「詐欺の被害金、取り戻せます」は本当? 取り戻す話で先にお金を払わせる手口に、金融庁と消費者庁が注意しています
営業トーク
「詐欺の被害金、私たちなら取り戻せます。国の救済制度も使えますよ。まずは調査費用と着手金をお支払いください」
結論
投資や詐欺で損をした人に、「被害を回復してあげる」「国の救済制度で返金を受けられる」「返金手続を代行する」と近づき、手数料や別の投資商品の購入を求める手口について、消費者庁と金融庁(令和8年9月1日)が「二次被害」として注意を呼びかけています。金融庁は「詐欺的な商法の可能性」があるとしています。探偵業者の仕事は法律上、調査して結果を報告することです。報酬を得て相手と返金の交渉や和解をすることを業として行えるのは、ほかの法律に定めがある場合を除いて弁護士だけです(弁護士法72条)。国の救済制度(振り込め詐欺救済法)は、振込先の銀行が口座を止め、預金保険機構の公告を経て、被害者が振込先の銀行に申請するものです。国民生活センターは、相談したことのない人に示談金や返金の話で連絡することは絶対にないとしています。取り戻したいときは、まず振込先の銀行と警察へ。相談先は消費者ホットライン188と、弁護士会の法律相談です。
詐欺でお金を失ったあと、スマートフォンで「詐欺 返金」「被害金 取り戻す」と検索します。
「返金可能」「無料相談」「被害金を取り戻します」。そんな広告がいくつも出てきます。
あるいは、知らない相手から電話やメールが来ます。
「詐欺の被害金、私たちなら取り戻せます」
「国の救済制度も使えますよ。まずは調査費用と着手金をお支払いください」
お金を失ったばかりで、取り戻せるなら何でもしたい。その気持ちが、次に狙われます。 この記事では、「取り戻す」話の見分け方と、本当に取り戻す手続きを整理します。
先に結論
この記事の結論
この話は
金融庁と消費者庁が注意している「二次被害」の形です
探偵は
法律上、調査して報告する仕事。報酬を得て返金交渉をできるのは、原則弁護士です
国の救済制度は
振込先の銀行に申請するもの。業者に代行料を払う仕組みではありません
だから
まず振込先の銀行と警察へ。相談は188と弁護士会
🔴 金融庁と消費者庁が、この手口に注意しています
消費者庁は、よくある誘い方を3つ挙げています。
投資系トラブルに遭ったことのある消費者から、 返金を受けるには、別の投資商品を購入する必要がある 国の救済制度により返金を受けられる 返金手続を代行する などと被害回復を持ち掛けられ、金銭の支払を要求された、といった相談が見られます。 見知らぬ業者などから、被害回復のためといって金銭を要求されたり、新たな投資を勧められたりした場合は、二次被害のおそれがあります。 (消費者庁「投資系トラブルの二次被害にご注意ください!」)
金融庁も、令和8年9月1日に注意を出しています。
近年、投資により損失を被った人に、「被害を回復してあげる」などと電話をかけ、被害回復の条件として、別の投資商品の購入や手数料の支払い等を求めるケースが見受けられます。 また、行政処分等に便乗して、解約・返金等の交渉を代行する条件として、金銭等を請求するケースも見られるところです。 これらについては、被害回復等を装い、金銭を要求する詐欺的な商法の可能性がありますので、そのような勧誘を受けた場合などには、一人で悩まず、相談するようにしてください。 (金融庁「被害回復等を装った詐欺(二次被害トラブル)にご注意ください!」・令和8年9月1日)
図解① 「取り戻せます」の3つの形(消費者庁・金融庁の注意喚起をもとに作成)
①
「返金を受けるには、別の投資商品を買う必要がある」
②
「国の救済制度で返金を受けられる」(だから手数料を)
③
「返金の交渉・手続を代行する」(だから先にお金を)
共通点
取り戻す前に、こちらが払う
取り戻す話なのに、先にお金が出ていく。 ここが見分けるところです。
🔴 探偵にできるのは、調査と報告です
「返金可能」の広告の先が、探偵業者(調査会社)であることがあります。探偵業の仕事は、法律でこう決まっています。
この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。 (探偵業の業務の適正化に関する法律 第2条第1項)
一方、お金を返してもらうための交渉は、法律事務です。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 (弁護士法 第72条)
違反は2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(同法第77条)。
調査の結果が分かっても、それだけでお金は戻りません。 相手の口座にお金が残っているか、相手が誰か、交渉や裁判ができるか。そこから先は、別の話です。
国民生活センターは2016年に、「無料相談」「返金可能」をうたう窓口に相談したら、実際には探偵業者に数万円で「調査」を依頼したことになっていて、返金もなかったという相談が急増していると注意していました(国民生活センター 2016年12月15日)。当時はアダルトサイトの請求の相談でしたが、「返金可能」の入口から調査契約に進む形は、今の「取り戻せます」と同じです(この比較は当サイトの見方です)。
🔴 国の救済制度は、銀行に申請するものです
「国の救済制度」自体は、実在します。振り込め詐欺救済法です。
この法律は、預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた者に対する被害回復分配金の支払等のため、……定め、もって当該犯罪行為により被害を受けた者の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的とする。 (犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律 第1条)
仕組みは、法律に順番が書いてあります。
図解② 振り込め詐欺救済法の流れ(条文をもとに当サイトが作成)
①
振込先の銀行が、犯罪に使われた疑いのある口座の取引を止める(第3条)
②
預金保険機構が公告する。口座名義人が権利を届け出る期間は60日以上(第5条)
