📈 投資・資産運用

信託報酬の差は30年でいくらか|「たった1%」を計算してみます

🗣️営業トーク

「信託報酬の違いなんて、年1%ちょっとですよ。そんなに気にする金額ではありません」

結論

毎月3万円を30年間、信託報酬控除前の年リターンを5%と仮定して計算すると、信託報酬0.0814%なら約2,419万円、1.5%なら約1,870万円。差は約550万円です。リターンは不確実ですが、信託報酬は残高に対して確実に引かれ続けます。金融庁もつみたて投資枠の対象商品に信託報酬の上限(インデックス0.5%・0.75%/それ以外1%・1.5%)を設けています。

窓口で、こう言われることがあります。

「信託報酬の違いなんて、年1%ちょっとですよ」

「そんなに気にする金額ではありません」

年1%。確かに、1年で見れば小さい数字です。

では30年で計算してみます。

先に結論

毎月3万円 × 30年(元本1,080万円)/年5%と仮定した場合

信託報酬
0.0814%
約2,419万円
信託報酬
0.5%
約2,240万円
信託報酬
1.0%
約2,045万円
信託報酬
1.5%
約1,870万円

同じ商品を同じ期間、同じ金額だけ積み立てた場合の計算です。違うのは信託報酬だけ。前提と計算方法は下に書きます。

約550万円0.0814% と 1.5% の差(30年後)

元本1,080万円に対して、550万円です。 「年1%ちょっと」の正体がこれです。

なぜ、こんなに変わるのか

理由は2つあります。

① 信託報酬は「残高」にかかります

ここを取り違えている人が多いところです。

図解① どこにかかる費用なのか

よくある誤解

「毎年入れた3万円×12ヶ月にかかる」——違います

▼

実際は

その時点の残高すべてに、毎日かかります。1,000万円貯まっていれば1,000万円に対してかかります

▼

だから

残高が大きくなる後半ほど、引かれる金額も大きくなります

交付目論見書には、こう書かれています。

運用管理費用(信託報酬)の総額は、以下の通りです。 日々の純資産総額に対して、年率0.08140%(税抜年率0.07400%)以内をかけた額 (eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)交付目論見書・2026年7月25日付)

「日々の純資産総額に対して」。残高に対して、毎日です。

② 引かれた分は、増えるはずだった分でもあります

こちらのほうが影響は大きいくらいです。

信託報酬1.5%のケースで、30年間に実際に引かれた額を積み上げると約355万円でした。ところが最終額の差は約587万円(手数料ゼロの場合との比較)。

残りの約232万円は、「引かれた手数料が、そのまま置いてあれば生んでいたはずの利益」です。

💰実際は

手数料は、金額だけでなく「その手数料が生むはずだった利益」も一緒に持っていきます。 複利が効くのと同じ理屈で、マイナス側にも複利が効きます。

差は後半に加速します

10年時点で見ると、大した差には見えません。そこが落とし穴です。

経過 0.0814% 1.5% 差
10年後 約463万円 約429万円 約34万円
20年後 約1,211万円 約1,029万円 約182万円
30年後 約2,419万円 約1,870万円 約550万円

図解② 差の広がり方

10年後
34万円
20年後
182万円
30年後
550万円

最初の10年で「たいして変わらない」と感じても、それは差が出ていないのではなく、まだ出ていないだけです。

10年で34万円なら気にならないかもしれません。 でも同じ条件のまま30年続けると550万円になります。

🔴 別の見方:リターンの何%を持っていくか

「年1.5%」という数字を、リターンと並べてみてください。

図解③ 年5%のリターンのうち、手数料が取る割合

0.0814%
1.6%
0.5%
10.0%
1.0%
20.0%
1.5%
30.0%

🔍CHECK

年1.5%の信託報酬は、「リターンの3割を持っていく」ということです。 「たった1.5%」ではなく「利益の30%」。同じ数字を、別の分母で見ただけです。

そして重要なのは、リターンは不確実だが、信託報酬は確実に引かれるという非対称です。相場がマイナスの年でも、信託報酬は同じようにかかります。

🔴 国が上限を決めています

「気にする金額ではない」なら、法律で上限を決める必要はありません。決まっています。

金融庁は、つみたて投資枠に入れられる商品の要件として、信託報酬の上限を告示しています。

商品の種類 投資先 信託報酬の上限(税抜)
対象指数に連動するもの(インデックス) 国内資産 0.5%以下
海外資産 0.75%以下
対象指数に連動しないもの 国内資産 1%以下
海外資産 1.5%以下

(金融庁「つみたて投資枠における公募株式投資信託の要件」図表3・2025年4月22日。ほかに販売手数料ノーロード、解約手数料・口座管理料ゼロなどの要件があります)

そして実際の対象商品の平均は、上限よりさらに低くなっています。

投資先を国内とする指定インデックス投信:平均0.27%(法令上の上限0.5%) 投資先を内外・海外とする指定インデックス投信:平均0.34%(法令上の上限0.75%) (金融庁「つみたて投資枠対象商品の概要について」2026年8月31日時点・対象367本)

