「NISAをやらないと損ですよ」は本当? NISAは商品ではなく「口座」です
営業トーク
「NISAをやらないと損ですよ。みんな始めていますし、早く口座を作ったほうがいいです」
結論
NISAは金融商品ではなく、税金がかからない口座の種類です。金融庁も「NISAを利用するには、銀行や証券会社などにNISA口座を開設する必要があります」と説明しています。同じ商品でも、通常の口座なら利益に約20%かかり、NISA口座なら非課税です。ただし損失は法律上「ないものとみなす」と定められているため、損益通算も繰越控除もできません。「NISAをやる」かどうかではなく、「投資をするなら、どの口座で買うか」という話です。
こう言われることがあります。
「NISAをやらないと損ですよ」
「みんな始めていますし、早く口座を作ったほうがいいです」
この言い方には、ひとつ引っかかるところがあります。
「NISAをやる」とは、何をすることなのでしょうか。
先に結論
この記事の結論
NISAは
商品ではなく「口座」です。何かを買う入れ物であって、それ自体は中身を持ちません
違いは税金
通常の口座なら利益に約20%。NISA口座なら非課税です
弱点もあります
損失は法律上「ないものとみなす」と定められ、他の利益と相殺できません
つまり
「NISAをやるか」ではなく「投資をするなら、どの口座で買うか」という話です
🔴 NISAは「入れ物」です
いちばん多い誤解がここです。NISAという商品はありません。
金融庁の説明を読むと、そのまま書いてあります。
NISAを利用するには、銀行や証券会社などに NISA口座を開設する必要があります。 日本国内に住んでいる18歳以上の方ならどなたでも開設できます。口座は1人につき1口座のみ開設可能です。 (金融庁「NISAを知る」)
(同じページによると、2027年1月からは0歳から17歳も、つみたて投資枠に限ってNISA口座を開設できるようになります。未成年の年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円です)
図解① 口座と中身は別
NISA口座
入れ物。税金がかからないという性質を持っています
中身
投資信託や株式。これは自分で選びます。値上がりも値下がりもします
だから
「NISAを買う」ことはできません。NISA口座を開いて、その中で何かを買います
実際は
口座を開くだけでは、何も起きません。 「NISAを始めた」と言っても、中で何も買っていなければ、ただ口座があるだけです。
「NISAが値上がりする/値下がりする」という言い方も、少しずれています。 値動きするのは、中で買った商品のほうです。
何が変わるのか ── 税金です
では、通常の口座と何が違うのか。税金だけです。
投資で利益が出ると、通常はこうなります。
上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) 20%(所得税15%、住民税5%) (注)平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2.1パーセントを乗じた額を所得税と併せて申告・納付することになります (国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税」)
図解② 100万円の利益が出た場合
同じ商品を、同じ金額だけ、同じ期間持っていた場合の比較です。違うのは口座の種類だけです。
同じ商品を買って、同じだけ値上がりしても、口座が違えば手元に残る額が変わります。
だから「損ですよ」と言われる部分には、根拠があります。投資をするのであれば、非課税の口座を使わない理由は見つけにくいからです。
CHECK
ただし、これは「投資をする場合」の話です。 投資をしない人にとっては、NISA口座があってもなくても何も変わりません。
🔴 いいことばかりではありません
初心者向けの説明では省かれがちな点を書きます。NISAには弱点があります。
法律にこう定められています。
非課税口座内上場株式等の譲渡による収入金額が……取得費及びその譲渡に要した費用の額の合計額……に満たない場合におけるその不足額は、所得税に関する法令の規定の適用については、ないものとみなす (租税特別措置法37条の14第2項)
「不足額」とは、損失のことです。 それが「ないものとみなす」とされています。
図解③ 損が出たときの扱い
通常の口座
A商品で30万円の損、B商品で50万円の利益 → 相殺して20万円分にだけ課税(損益通算)
NISA口座
A商品の30万円の損は「なかったこと」になります。B商品の利益とは相殺できません
つまり
非課税は、利益が出たときにだけ効きます。損が出たときは、通常の口座より不利になることがあります
ここに注意
「NISAだから安全」ではありません。 非課税なのは税金の話であって、値下がりしないという意味ではないからです。
枠には上限があります
もうひとつ、初心者がつまずくところです。
図解④ 枠のしくみ
年間投資枠
つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能で、最大で年間360万円
非課税保有限度額
生涯で最大1,800万円(総枠)
売った場合
総枠の再利用が可能。売った分の枠は翌年以降にまた使えます
数値は金融庁「NISAを知る」より。非課税保有期間は無期限で、制度自体も恒久化されています。
そして重要なのが、口座は1人1口座という点です。金融機関の変更は年単位でできますが、同時に複数は持てません。
CHECK
だから、どこに口座を開くかは最初に考える価値があります。 つみたて投資枠の対象商品は全体で377本(2026年10月23日時点)ありますが、どれを扱っているかは金融機関ごとに違います。
「みんな始めている」は理由になりません
最後に、勧め方の話です。
「みんな始めています」「早く口座を作ったほうがいい」——これは急がせる言い方です。
図解⑤ 順番
急がされる順番
口座を作る → 何を買うか勧められる
本来の順番
投資をするか決める → 何を買うか決める → その商品を扱う金融機関で口座を開く
なぜなら
口座は1人1つ。先に口座を作ると、買える商品がその金融機関の品ぞろえに縛られます
実際は
枠は毎年リセットされますが、来年もあります。 制度は恒久化されているので、今年中に始めないと消える枠ではありません。
まとめ
「NISAをやらないと損ですよ」
- NISAは商品ではなく口座です。金融庁も「NISA口座を開設する必要があります」と説明しています
- 口座を開くだけでは何も起きません。 中で何を買うかは自分で決めます
- 違いは税金です。通常の口座は利益に20%(所得税15%・住民税5%)+復興特別所得税、NISA口座は非課税
- だから投資をするなら、非課税の口座を使わない理由は見つけにくいです
- ただし損失は「ないものとみなす」と法律にあり、損益通算はできません
- 「NISAだから安全」ではありません。 値下がりはします
- 口座は1人1口座。先に口座を作ると、買える商品が縛られます
言われたときに確かめるのは、この一問です。
「NISAは商品ですか、口座ですか?」
口座だと分かれば、次に考えることは「その中で何を買うか」になります。そこが決まっていないうちは、急ぐ必要はありません。
中で何を買うかを考えるときは複利とインデックス投資のきほんと信託報酬の差は30年でいくらか、口座を開く場所の違いは「銀行だから安心して投資できます」は本当?にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- NISAは商品ですか、口座ですか?(口座です)
- その中で何を買うのか、決まっていますか?
- 通常の口座なら、利益に何%かかりますか?
- 損が出た場合、他の利益と相殺できますか?(NISAはできません)
- 口座を開くこと自体に、お金はかかりますか?