「毎月分配金が受け取れます」は本当? その分配金、自分のお金かもしれません
営業トーク
「この商品なら、毎月分配金が受け取れますよ。年金の足しになります」
結論
分配金がすべて運用の成果とは限りません。所得税法施行令27条は「特別分配金」を非課税と定めていますが、これは所得ではなく元本の払い戻しだからです。受け取ると取得価額が下がります。金融庁はつみたて投資枠の対象から毎月分配型を除外しています。なお、相場を大きく上回る利回りをうたう勧誘は、正規の投資信託とは別の危険があります。
窓口で、こう言われることがあります。
「この商品なら、毎月分配金が受け取れますよ」
「年金の足しになります」
毎月お金が振り込まれる。確かに、うれしい響きです。
ただ、確かめることがひとつあります。そのお金は、どこから来ているのか。
先に結論
この記事の結論
分配金は2種類
運用で得た利益から出るものと、自分が預けた元本が戻ってくるだけのものがあります
見分け方
税金がかかるかどうか。かからない分配金は「所得ではない」=元本の払い戻しだからです
国の扱い
金融庁はつみたて投資枠の対象から毎月分配型を除外しています
別の話として
相場を大きく上回る利回りをうたう勧誘は、投資信託とはまったく別の危険があります(後半で扱います)
🔴 税金がかからない分配金があります
ここが一番の手がかりです。投資信託の分配金には、税金がかかるものとかからないものがあります。
なぜ、かからないものがあるのか。条文にそのまま書いてあります。
(オープン型の証券投資信託の収益の分配のうち非課税とされるもの) 第二十七条 法第九条第一項第十一号(非課税所得)に規定する政令で定めるものは、オープン型の証券投資信託の契約に基づき収益調整金のみに係る収益として分配される特別分配金とする (所得税法施行令27条)
「非課税所得」の条文に置かれています。
図解① なぜ税金がかからないのか
普通分配金
運用で増えた分から出る=もうけなので課税されます
特別分配金
自分が預けたお金が戻ってきただけ=もうけではないので課税されません
つまり
「税金が引かれていない分配金」は、利益ではありません。自分のお金が返ってきているだけです
実際は
もうけていないから、課税されない。 税金がかからないことを「お得」と説明されたら、話が逆です。
🔴 受け取ると、取得価額が下がります
「元本の払い戻し」であることは、もう一つの条文でも確認できます。特別分配金を受け取ると、その分だけ取得価額が引き下げられると定められています。
その計算の基礎となる旧受益権一口当たりの取得価額は、……当該特別分配金として分配される金額を控除した金額を当該旧受益権の数で除して計算した金額とし (同施行令・第105条第1項の評価額の計算に関する規定)
図解② 特別分配金を受け取ったとき
手元に
分配金が振り込まれる
同時に
取得価額がその分だけ下がる(=持っている資産の評価が減る)
差し引き
財産は増えていません。左のポケットから右のポケットに移しただけです
これが「たこ足配当」と呼ばれる状態です。たこが自分の足を食べても、たこ自身は大きくなりません。
しかも、その間も信託報酬は残高にかかり続けます。 自分のお金を返してもらいながら、手数料を払っている形になります。
CHECK
確かめ方は簡単です。 「この分配金に税金はかかりますか?」 「かかりません」と言われたら、それは元本の払い戻しです。
🔴 国は、この形を長期投資から外しています
金融庁は、つみたて投資枠に入れられる商品の条件をこう説明しています。
①整理・監理銘柄 ②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外 (金融庁「NISAを知る」)
つみたて投資枠は「長期・積立・分散投資に適した」商品に限定されている枠です。そこから毎月分配型は外されています。
理由は複利です。分配金として払い出せば、そのお金はもう運用されません。複利は再投資して初めて効くので、毎月払い出す設計は長期の資産形成とは向きが逆になります。
補足
勧められた商品がつみたて投資枠の対象かどうかを聞くだけで、この点は確認できます。
🔴 ここからは別の話です:高すぎる利回り
ここまでは正規の投資信託の話でした。以下はまったく別の問題なので、混同しないでください。
「毎月分配」をうたう勧誘の中には、そもそも運用実体がないものがあります。金融庁が注意喚起しています。
