🧭 営業の基本

「FPが無料で相談にのります」は本当? 無料で成り立つ仕組みのほうを見ます

🗣️営業トーク

「保険の見直し、FPが無料でご相談にのります。何社もの商品から中立にお選びできます」

結論

相談は無料でも、相談にのる人の給料は無料ではありません。相談料を取っていないなら、原資は保険会社から代理店に払われる手数料です。金融庁は監督指針に「保険代理店の受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために商品の絞込みや提示・推奨を行うことのないよう留意する」と書いています。当局がそう書くのは、構造上そうなり得るからです。これは非難する話ではありません。商売として当たり前です。問題は、こちらが「中立な助言」だと思って聞いてしまうことのほうです。

駅前の店舗や、ショッピングモールの一角で見かけます。

「保険の見直し、FPが無料でご相談にのります」

「何社もの商品から、中立にお選びできます」

相談は、確かに無料です。 お金を請求されることはありません。

ただ、相談にのる人の給料は無料ではありません。 そこを見ます。

先に結論

この記事の結論

「FP」は

誰でも名乗れます。名称が守られているのは「技能士」のほうです

▼

無料の原資は

相談料ではなく、保険会社から代理店に払われる手数料です

▼

金融庁は監督指針に

「手数料水準の高い商品に誘導……することのないよう留意する」と書いています

▼

これは非難ではありません

商売として当たり前です。問題は「中立な助言」だと思って聞くことのほう

▼

聞けること

「なぜこの商品なんですか」──理由を説明する義務があります

🔴 まず、「FP」は誰でも名乗れます

国家資格はあります。ファイナンシャル・プランニング技能士です。職業能力開発促進法にもとづく技能検定で、1級から3級まであります。

守られているのは、その名称です。

技能検定に合格した者は、技能士と称することができる。 ④ 技能士でない者は、技能士という名称を用いてはならない。 (職業能力開発促進法 第50条)

禁止されているのは「技能士」を名乗ることです。

「FP」「ファイナンシャル・プランナー」という呼び方には、この規制がかかりません。名刺に「FP」と書くこと自体には、資格が要りません。

図解① 肩書きから分かること・分からないこと

「FP技能士◯級」

国家資格。合格していないと名乗れません

▼

「FP」「ファイナンシャル・プランナー」

名乗るのに資格は要りません

▼

だから

肩書きだけでは、その人が何で食べているのかは分かりません

📝補足

資格を持っている人を否定する話ではありません。 実際、窓口にいるのは有資格者であることが多いはずです。 ここで言っているのは、肩書きからは「誰から報酬を受け取っているか」が分からないということだけです。

🔴 無料の原資は、どこから出ているか

ここが本題です。相談料を取っていないなら、その人の給料はどこから出ているのか。

答えははっきりしています。保険会社から代理店に払われる手数料です。保険が売れたときに、保険会社が代理店に払います。

図解② お金の流れ

あなた

相談料は払いません。だから「無料相談」です

▼

あなた → 保険会社

契約すると保険料を払います

▼

保険会社 → 代理店

そこから手数料が払われます。これが相談の原資です

▼

つまり

代金を払っているのはあなた。ただし保険料に含まれた形で、契約した後に

無料なのは「その場で財布を出さない」という意味です。タダという意味ではありません。

相手は名乗る義務があります

保険業法に、こう書かれています。

保険募集人は、保険募集を行おうとするときは、あらかじめ、顧客に対し次に掲げる事項を明らかにしなければならない。 一 所属保険会社等の商号、名称又は氏名 二 自己が所属保険会社等の代理人として保険契約を締結するか、又は保険契約の締結を媒介するかの別 (保険業法 第294条第3項)

「あらかじめ」です。 話を聞く前に、どこの保険会社の募集人なのかを明らかにする義務があります。

🔍CHECK

最初の一問はこれです。 「どちらの保険会社の募集人でいらっしゃいますか」 断り文句ではありません。相手が果たすべき義務の確認です。

🔴 金融庁が、まさにその懸念を書いています

ここが決定打です。推測ではありません。 監督当局が、監督指針に明文で書いています。

複数の保険会社の商品を扱う代理店(乗合代理店)が商品を絞り込んで勧めることを、比較推奨販売といいます。その項の注意書きです。

(注1) 形式的には商品の推奨理由を客観的に説明しているように装いながら、実質的には、例えば保険代理店の受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために商品の絞込みや提示・推奨を行うことのないよう留意する。 (金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」II-4-2-9)