③
残っていたお金を元手に、被害者へ被害回復分配金を支払う(第8条)
申請先
被害者が、振込先の口座がある銀行に申請する(第12条)
申請する相手は、振込先の銀行です。 手続きを進めるのは銀行と預金保険機構で、業者に代行料を払って「使えるようにしてもらう」制度ではありません。
そして、分配の元手は口座に残っていたお金です(第8条)。残っていなければ、分けるお金がありません。だから、振込先の銀行への連絡は一刻を争います。
補足
この法律が対象にしているのは、預金口座への振込みです。 暗号資産で送った場合や、現金を手渡した場合は、この仕組みには乗りません。そういう被害に「国の制度で戻ります」と言ってくる話は、なおさら慎重に確かめてください。
「国民生活センターです」という連絡も、確かめてください
公的な機関を名乗って「返金」を持ちかける手口もあります。国民生活センターは、こう書いています。
国民生活センターが、当センターに相談したことのない人にメールや電話等で、以下のように連絡をとることは絶対にありません。 「○○金のため・・・」 「訴訟で○○するように・・・」 「○○の申請が必要・・・」 (国民生活センター「国民生活センターをかたる電話やメール等にご注意ください!」・2026年10月20日更新)
同じページには、「悪徳サイトから徴収したお金を返金させて頂いております」と書かれた、国民生活センターのロゴを使った偽のサイトの事例も載っています。
取り戻したいときに、本当にやること
図解③ 自分から連絡する先(相手から来た連絡には乗らない)
すぐに
振込先の銀行(口座を止めてもらう)と警察(最寄りの警察署・#9110)
相談
消費者ホットライン188(最寄りの消費生活センターにつながる)
法律の相談
弁護士会の法律相談センター。弁護士かどうかは日本弁護士連合会の「弁護士検索」で確かめる
どれも、自分で調べた番号に、自分から連絡します。 向こうから来た「取り戻せます」の連絡先には、連絡しません。
とはいえ、営業側にも一理ある部分
- 弁護士に依頼して、取り戻すための手続きをとること自体は、正当な方法です。 交渉や裁判など、法律上の手続きをとれるのは弁護士です。弁護士費用のおおよその目安や、費用を払う余裕がないときの法律扶助制度は、日本弁護士連合会「弁護士費用について」で紹介されています
- 探偵業者の調査も、それ自体は法律で認められた仕事です。調査が役に立つ場面(相手の所在を知りたいなど)もあります
- ただし、結果を約束できる話ではありません。 救済法の分配も、口座にお金が残っていなければ元手がありません(第8条)
- 依頼する前に、①相手は弁護士か ②何をしてくれる契約か(調査なのか、交渉・裁判なのか) ③取り戻せなかったとき、払ったお金はどうなるかを、書面で確かめてください
こんな時は要注意
- 向こうから「取り戻せます」と連絡してきた
- 「国の救済制度」を使うのに、手数料を払えと言われた
- 返金の条件として、別の投資商品を買うよう言われた
- 「成功率○%」「必ず取り戻せる」と言われた
- 契約書を見たら、中身が「調査」だった
- 国民生活センターなど公的な機関の名前を名乗って、向こうから返金の話をしてくる
まとめ
「詐欺の被害金、取り戻せます」
- 🔴 返金をうたって先にお金を払わせる手口に、金融庁(令和8年9月1日)と消費者庁が注意しています。金融庁は「詐欺的な商法の可能性」があるとしています
- 誘い方は3つ。別の投資商品を買わせる・国の救済制度を持ち出す・返金手続の代行
- 探偵業の仕事は、法律上調査して報告すること。報酬を得て返金交渉や和解をすることを業として行えるのは、ほかの法律に定めがある場合を除き弁護士です(弁護士法72条)
- 🔴 国の救済制度(振り込め詐欺救済法)は、振込先の銀行に申請するもの。分配の元手は口座に残っていたお金です
- 国民生活センターは、相談したことのない人に返金や示談金の話で連絡することは絶対にないとしています
- 取り戻したいときは、自分から振込先の銀行・警察・188・弁護士会へ
聞くのは、この一問です。
「あなたは弁護士ですか? この契約は、調査ですか、交渉ですか?」
最初の被害の手口は、SNSの投資グループなら「先生の言うとおりにすれば、必ずもうかります」は本当?、警察を名乗る電話なら「警察です。あなたの口座が犯罪に使われています」は本当?、高額な副業サポートなら「スマホで簡単な作業をするだけで、月30万円稼げます」は本当?にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- 相手から連絡してきましたか? それとも自分で探しましたか?
- 「国の救済制度」「返金手続の代行」を理由に、先にお金を求められていませんか?
- 返金の条件として、別の投資商品を買うよう言われていませんか?
- 相手は弁護士ですか? 探偵・調査会社ですか? 弁護士なら、日本弁護士連合会の「弁護士検索」で確かめましたか?
- 振込先の銀行と警察には、もう連絡しましたか?
- 消費生活センター(188)に相談しましたか?
参照した情報源
- 金融庁「被害回復等を装った詐欺(二次被害トラブル)にご注意ください!(不動産特定共同事業法関係)」(令和8年9月1日)
- 消費者庁「投資系トラブルの二次被害にご注意ください!」
- 国民生活センター「国民生活センターをかたる電話やメール等にご注意ください!」(2026年10月20日更新)
- 国民生活センター「『アダルトサイトとのトラブル解決』をうたう探偵業者にご注意!」(2016年12月15日)
- e-Gov 探偵業の業務の適正化に関する法律 第2条(定義)
- e-Gov 弁護士法 第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)・第77条(罰則)
- e-Gov 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律 第3条・第5条・第8条・第12条
- 日本弁護士連合会「弁護士の見つけ方」(弁護士検索・全国の弁護士会の法律相談センター)