「先生の言うとおりにすれば、必ずもうかります」は本当? 本物の証券会社は、個人の口座に振り込ませません
営業トーク
「このグループで先生の言うとおりに投資すれば、必ずもうかりますよ。まずは少額から始めてみませんか」
結論
SNSで知り合った人に誘われ、LINEのグループで「先生」の指示どおりに投資する。この形はSNS型投資詐欺の典型で、警察庁の統計では令和7年に9,523件・被害額1,288.0億円、令和8年も8月末までで被害額937.4億円(前年同期比+53.8%)と増え続けています。最初の接触はインスタグラムが最多、被害のときの連絡手段は93.5%がLINEです。話の中身や相手の人柄で見分けようとすると、負けます。見分けるのは2点だけです。株やFXや暗号資産の取引を扱う業者は、法律で国への登録が義務づけられています。そして、本物の証券会社が入金先に個人名義の口座を指定することはありません。アプリに表示される利益は、ただの数字です。
始まりは、インスタグラムのダイレクトメッセージや、動画サイトの広告です。
「投資の勉強会をやっています」
「無料でいいので、LINEのグループに入りませんか」
グループには「先生」と「アシスタント」がいて、ほかのメンバーが次々に「もうかりました、ありがとうございます」と書き込んでいます。そして、こう言われます。
「先生の言うとおりにすれば、必ずもうかります。まずは少額から」
言われたとおりにアプリを入れて入金すると、画面の残高が増えていきます。少しなら引き出すこともできました。
ここまで来ると、疑うほうが難しくなります。 この記事は、その「難しくなる前」に確かめる方法の話です。
先に結論
この記事の結論
この形は
警察庁が統計を取っている「SNS型投資詐欺」の典型です
被害は
令和7年に1,288億円。令和8年は8月末までで前年同期の約1.5倍です
見分けるのは
話の中身ではなく、①国への登録 ②振込先の名義の2点です
アプリの利益は
ただの数字です。本当にお金があるとは限りません
振り込んでしまったら
すぐに振込先の銀行と警察へ。時間との勝負です
🔴 数字で見ると、これだけ起きています
警察庁の統計です。
SNS型投資詐欺の認知件数は9,523件(+3,110件、+48.5%)、被害額は1,288.0億円(+416.9億円、+47.9%)と認知件数、被害額ともに前年に比べて増加。 (警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」・8頁)
1件あたりにならすと、約1,350万円です(1,288.0億円÷9,523件。この計算は当サイト)。
そして令和8年も、勢いは止まっていません。
| 認知件数 | 被害額 | |
|---|---|---|
| 令和8年1〜8月 | 7,097件(前年同期比+49.4%) | 937.4億円(前年同期比+53.8%) |
(警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」)
入口はインスタグラム、やりとりはLINE
同じ統計に、どこで最初に接触し、どこでだまされたかが載っています。
| 最初に接触したツール(令和7年) | 件数 |
|---|---|
| インスタグラム | 1,934件(最多・20.3%) |
| ユーチューブ | 1,229件 |
| LINE | 1,211件 |
| 投資のサイト | 1,071件 |
| ティックトック | 830件 |
| フェイスブック | 822件 |
被害時の連絡ツールは、LINEが8,906件(+3,077件、+52.8%)と、全体の9割以上を占める。 (同・10頁)
入口はいろいろでも、最後はほぼ全員がLINEに移されています。 最初の接触手段では、ダイレクトメッセージが前年から66.4%増えていて、そのうち最多がインスタグラム(1,000件)です。
狙われるのは、お年寄りだけではありません
被害者の年齢層は、幅広い年代に被害が及びつつも、男女ともに、40代から60代が多数を占めている状況。 ……男性の被害がSNS型投資詐欺の認知件数、被害額ともに約6割を占める。 (同・9頁)
働き盛りの世代が、まとまったお金を失っています。 相手が名乗った職業は「投資家」が3,288件で最多でした。
手口は、ほぼ同じ順番で進みます
警察庁は、手口の流れをこう整理しています。
図解① SNS型投資詐欺の流れ(警察庁の整理をもとに作成)
①
SNSの広告をタップする・ダイレクトメッセージが来る
②
LINEなどのグループに招待される
③
サクラが「もうかっている」と投稿する
④
「投資家」や「アシスタント」を名乗る者から振込の指示
⑤
画面に偽の利益を表示し、その一部(少額)を実際に振り込んでくる
⑥
高額の偽の利益を見せて、全額を引き出すための「手数料」などを要求
⑦
突然、連絡が途絶える
同じページには、実際の事例が載っています。
被害者:60代女性 被害額:合計約2,000万円 動画配信サイトで新NISAに関する解説動画を視聴していた際、動画の概要欄に記載されていたURLアドレスをクリックしたところ、別のSNSのグループチャットへの参加を招待された。 (同)
入口は「怪しい話」ではなく、「まじめな投資の勉強」の顔をしています。
ここに注意
🔴 ⑤がいちばん危険です。 少額でも一度お金が戻ってくると、「本物だ」と思ってしまいます。 それは、もっと大きなお金を入れさせるための演出です。 戻ってきたのは、あなたが入れたお金の一部です。