「中立」を掲げる場合についても、別に書かれています。

(注) 各保険会社間における「公平・中立」を掲げる場合には、商品の絞込みや提示・推奨の基準や理由等として、特定の保険会社との資本関係や手数料の水準その他の事務手続・経営方針などの事情を考慮することのないよう留意する。 (同)

さらに、便宜供与についても。

二以上の所属保険会社等を有する保険募集人が、保険会社等に対して過度の便宜供与を求めることは、当該保険募集人において、便宜供与の実績に応じて特定の保険商品を推奨する事態を誘発し、顧客の適切な商品選択の機会を阻害するおそれがあるため、防止される必要がある。 (同)

図解③ なぜ当局がこれを書くのか

監督指針が書いているのは

「手数料の高い商品に誘導することのないよう留意する」

▼

裏返すと

そうなり得る構造だと当局が認めている、ということです

▼

読者にとっての意味

「起きている」ではなく「起きにくくする仕組みが要る」構造だと分かる

⚠️ここに注意

⚠️ この引用は「実際にそうしている」という意味ではありません。 監督指針は、そうならないよう管理されているかを当局が確認するための項目です。 ただし、わざわざ書かれているという事実は、判断材料になります。

📝補足

この項目は、2028年3月に改正されます。 金融庁は2026年8月28日、乗合代理店における比較推奨販売の確保に向けて、内閣府令(保険業法施行規則)と監督指針の改正を公表しました。改正後の内閣府令は同日公布され、令和10年(2028年)3月1日から施行、監督指針も同日から適用されます。上の引用は、それまでの現行の文言です。 なお、保険募集人が名乗る義務(保険業法第294条第3項)と顧客の意向を把握する義務(同法第294条の2)は今回の改正の対象外で、いまも果たされなければならないとされています(金融庁の公表資料)。

聞いていい質問があります

同じ監督指針に、事業者側の説明義務が書かれています。こちらが使える武器です。

顧客に対し、特定の商品を提示・推奨する際には、当該提示・推奨理由を分かりやすく説明することとしているか。特に……さらに絞込みを行った上で、商品を提示・推奨する場合には、商品特性や保険料水準などの客観的な基準や理由等について、説明を行っているか。 (同)

そして、客観的な基準によらない場合は、こうです。

……商品特性や保険料水準などの客観的な基準や理由等に基づくことなく、商品を絞込み又は特定の商品を顧客に提示・推奨する場合には、その基準や理由等(特定の保険会社との資本関係やその他の事務手続・経営方針上の理由を含む。)を説明しているか。 (同)

💰実際は

「なぜこの商品なんですか」は、聞いていい質問です。 客観的な基準があるなら、それを説明する義務があります。 客観的な基準でないなら、資本関係を含めて、その理由を説明する義務があります。 どちらにしても、答えが返ってくるはずの質問です。

なお、顧客の意向を把握する義務も法律にあります。

……顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等の提案、当該保険契約の内容の説明及び……顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行わなければならない。 (保険業法 第294条の2)

🔴 これは、非難する話ではありません

はっきり書いておきます。手数料で成り立っていること自体は、悪いことではありません。

不動産の仲介も、旅行代理店も、同じ構造です。売り手から報酬を受け取って、買い手に案内する。 商売として普通のことです。

問題は、こちらの受け取り方のほうです。

図解④ ずれているのはここ

相手の立場

保険を売る仕事です。売れなければ報酬がありません

▼

こちらの受け取り方

「中立な専門家の助言」だと思って聞いてしまう

▼

ずれているのは

相手の誠実さではなく、こちらが立場を取り違えていることです

販売員だと分かったうえで聞くなら、有益です。 商品知識は持っていますし、制度の説明もしてくれます。そのつもりで聞けばいいだけです。

🔴 そもそも、無料の相談業は成り立ちません

いちばん根っこの話をします。

お金の悩みを専門家に相談するのに、無料で成り立つはずがありません。 時間を使う人がいて、場所を借りていて、給料が出ているからです。

では、有料にすればいいのか。そこにジレンマがあります。

図解⑤ 相談業のジレンマ

本来

相談業は相談料をもらわないと成り立ちません

▼

ところが

お金の相談をしたい人は、たいていお金に余裕がない人です

▼

だから

月に数万円の相談料は、いちばん必要な人ほど払えません

▼

結果

相談業は単体では商売になりにくく、商品の販売とセットになります

無料相談が広がっているのは、誰かが悪いからではありません。 相談だけでは食べていけないという、市場の形がそうさせています。

📝補足

お金に余裕がある人ほど、有料で相談できます。 余裕がない人ほど、無料に行きます。 そして無料のほうには、商品を売る必要があります。 この非対称は、知っておくだけで扱いが変わります。

