「警察です。あなたの口座が犯罪に使われています」は本当? 本物の警察官は、ビデオ通話で逮捕状を見せません
営業トーク
「警察です。あなたの口座が犯罪に使われている疑いがあります。潔白を証明するために、口座の資金を調べさせてください。捜査中なので、このことは誰にも話さないでください」
結論
警察官を名乗り、「口座が犯罪に使われている」「逮捕状が出ている」などと言って、資金の調査などの名目でお金をだまし取る手口を、警察庁は「ニセ警察詐欺」と呼んでいます。令和7年は1万1,014件・被害額1,005.0億円で、特殊詐欺の件数の39.6%、被害額の70.6%を占めました。件数は30代が最多で、若い世代も狙われています。電話はメッセージアプリのビデオ通話に移り、偽の警察手帳や逮捕状を見せられ、「誰にも話すな」と口止めされます。警察庁は、本物の警察官は電話で捜査対象だと伝えない、メッセージアプリで連絡しない、警察手帳や逮捕状の画像を送らない、個人のスマートフォンに突然ビデオ電話をしない、と明言しています。表示された番号が本物の警察署でも、偽装できます。電話を切り、自分で調べた最寄りの警察署か「#9110」に確かめてください。
スマートフォンが鳴ります。表示は「+」から始まる番号か、実在する警察署の番号です。
出ると、自動音声が流れることもあります。「2時間後から、この電話は使えなくなります」。続いて、人が出ます。
「警察です。あなたの口座が犯罪に使われている疑いがあります」
「潔白を証明するために、口座の資金を調べさせてください」
「捜査中なので、このことは誰にも話さないでください」
そのあと、メッセージアプリのビデオ通話に移り、画面越しに警察手帳と、自分の名前が書かれた逮捕状を見せられます。
ここまで来ると、「本物の警察かもしれない」と思わないほうが難しくなります。 この記事では、本物かどうかを確かめる方法を、警察庁の資料で整理します。
先に結論
この記事の結論
この手口は
警察庁が統計を取っている「ニセ警察詐欺」です
被害は
令和7年に1,005億円。特殊詐欺の被害額の7割です
本物の警察官は
電話で捜査対象と伝えない・メッセージアプリで連絡しない・逮捕状の画像を送らない・突然ビデオ電話をしない
だから
電話を切り、自分で調べた警察署か「#9110」に確かめる
🔴 数字で見ると、特殊詐欺のいちばん大きな被害です
警察庁は、令和7年からこの手口の統計を取り始めました。
警察官等をかたり捜査(優先調査)名目で現金等をだまし取る手口(以下「ニセ警察詐欺」という。)による被害が顕著であり、認知件数は11,014件、被害額は1,005.0億円で、総認知件数に占める割合は39.6%。 (警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」・2頁)
特殊詐欺全体の被害額は1,423.1億円です。その7割が、この1つの手口です。
1件あたりの被害も大きくなっています。
| 既遂1件あたりの被害額(令和7年) | 金額 |
|---|---|
| ニセ警察詐欺 | 922.5万円 |
| ニセ警察詐欺を除いた特殊詐欺 | 256.7万円 |
(同・2〜3頁)
令和8年も、1〜8月で6,346件・728.6億円。件数は前年同期より4.1%減りましたが、被害額は27.0%増えています(警察庁 令和8年8月末暫定値)。
狙われるのは、お年寄りだけではありません
ニセ警察詐欺の認知件数は、30代が2,239件と最も多く、次いで20代が1,718件となっており、若い年代に被害が多い。他方で、被害額は、70代が274.6億円と最も多く、次いで60代が256.3億円となっており、60代及び70代の被害額が大きい。 (警察庁 令和7年確定値・5頁)
件数がいちばん多いのは30代、被害額がいちばん大きいのは70代です。 警察庁によると、最初の連絡は40代以下では携帯電話が9割以上、50代以上では固定電話が約6割です(警察庁 SOS47)。
手口は、ほぼ同じ順番で進みます
警察庁は、手口をこう説明しています。