💰実際は

この上限は「つみたて投資枠に入れるための条件」です。 つまり、この枠の外で売られている商品には、この上限はかかりません。 勧められた商品がこの枠の対象かどうかは、それだけで一つの目印になります。

🔴 見るべきは「総経費率」です

信託報酬だけでは、実際の負担が分かりません。ほかにも費用がかかるからです。

交付目論見書には、いまは総経費率が載っています。さきほどの商品の記載です。

総経費率(①+②)0.07953%〔内訳①運用管理費用:0.07661%、②その他費用:0.00292%〕

信託報酬+その他費用の合計が総経費率です。売買にかかる費用や監査費用などが「その他費用」に入ります。

🔍CHECK

聞くべきはこれです。 「この商品の総経費率は何%ですか?」 信託報酬だけを答えてくる場合は、目論見書の該当箇所を見せてもらってください。

加えて、買うときと売るときの費用も確認してください。

  • 購入時手数料(買った瞬間に引かれる。かからない商品も多くあります)
  • 信託財産留保額(解約時に差し引かれる)

計算の前提を書いておきます

数字を出した以上、再現できるように前提を明記します。

図解④ 計算の前提

積立額

毎月3万円 × 30年 = 元本1,080万円

▼

リターン

信託報酬を引く前で年5%と仮定。毎月末に積立、月次で運用・信託報酬控除

▼

含めていないもの

税金、購入時手数料、信託財産留保額、その他費用、為替。実際はこれらも影響します

⚠️ここに注意

年5%は「予測」ではありません。計算のための仮定です。 将来のリターンは誰にも分かりませんし、マイナスになる年もあります。 この記事が示しているのはリターンの予想ではなく、「同じリターンなら手数料の差がどれだけ効くか」です。

前提を変えても、結論は同じ向きです。

仮定したリターン 0.0814% 1.5% 差
年3% 約1,716万円 約1,353万円 約364万円
年4% 約2,033万円 約1,586万円 約447万円
年5% 約2,419万円 約1,870万円 約550万円
年6% 約2,892万円 約2,214万円 約678万円
年7% 約3,472万円 約2,635万円 約837万円

どの前提でも、差は数百万円です。 リターンが高いほど差も大きくなります。

公平に書いておきます

手数料だけで決める話でもありません。

  • 信託報酬が低ければ成績が良い、という保証はありません。 指数からのズレ(乖離)が大きければ、安くても不利になります
  • 投資対象が違う商品の手数料を並べても意味がありません。 比べるなら同じ対象のもの同士です
  • アクティブファンドに存在意義がないという話でもありません。 ただし高い手数料を上回る成績が必要になります(アクティブファンドの記事)
  • 手数料は下がることがあります。 実際、この記事で挙げた商品も過去に何度か引き下げられています。最新は目論見書で確認してください

📝補足

この記事は特定の商品をすすめるものではありません。費用の水準を示す例として、公開されている目論見書の数値を引用しています。 信託報酬は変更されることがあるため、最新の数値は必ず交付目論見書でご確認ください。

まとめ

「信託報酬の違いなんて、年1%ちょっとですよ」

  • 毎月3万円・30年・年5%と仮定すると、0.0814%で約2,419万円、1.5%で約1,870万円。差は約550万円
  • 信託報酬は残高に対して日々かかります。後半ほど引かれる金額が増えます
  • 引かれた手数料は、それが生むはずだった利益も一緒に持っていきます
  • 10年で34万円、20年で182万円、30年で550万円。 差は後半に加速します
  • 年1.5%は、年5%のリターンの30%にあたります
  • 金融庁はつみたて投資枠の要件として上限を告示しています(インデックス0.5%・0.75%/それ以外1%・1.5%)
  • 見るべきは信託報酬だけでなく総経費率です

確かめるのは2つの数字だけです。

「この商品の総経費率は何%ですか? 同じ対象のインデックスファンドは何%ですか?」

リターンは不確実です。手数料は確実です。 確実なほうを先に確認するのは、理にかなっています。


複利がなぜ効くのかは複利とインデックス投資の記事、成績とコストの関係はアクティブファンドの記事、口座ごとの手数料の違いは企業型DCとiDeCoの記事にまとめています。

📋 契約前にここを確認

  • その商品の信託報酬は年何%ですか?(税込で)
  • 総経費率は何%ですか?(信託報酬以外も含めた実際の負担)
  • 同じ対象のインデックスファンドは年何%ですか?
  • つみたて投資枠の対象商品ですか?
  • 購入時手数料と信託財産留保額はかかりますか?

参照した情報源

  1. 金融庁「つみたて投資枠対象商品の概要について」(2026年8月31日時点・信託報酬率の分布と平均)
  2. 金融庁「つみたて投資枠における投資対象②【図表3】つみたて投資枠における公募株式投資信託の要件」(NISA推進会議 説明資料・2025年4月22日)
  3. 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」交付目論見書(2026年7月25日付・信託報酬 年率0.08140%以内、総経費率0.07953%)

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