登録を受けていない「無登録業者」は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず……。また、預けた資金を出金しようとしたときに、これまで出金ができていたにもかかわらず、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるなどといったトラブルに遭ったという声が多く寄せられています (金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」・令和8年10月7日更新)
新しく集めたお金を、前の出資者への「配当」に回す——この形をポンジスキームと呼びます。運用で増えたお金ではないので、新規の出資が止まった時点で破綻します。
図解③ 構造は似ていても、性質はまったく違う
正規の投資信託
元本の払い戻しが混ざることがあるが、目論見書と運用報告書で開示され、税制上も区別されている。合法です
運用実体のない勧誘
運用していないのに配当を装う。開示されず、隠されている。金融庁が「詐欺的な商法であるおそれが高い」としている類型です
共通するのは
「その配当の原資はどこか」という問い。これを聞けば、どちらにも効きます
ここに注意
🔴 正規の毎月分配型ファンドは詐欺ではありません。 金融庁の登録を受けた会社が、開示されたルールに従って運用している商品です。 ここで言っているのは、同じ「毎月もらえる」という言葉が、まったく違う中身に使われることがあるということです。
危険なサイン
相場を大きく上回る利回りをうたわれたら、そこで止まってください。
図解④ ここで止まる
「元本保証」+「高利回り」
この2つが同時に成り立つ商品は、通常ありません。金融庁が詐欺的な勧誘の典型例として挙げています
「月利〇%」
月利3%なら年利は40%を超えます。それが本当なら、他人から集める必要がありません
確認すること
金融商品取引業の登録があるか。金融庁の一覧で名前を調べられます
金融庁は、海外業者についてもこう書いています。
金融商品取引法に基づく登録を受けていない海外所在業者が、インターネットに日本語ホームページを開設する等により、外国為替証拠金取引(FX取引)や有価証券投資等の勧誘を行っている例が見受けられます。……日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法です (金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)
「海外のファンドだから日本の登録は要らない」という説明は、成り立ちません。
公平に書いておきます
毎月分配型に意味がないという話ではありません。
- 取り崩しながら使いたい人には、仕組みとして合っています。すでに資産があり、毎月の生活費に充てる目的なら理にかなっています
- 分配金がすべて元本の払い戻しとは限りません。 運用がうまくいっていれば普通分配金として出ます
- 資産を「増やす」段階ではなく「使う」段階の人にとっては、選択肢のひとつです
問題は商品そのものではなく、「毎月もらえる=もうかっている」という理由づけのほうです。 それが増えたお金なのか、自分のお金なのかは、確かめられます。
実際は
自分で取り崩すこともできます。必要なときに必要な額だけ解約すれば、分配のタイミングを自分で決められて、手数料の高い商品を選ぶ必要もありません。
まとめ
「毎月分配金が受け取れますよ」
- 分配金には、運用の利益から出るものと、元本が戻ってくるだけのものがあります
- 税金がかからない分配金は、所得ではない=元本の払い戻しです(所得税法施行令27条)
- 受け取ると取得価額が下がります。財産は増えていません
- その間も信託報酬はかかり続けます
- 金融庁はつみたて投資枠から毎月分配型を除外しています
- 別の問題として、運用実体がないのに配当を装う勧誘があります。金融庁が注意喚起しています
- 「元本保証」と「高利回り」が同時に出てきたら、そこで止まってください
窓口で確かめるなら、この一言です。
「この分配金に、税金はかかりますか?」
かからないなら、それは利益ではありません。
複利がなぜ再投資で効くのかは複利とインデックス投資のきほん、分配とは別に引かれ続けるコストは信託報酬の差は30年でいくらかにまとめています。
📋 契約前にここを確認
- その分配金に税金はかかりますか?(かからないなら元本の払い戻しです)
- 分配金を出したあと、基準価額はどう動いていますか?
- つみたて投資枠の対象商品ですか?(毎月分配型は除外されています)
- 信託報酬は年何%ですか?
- (高利回りをうたわれた場合)その業者は金融庁に登録されていますか?