自宅の固定電話や携帯電話あてに、警察官を名乗り、 「あなたの口座が犯罪に使われている」 「あなたの携帯電話が不正に契約された」 などと様々な理由をつけて、「資産を保護する」、「口座を調査する」などといって、現金をだましとったり、振り込ませたりする詐欺の手口が増加しています。 警察官役の犯人は、「あなたは逮捕される」などと不安を煽ったり、偽の警察手帳や逮捕状を見せてくるケースもあります。 電話会社や総務省等を名乗り、「携帯電話の未納料金がある」などといった後に、警察官役に交代するケースや、SNS・ビデオ通話での連絡に移行するケースもあるので、注意が必要です。 (警察庁 SOS47「ニセ警察詐欺に注意!」・2025年11月17日)
図解① ニセ警察詐欺の流れ(警察庁の説明・事例をもとに作成)
①
電話が来る(「+」から始まる番号や、実在の警察署の番号が表示されることも)
②
電話会社などを名乗ったあと、警察官役に交代する
③
「口座が犯罪に使われている」「逮捕状が出ている」と告げる
④
メッセージアプリのビデオ通話に移り、偽の警察手帳・逮捕状を見せる
⑤
「誰にも話すな」と口止めする
⑥
「資金を調べる」「資産を保護する」と言って、振込や現金の受け渡しを求める
警察庁が紹介している実例では、口止めはこうでした。
犯人は「捜査の内容は誰にも話してはいけない」「長期間勾留される可能性がある」などと強く口止めして不安を煽り、金銭をだまし取ろうとした。 (警察庁 SOS47「ニセ警察官とのビデオ通話」・2025年10月24日)
ここに注意
🔴 口止めは、家族や銀行に止められないためです。 家族に話せば、ほぼその場で止まります。だから、最初に「話すな」と言います。 「誰にも話すな」と言われた時点で、誰かに話してください。
表示された番号が本物でも、見分けられません
警察庁は、実在の番号が使われた事例を挙げています。
被害者の携帯電話に愛知県警察本部の代表電話番号(052-951-1611)から電話があり、……「口座の資金を全て確認する必要がある」……「一度お金を全て振り込んでもらい、資金調査を行う必要がある」等と言われ、指示された口座にインターネットバンキングで現金250万円を振り込んだ。 (警察庁 SOS47)
さらに、「+」から始まる国際電話番号でも、末尾が「0110」の番号を使って警察署からの電話を装う例が目立つとされています(同)。
画面に出た番号は、判断の材料になりません。
🔴 本物の警察官が「しないこと」は、4つです
警察庁は、はっきり書いています。
ホンモノの警察官は、 〇 電話で捜査対象となっているなどと伝えることはありません。 〇 メッセージアプリで連絡をすることはありません。 〇 警察手帳や逮捕状の画像を送ることはありません。 〇 個人のスマートフォンに突然ビデオ電話をすることはありません。 それは詐欺です。 (警察庁 SOS47「ニセ警察詐欺に注意!」)
図解② 1つでも当てはまったら、電話を切る
電話で
「あなたは捜査対象です」と言われた
連絡手段が
メッセージアプリに移った
画面に
警察手帳・逮捕状が映った/画像が届いた
突然
ビデオ通話がかかってきた
そして
電話を切り、自分で調べた番号にかけ直す
警察庁「ホンモノの警察官からのお願い」をもとに当サイトが作成
警察庁は、疑わしいときの確かめ方も書いています。
電話やビデオ通話を切って、 ・対面で最寄りの警察署へ御相談ください ・警察相談専用電話(#9110)に御相談ください 相手方から教示された番号には、決して折り返さないでください。 (同)
相手が言う「確認はこちらへ」の番号は、相手につながります。 番号は、自分で調べます。
🔴 口座の資金を「調べる」ために、お金を動かす捜査はありません
手口の中心は、「資金を調べる」「資産を保護する」という名目で、お金を動かさせることです。
警察庁は、警察庁を名乗ったメールについても、こう書いています。
警察庁は、このようにメールや電話で、金銭を要求することは一切ありません。 (警察庁 SOS47)
「保釈金」「捜査終了後に返金」「資金調査」。名目は変わっても、振り込ませる・現金を渡させるところは同じです。
警察庁の統計には、金の延べ棒(金地金)を買わせてだまし取る手口も載っています。令和7年は特殊詐欺全体で173件・60.2億円、そのうちニセ警察詐欺が163件・58.2億円でした(警察庁 令和7年確定値・7頁)。