では、どう付き合うか

図解⑥ 3つの選び方

① 有料で相談する

相談料を取る人を探す。商品を売らないので、立場がねじれません

▼

② 販売員として付き合う

無料なら売る人だと分かったうえで、情報だけもらう

▼

③ その場で決めない

提案を持ち帰る。商品名と保険料を控えて、自分で調べる

③がいちばん実用的です。 提案書をもらって帰り、商品名で検索すれば、同種の商品の保険料はすぐ比べられます。その場で決める理由は、相手の都合であって、こちらの都合ではありません。

聞かれたときに確認する4つ

図解⑦ 窓口に座ったら

①

「どちらの保険会社の募集人ですか」(名乗る義務があります)

▼

②

「相談料は取っていますか」(取らないなら、原資は手数料です)

▼

③

「なぜこの商品なんですか」(絞り込んだ理由の説明義務があります)

▼

④

「持ち帰って検討します」(提案書と商品名をもらう)

③で言葉に詰まるなら、それが答えです。 客観的な基準があるなら、すぐ出てきます。

まとめ

「FPが無料で相談にのります」

  • 相談は無料です。 ただし相談にのる人の給料は無料ではありません
  • 「FP」は誰でも名乗れます。 名称が守られているのは「技能士」のほう(職業能力開発促進法50条)
  • 無料の原資は、保険会社から代理店に払われる手数料です
  • 保険募集人は、あらかじめ所属保険会社を明らかにする義務があります(保険業法294条3項)
  • 🔴 金融庁は監督指針に、「保険代理店の受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために……推奨を行うことのないよう留意する」と書いています
  • 🔴 「公平・中立」を掲げる場合は、資本関係や手数料の水準を考慮しないよう留意、とも書かれています
  • 商品を絞り込んだなら、客観的な基準や理由を説明する義務があります。客観的でないなら、資本関係を含めてその理由を説明する義務があります
  • これは非難する話ではありません。 商売として普通の形です
  • ずれているのはこちらが「中立な助言」だと受け取ることのほうです
  • 🔴 そして相談業は単体では成り立ちにくい。 お金の相談をしたい人ほど、相談料を払えないからです

聞かれたときに確かめるのは、この一問です。

「なぜ、この商品なんですか」

そして、自分に確かめる一問です。

「この人は、何で食べている人ですか」

答えが「保険を売って」なら、それは悪いことではありません。 ただ、そのつもりで聞くというだけのことです。


窓口で勧められる商品そのものは「貯蓄型保険なら安心してお金を貯められます」は本当?と「医療保険は入っておいた方が安心」は本当?、契約前に聞くことは営業されたら確認する10項目にまとめています。

📋 契約前にここを確認

  • その方は保険募集人ですか?(所属する保険会社を名乗る義務があります)
  • 相談料は取っていますか?取っていないなら、原資はどこから出ていますか?
  • なぜこの商品なのですか?(絞り込んだ理由を説明する義務があります)
  • 比べた他の商品は何ですか。そちらの保険料はいくらですか?
  • その提案を持ち帰って、自分で調べる時間はもらえますか?
  • 「中立」「公平」と書いてあるなら、何を基準に中立なのですか?

参照した情報源

  1. 金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」II-4-2-9(比較推奨販売・手数料水準の高い商品への誘導・過度の便宜供与)
  2. 金融庁「令和7年保険業法改正に係る内閣府令等の公布及びパブリックコメント結果の公表について(比較推奨販売)」(2026年8月28日・令和10年3月1日施行・適用)
  3. e-Gov 保険業法 第294条(情報の提供・所属保険会社等の明示)・第294条の2(顧客の意向の把握等)
  4. e-Gov 職業能力開発促進法 第50条(合格者の名称・技能士でない者は技能士という名称を用いてはならない)
  5. e-Gov 金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律 第2条(顧客等の最善の利益を勘案した誠実公正義務)
  6. 日本FP協会「FP技能検定とは」(国家資格・ファイナンシャル・プランニング技能士)

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