🔴 アプリの残高は、ただの数字です
金融庁は、証券口座を装ったアプリの手口をこう書いています。
グループチャット等で投資勧誘された後、証券口座開設のためにアプリのインストールを求めてくる。 既存の金商業者に似せた名称がアプリに使われていることがある。 入金に個人名義の口座を指定してくる。 アプリ上で、振り込んだ額と同額が入金されたかのように残高表示される。 取引の結果、利益が出ているかのように装う。最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる。 (金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」)
画面の数字は、相手が好きなように書き換えられます。 残高が増えていても、それはお金がそこにある証拠になりません。
そして、引き出そうとした瞬間に「手数料」などを先に払えと言われたら、警察庁が整理した手口の⑥そのものです。
🔴 見分けるのは、2点だけです
話がうまいか、相手が親切か、グループが盛り上がっているか。そこで見分けようとすると負けます。 相手はそこを作り込むのが仕事だからです。
見分けるのは、相手が変えられないものです。
① 国に登録しているか
株やFXの取引を扱う業者は、法律で登録が義務づけられています。
金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。 (金融商品取引法 第29条)
暗号資産も同じです。
暗号資産交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。 (資金決済に関する法律 第63条の2)
登録しているかどうかは、金融庁のサイトで誰でも確かめられます(免許・許可・登録等を受けている業者一覧)。名前や電話番号で検索できる機能もあります。
補足
実在する会社の名前を騙る手口もあります。 金融庁は「既存の金商業者の名称やそれらしい名称を用いて」「登録番号を詐称している」事例を挙げています。 名前が一覧にあっても、そのLINEの相手がその会社である保証にはなりません。 確かめるなら、自分で調べたその会社の公式の連絡先に問い合わせることです。
無登録で金融商品取引業を行うことは犯罪です。令和8年8月12日からは、罰則が「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」から「10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金」に引き上げられました(金融庁・金融商品取引法第197条第1項)。
② 振込先が、個人名義の口座ではないか
ここは、判断に迷う余地がありません。
入金の際に証券会社が個人名義の銀行口座を指定することはありません。 (金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」)
通常の株や FX 等の取引で個人名義の銀行口座に振り込みさせることはありません。指定された口座が個人名義の場合は詐欺です。絶対に振り込まないでください。 (国民生活センター 2024年5月29日)
図解② 見分ける2点
①
金融庁の一覧に、その業者はありますか(なければ、そこで終わりです)
②
振込先は個人名義ですか(個人名義なら、振り込みません。証券会社が個人名義の口座を指定することはありません)
どちらも、相手の話がどれだけうまくても変えられません。 だから、ここで見ます。
「有名人が勧めている」は、根拠になりません
警察庁の統計には、こう書かれています。
その内容は、著名人の画像や動画を無断で使用した広告が確認されており、「必ずもうかる」、「元本保証」などの文言を含む広告も見られた。 (警察庁 令和7年確定値・11頁)
国民生活センターも、著名人の公式サイトや公式アカウントで、投資に関する注意喚起が出ていないかをまず確認するよう勧めています。
そもそも「元本を保証して出資を集める」こと自体が、法律で禁止されています。詳しくは「元本保証で増えます」は本当?にまとめています。
実際は
「必ずもうかる」と言える投資は、ありません。 もし本当に必ずもうかる方法を知っている人がいたら、その人は見知らぬあなたに教えるより、自分のお金でやります。 「なぜ、この人はこれを自分でやらずに、私に教えるのか」。 この一問が、いちばん効きます。
🔴 振り込んでしまったら、すぐに動く
時間がたつほど、お金は引き出され、移されていきます。
預金口座に振り込んだ場合
振込先の口座にお金が残っていれば、取り戻せる可能性がある仕組みがあります。
この法律は、預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた者に対する被害回復分配金の支払等のため、……定め、もって当該犯罪行為により被害を受けた者の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的とする。 (犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律 第1条)
金融機関は、犯罪に使われた疑いのある口座の取引を止めることになっています(同法第3条)。だから、振込先の銀行への連絡は一刻を争います。
暗号資産で送った場合
