないのに来て勧誘すること自体が禁止です(58条の6第1項)

▼

つまり

「不用品を買い取ります」といきなり来た時点で、すでに違反の可能性があります

条文はこうです。

購入業者は、訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない者に対し、営業所等以外の場所において、当該売買契約の締結について勧誘をし、又は勧誘を受ける意思の有無を確認してはならない (特定商取引法58条の6第1項)

⚠️ここに注意

「近くまで来たので、ごあいさつだけ」と言われても、買い取り目的なら同じです。 呼んでいない訪問での勧誘は、そもそも禁止されています。

シールでは止まらないもの

最後に、貼っても入ってくるものを挙げておきます。

図解④ 止まるもの・止まらないもの

止まりやすい

ポスティングのチラシ。投函する人がシールを読むので、多くは減ります

▼

止まらない

郵便で届く広告。郵便物は配達されます。いらないものは受け取ったあとに返す形です

▼

止まらない

新聞の折り込み。購読している新聞に挟まって届くので、郵便受けの表示とは別の話です

郵便については、日本郵便が受け取りを断る方法を案内しています。郵便物に「受取拒絶」と書いて署名または押印し、配達担当者に渡すか、郵便窓口かポストへ。差出人に返ります(日本郵便)。

💰実際は

ただし開封したあとは拒絶できません。 中身を見てから返す、はできない仕組みです。

まとめ

「お断りステッカーを貼ればセールスは来なくなる」

  • チラシお断りは効きます。 投函する人が読むからです
  • 訪問販売お断りは、国の法律では「断った」ことになりません。 消費者庁が運用指針で「該当しない」と明記しています
  • 法律を働かせるには、その場で「いりません」「お断りします」「結構です」と言葉にすることが必要です
  • 「今は忙しいので後日に」は、断ったことになりません
  • ただし条例でシールを有効としている自治体があります。消費者庁も「商道徳として当然尊重する必要がある」としています
  • 買い取り目的の訪問は、呼んでいない時点ですでに禁止です(58条の6第1項)
  • 郵便と新聞の折り込みは、シールでは止まりません

玄関で言うことは、これだけです。

「お断りします」

シールは、その前置きです。貼る意味はありますが、貼っただけで法律が守ってくれるわけではありません。


断ったあとに契約してしまった場合はクーリング・オフの使い方、営業を受けたときの確認手順は営業されたら確認する10項目にまとめています。

📋 契約前にここを確認

  • そのシールは「チラシお断り」ですか、「訪問販売お断り」ですか?
  • 玄関で、言葉で断りましたか?(法律が効くのはここからです)
  • 「今は忙しいので後日に」と言っていませんか?(それは断ったことになりません)
  • お住まいの自治体の条例に、シールを有効とする定めはありますか?
  • 買い取り(訪問購入)は、そもそも呼んでいない訪問が禁止されています

参照した情報源

  1. 特定商取引に関する法律 第3条の2(契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘の禁止等)/第7条(指示等)/第17条(電話勧誘販売)/第58条の6(訪問購入における勧誘の要請をしていない者に対する勧誘の禁止等)・e-Gov法令検索
  2. 消費者庁「特定商取引に関する法律第3条の2等の運用指針 ―再勧誘禁止規定に関する指針―」(「訪問販売お断り」の張り紙は該当しない)
  3. 消費者庁取引・物価対策課「改正特定商取引法における再勧誘禁止規定と『訪問販売お断り』等の張り紙・シール等について」(平成21年12月10日・条例との関係と商道徳)
  4. 大阪市「『訪問販売お断り』のステッカーを貼っているのに勧誘することは大阪市消費者保護条例違反です!」(平成2年大阪市告示第472号 第1項第12号)
  5. 日本郵便「架空請求、いたずら等、迷惑な郵便物を届けてほしくないのですが、どうすればいいのでしょうか?」(受取拒絶の方法)

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