電話を受けないための準備
警察庁は、犯人と話さずに済む仕組みを勧めています。
特殊詐欺対策では、何よりも「犯人と話をしない」ことが大切です。 (警察庁 SOS47「オレオレ詐欺」)
| 電話 | できること |
|---|---|
| 固定電話 | 「国際電話不取扱受付センター」に申し込むと、国際電話番号からの発着信を無償で休止できる |
| 携帯電話 | 国際電話の着信を規制できるアプリで遮断できる(警察庁が推奨アプリの制度をつくっている) |
| どちらも | 知らない番号には出ない・番号表示や非通知拒否のサービスを使う |
(警察庁 令和7年確定値・24頁、警察庁 SOS47)
令和7年に特殊詐欺に使われた電話番号は12万3,138件で、そのうち国際番号が9万2,996件でした(同・25頁)。
振り込んでしまったら
- すぐに振込先の銀行と、警察(最寄りの警察署・#9110)へ。 口座にお金が残っていれば、取り戻せる可能性がある仕組みがあります。詳しくは「先生の言うとおりにすれば、必ずもうかります」は本当?の最後にまとめています
- 🔴 そのあと「被害金を取り戻せます」と連絡してくる相手には注意してください。「詐欺の被害金、取り戻せます」は本当?にまとめています
公平に書いておきます
- だまされた人が不注意だった、という話ではありません。 警察庁自身が、「犯人側と接触してしまえば、誰もがだまされるおそれがある」と書いています(警察庁 令和7年確定値・24頁)。だから、見分ける力より先に、電話を受けない仕組みが勧められています
- 国際電話の利用休止は、普段、海外と固定電話で話すことがない人に向けた対策です(警察庁 SOS47)。海外の家族と固定電話で話す人は、その不便と比べて決めてください
- 取り締まりも進んでいます。令和8年1〜8月のニセ警察詐欺の検挙は673件・307人です(警察庁 令和8年8月末暫定値)。それでも、被害額は前年同期を上回っています
こんな時は要注意
- 「あなたは捜査対象です」「逮捕状が出ています」と電話で言われた
- メッセージアプリへの登録や、ビデオ通話を求められた
- 「誰にも話すな」と言われた
- 「資金を調べる」「資産を保護する」ために、振込・現金の受け渡し・金の購入を求められた
- ホテルに泊まるよう指示されたり、家族との連絡を絶つよう言われたりした(警察庁 SOS47「ニセの警察ウェブサイトに誘導する手口」の事例)
まとめ
「警察です。あなたの口座が犯罪に使われています」
- この手口は、警察庁が統計を取っているニセ警察詐欺です
- 🔴 令和7年は1万1,014件・1,005.0億円。特殊詐欺の被害額の70.6%です
- 件数は30代が最多。被害額は70代が最大。若い人も狙われています
- 🔴 本物の警察官は、電話で捜査対象と伝えない・メッセージアプリで連絡しない・警察手帳や逮捕状の画像を送らない・突然ビデオ電話をしない
- 表示された番号が本物の警察署でも、偽装できます
- 「誰にも話すな」と言われたら、誰かに話してください
- 確かめるときは、電話を切って、自分で調べた最寄りの警察署か「#9110」へ
言うのは、この一言です。
「いったん切って、こちらから警察署にかけ直します」
役所や年金事務所を名乗る電話は「医療費の還付金があります。ATMで手続きできます」は本当?、パソコンに出る警告は「パソコンがウイルスに感染しています」は本当?にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- 電話で「あなたは捜査対象です」と言われましたか?(本物の警察官は電話で伝えません)
- メッセージアプリへの登録や、ビデオ通話を求められましたか?
- 警察手帳や逮捕状の画像を見せられましたか?
- 「誰にも話すな」と口止めされていますか?
- 口座の資金を「調べる」「保護する」ために、振込や現金の受け渡しを求められましたか?
- 相手から教えられた番号ではなく、自分で調べた警察署の番号にかけ直しましたか?
- 固定電話の国際電話の利用休止は済んでいますか?