「元本保証で増えます」は本当? そう言って出資を集めること自体が禁止されています
営業トーク
「元本は保証されていますので、リスクなしで増やせますよ」
結論
元本を保証して出資金を集めることは、出資法1条で禁止されています。元本が守られる仕組みがあるのは、預金保険(1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円までとその利息等)や、償還金額が額面どおりと定められた個人向け国債などに限られます。リスクとリターンは切り離せません。ただし「だからリスクを取るな」という話でもなく、リスク資産と無リスク資産を分けて管理することが出発点になります。
こう言われることがあります。
「元本は保証されていますので、リスクなしで増やせますよ」
安心できそうな言葉です。ただ、この一言には法律上の問題があります。
元本を保証して出資金を集めること自体が、禁止されています。
先に結論
この記事の結論
法律で
元本保証をうたって出資金を集めることは禁止されています(出資法1条)。3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
本当に守られるのは
預金保険(1金融機関1,000万円までとその利息等)や個人向け国債など、仕組みが定められているものだけです
原則として
リスクのないものにリターンはありません。「リスクなしで増える」は、この原則の外にあります
ただし
「リスクを取るな」という話でもありません。リスク資産と無リスク資産を分けて管理するのが出発点です
🔴 「元本保証で出資を集める」こと自体が違法です
条文を読みます。
何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない (出資法1条)
条文の作りが厳しくできています。
図解① 条文のどこが厳しいか
「何人も」
業者に限りません。誰であっても禁止です
「全額若しくはこれをこえる金額」
元本保証だけでなく「元本+利益の保証」も含みます
「暗黙のうちに示して」
はっきり言わなくても、そう思わせれば該当します。「まず損はしません」も同じです
罰則もあります。
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 一 第一条……の規定に違反した者 (同8条3項)
実際は
「元本保証で増えます」と言って出資を募る行為は、罰則つきで禁止されています。 その言葉が出てきた時点で、相手が何をしているかがわかります。
補足
ここで対象になるのは出資の勧誘です。銀行預金や国債のように、別の法律で仕組みが定められているものは話が別です(次の項目)。
元本が守られる仕組みは、実在します
「元本保証」という言葉が、いつでもおかしいわけではありません。仕組みとして定められているものもあります。
① 預金 ── 預金保険制度
金融機関が破綻しても、決済用預金は全額、それ以外の一般預金等は1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1,000万円までとその利息等が保護されます(預金保険機構)。
ここに注意
外貨預金は預金保険の対象外です。 譲渡性預金なども対象から除かれます(同・対象預金)。 「銀行に預けているから安心」は、商品によって成り立ちません。
② 個人向け国債
財務省の商品概要に、こう書かれています。
償還金額 額面金額100円につき100円(中途換金時も同じ) 金利の下限 0.05%(年率) 中途換金 発行後1年経過すれば、いつでも中途換金が可能 (財務省「個人向け国債 商品概要」)
額面どおり戻ることが商品設計として決められています。 ただし中途換金には条件があります。
直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます
図解② 「元本が守られる」の中身は違う
預金
守っているのは預金保険制度。上限は1,000万円とその利息等。外貨預金は対象外
個人向け国債
守っているのは商品設計(償還金額の定め)。1年未満は換金できず、換金時は利子相当額が差し引かれます
聞くべきは
「何が元本を守っているんですか?」答えられないなら、守るものがありません
共通しているのは、どちらも「増える」商品ではないという点です。国債の金利の下限は年0.05%です。
🔴 リスクとリターンは切り離せません
ここが原則です。
図解③ なぜ「リスクなしで増える」が成り立たないのか
リターンとは
リスクを引き受けたことへの見返りです。値下がりするかもしれない、返ってこないかもしれない——それを引き受けるから上乗せがあります
だから
リスクを消せば、上乗せの理由も消えます
つまり
「リスクなしで大きく増える」は、原則の外側にあります。もし本当にあるなら、他人から集める必要がありません
「元本保証」と「高い利回り」が同時に出てきたら、そこで止まってください。金融庁も、この組み合わせを注意喚起の対象にしています。
無登録業者は、実際は(ほとんど)事業を実施していないのに、元本や利益を保証する等と勧誘する詐欺的な業者が多く、利益が出ているのに出金に応じてもらえず、そのうち連絡も取れなくなったというケースが多数発生しています (金融庁)
🔴 ただし「リスクを取るな」ではありません
ここが、この記事の本題です。
リスクを避けるのが正解、というわけでもありません。 リスクを取らなければ、リターンの源泉もなくなります。問題は「取るか取らないか」ではなく、取り方です。
図解④ 適切に取るとはどういうことか
まずい取り方
中身が分からないまま、全額を一つに入れる。当面使う予定のあるお金まで入れる
整理のしかた
無リスク資産(預金・個人向け国債など)とリスク資産を分けて把握する
分けておくと
相場が下がっても、当面の生活は無リスク資産で回せます。だから慌てて売らずに済みます
分けて管理することの実務的な効き目は、こうです。
- どれだけ下がっても困らない額が、あらかじめ決まっている
- 下落したときに、生活費のために売る必要がない
- 「元本保証で増えます」と言われても、そもそもその枠に入らないと判断できる
実際は
「元本保証」を求めてしまう気持ちの正体は、たいてい「減ったら困るお金だから」です。 それなら、そのお金は最初から無リスク資産に置いておく。分けておけば、無理な商品に手を出す理由がなくなります。
ここに注意
どの資産にいくら配分すべきかは、年齢・収入・家族構成・使う時期によって変わります。 この記事は配分を提案するものではありません。 「分けて把握する」という整理のしかたを示しています。
公平に書いておきます
- 元本が守られる商品には、ちゃんと使い道があります。 使う時期が決まっているお金の置き場所としては、むしろ適しています
- 預金にもリスクはあります。 物価が上がれば、同じ金額で買えるものは減ります。「減らない」ことと「価値が保たれる」ことは別です
- 国債も国の信用に依存しています。 絶対はありません
リスクゼロという状態は、そもそも存在しません。 どのリスクを引き受け、どのリスクを避けるかという選択があるだけです。
まとめ
「元本保証で増えます」
- 元本保証をうたって出資金を集めることは禁止されています(出資法1条)。3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
- 条文は「何人も」「暗黙のうちに示して」まで対象にしています。「まず損はしません」も同じです
- 元本が守られる仕組みは実在します。預金保険(1,000万円とその利息等)と個人向け国債(額面どおりの償還)など
- ただし外貨預金は預金保険の対象外です
- リスクを消せば、リターンの理由も消えます。 両立をうたう話は原則の外にあります
- それでも「リスクを取るな」ではありません。 リスク資産と無リスク資産を分けて把握するのが出発点です
言われたときに効くのは、この一問です。
「何が元本を守っているんですか?」
預金保険なのか、国の償還なのか、それとも相手の口約束なのか。そこがはっきりすれば、判断できます。
「増える」と言われる商品の中身は「毎月分配金が受け取れます」は本当?、リスクを取る側のコストは信託報酬の差は30年でいくらか、時間の効かせ方は複利とインデックス投資のきほんにまとめています。
📋 契約前にここを確認
- 「元本保証」と言っているのは誰ですか?(出資の勧誘なら違法です)
- その業者は金融庁に登録されていますか?
- 元本を守っているのは何ですか?(預金保険/国が償還/保証会社)
- 預金保険の対象ですか?(外貨預金は対象外です)
- そのお金は、当面使う予定のないお金ですか?