この法律が対象にしているのは、預金口座への振込みです。暗号資産を送ってしまった場合は、この仕組みには乗りません。警察庁の統計では、暗号資産で送った被害が前年の約2.5倍(1,898件)に増えています。
連絡先
図解③ 振り込んでしまったら
すぐに
振込先の銀行(口座を止めてもらう)
同時に
警察(最寄りの警察署/警察相談専用電話 #9110)
相談先
消費者ホットライン 188(最寄りの消費生活センターにつながります)
🔴 その後
「取り戻します」と言ってくる業者は、二度目の詐欺を疑う
最後の項目は、国民生活センターが注意しているものです。
なお、被害回復を謳った二次被害にあう可能性もありますので、この場合も不審に思ったら消費生活センター等にご相談ください。 (国民生活センター 2024年5月29日)
一度被害に遭うと、次の詐欺の標的になりえます。 「弁護士」「調査会社」「取り戻し代行」を名乗って、先に費用を求めてくる相手には、同じ2点(登録・振込先)で確かめてください。
公平に書いておきます
- SNSで投資の情報を得ること自体は、悪いことではありません。 登録を受けた証券会社も、SNSで広告を出しています
- 金融庁も、自らの事例一覧について「該当するもの全てが投資詐欺であることを示すものではありません」と断っています
- ただし、本物の業者との取引は、その業者の公式サイトやアプリで、自分の名義の口座を開いて行うものです。LINEのグループで指示を受けて、個人の口座に振り込むものではありません
- 取り締まりは強まっています。令和7年のSNS型投資詐欺の検挙件数は369件(前年の約2.8倍)、令和8年8月には無登録業の罰則も引き上げられました。それでも被害額は増え続けています
誘われたら、この5つを確かめる
図解④ 確かめる順番
①
業者名と登録番号を聞き、金融庁の一覧で自分で調べる
②
振込先は個人名義か(個人名義なら、その時点で振り込みをやめる)
③
なぜLINEなのか(本物の取引は、業者の公式の窓口で行います)
④
「手数料を払えば引き出せる」と言われていないか(警察庁が示す手口そのものです)
⑤
家族に全部話せるか(「内緒に」と言われているなら、それが答えです)
①と②だけで、ほとんどの話は終わります。 相手の熱意や、グループの雰囲気は、判断の材料にしません。
まとめ
「先生の言うとおりにすれば、必ずもうかります」
- SNSで知り合い、LINEのグループで「先生」に指示される形は、SNS型投資詐欺の典型です
- 🔴 被害は令和7年に9,523件・1,288.0億円。令和8年は8月末までで937.4億円(前年同期比+53.8%)
- 最初の接触はインスタグラムが最多、被害のときの連絡手段は93.5%がLINEです
- 被害者は40〜60代が多く、男性が約6割。お年寄りだけの話ではありません
- 🔴 アプリの残高は、ただの数字です。 少額の出金ができても、それは演出です
- 🔴 見分けるのは2点。①金融庁の一覧に登録があるか ②振込先が個人名義でないか
- 本物の証券会社が、入金先に個人名義の口座を指定することはありません
- 振り込んでしまったら、すぐに振込先の銀行と警察へ。 口座にお金が残っていれば、戻る仕組みがあります
- 「取り戻します」という連絡は、二度目の詐欺を疑ってください
聞くのは、この一問です。
「御社の登録番号を教えてください」
そして、自分に聞く一問です。
「必ずもうかる方法を、なぜこの人は私に教えるのか」
「減らない」と言われたら「元本保証で増えます」は本当?、「今しかない」と急かされたら「今が買い時です」は本当?、投資をどこで始めるかは「NISAをやらないと損ですよ」は本当?にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- 相手の業者名と登録番号を、金融庁の検索で確かめましたか?
- 振込先は、個人名義の口座ではありませんか?
- なぜ証券会社のサイトではなく、LINEでやりとりしているのですか?
- 最初の少額の出金ができたことを、信用の根拠にしていませんか?
- 利益を引き出すのに「手数料」や「税金」を先に払えと言われていませんか?
- 家族や身近な人に、この話を全部話せますか?
参照した情報源
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日)
- 警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」
- 警察庁 SOS47「SNS型投資詐欺」(手口の流れ・実際の事例)
- 金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」(令和8年3月5日更新)
- 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」
- 金融庁「令和8年金融商品取引法等改正(20日後施行)に係る政令の公布について」(無登録業の罰則引上げ・令和8年8月12日施行)
- 国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」(2024年5月29日)
- e-Gov 金融商品取引法 第29条(登録)・第197条第1項(罰則)
- e-Gov 資金決済に関する法律 第63条の2(暗号資産交換業者の登録)
- e-Gov 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律 第1条・第3条