「身元保証がないと入院・入居できません」は本当? 国は「それだけを理由に断るのは不適当」としています
営業トーク
「おひとりなら、身元保証人がいないと入院も施設入居も断られますよ。うちのサービスに入っておけば安心です。預託金をお預かりして、いざというときに使います」
結論
厚生労働省は平成30年4月27日の通知で「入院による加療が必要であるにもかかわらず、入院に際し、身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19条第1項に抵触する」としています。介護保険施設についても同じ整理です。国のガイドラインも「身元保証人等がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことは不適当」と明記しています。だから「ないと入れません」は、そのままでは正しくありません。契約を検討するなら、預託金の管理方法と解約時の返金条件を見てください。住まいの相談は、2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法にもとづく居住支援の仕組みがあります。
ひとり暮らしの高齢者に、こう言われます。
営業トーク
おひとりなら、身元保証人がいないと入院も施設入居も断られますよ。うちのサービスに入っておけば安心です。預託金をお預かりして、いざというときに使います
不安になる話です。実際、身元保証人を求められる場面はあります。
ただ、「ないと入れません」という言い切りについては、国がはっきり書いた文書があります。
この記事の結論
厚生労働省は
身元保証人がいないことだけを理由に入院を断るのは医師法19条1項に抵触するとしています
介護施設も
国のガイドラインが「拒むことは不適当」と明記しています
だから
「ないと入れません」は、そのままでは正しくありません
まずやること
契約の前に地域包括支援センターへ。無料です
🔴 厚生労働省が、通知を出しています
平成30年4月27日、厚生労働省医政局医事課長から各都道府県あてに出された通知です。表題がそのままこの記事のテーマです。
身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて
本文を引用します。
医師法……第19条第1項において、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と定めている。ここにいう「正当な事由」とは、医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られるのであって、入院による加療が必要であるにもかかわらず、入院に際し、身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19条第1項に抵触する。
しかもこの通知は、都道府県に対して指導まで求めています。
貴管下医療機関において、患者に身元保証人等がいないことを理由に入院を拒否する事例に関する情報に接した際には、当該医療機関に対し適切な指導をお願いする
「拒否する事例が見受けられる」と書かれているとおり、断られること自体は実際にあります。 ただし、それは国が問題視して是正を求めている状態です。
介護施設も同じです
国が令和6年6月にまとめた「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」に、両方まとめて書かれています。
医療機関・介護保険施設等は、正当な理由なくサービス提供を拒否することはできず、入院・入所の際に、身元保証人等がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことは不適当であるとされている。
(高齢者等終身サポート事業者ガイドライン・内閣官房、内閣府、金融庁、消費者庁、総務省)
根拠として、上の医政局通知と、平成30年8月30日の老健局通知が挙げられています。
実際は
「身元保証がないと入れない」から「サービスに入る」という順番が、ここで切れます。 断られたなら、まずなぜ断られたのかを確かめてください。 身元保証だけが理由なら、それは国が是正を求めている扱いです。
国が、このサービス自体を調べています
一方で、このサービスに問題がないわけではありません。国が実地調査をしています。
総務省行政評価局は令和5年8月、「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」の結果報告書を公表しました。事業者への実地調査を含む全国調査です。
そのきっかけは、さらに前にさかのぼります。厚生労働省の通知にこう書かれています。
指導監督に当たる行政機関が必ずしも明らかではなく、また、利用者からの苦情についてもほとんど把握されていないことに鑑み、消費者委員会は、平成29年1月31日に、当該事業に係る消費者被害を防止する観点から……建議を取りまとめた。
どの役所が監督するのかが、はっきりしていなかった分野です。だから令和6年に、内閣官房・内閣府・金融庁・消費者庁・総務省が共同でガイドラインを作りました。
🔴 預託金は、どこにあるのか
このサービス固有の論点が、預託金です。将来の費用にあてるため、契約時にまとまったお金を事業者に預けます。
ガイドラインは、事業者に対してこう書いています。
高齢者等終身サポート事業者は利用者からの前払金(預託金)について、(1)高齢者等終身サポート事業者自身の運営資金等とは明確に区分して管理すること(2)利用者に定期的に管理状況を報告することが望ましい
特に、預託金から差し引く方法で費用を支払う場合には、当該利用者にとって費用の詳細が不透明になることが考えられるため、差し引かれた費用の金額と内容について明らかにすることが望ましい
解約についても定めています。
解約等に関する取扱いについて、重要事項説明の際に書面を交付して説明することが特に望ましい。
事業者は、消費者から解約料について説明を求められた場合、解約料の算定根拠の概要を説明する努力義務を負う(同条第2項)。ここでいう算定根拠の概要とは……違約金等を設定した合理的な理由を意味するものと考えられる。
図解① 契約前に確かめる3つ
①預託金の置き場所
事業者の運転資金と分けて管理されていますか
②差し引かれ方
預託金から何が、いくら引かれますか。内訳は示されますか
③やめるとき
いくら返りますか。その計算根拠を説明できますか
⚠️ ガイドラインには、相談として「契約書が交付されていない」という例が挙げられています。契約書がその場で出てこないなら、それ自体が判断材料です。
先に行くところがあります
有料のサービスを検討する前に、公的な窓口があります。
厚生労働省は平成30年8月30日の通知で、市町村や地域包括支援センターに対して、このサービスに関する相談への対応を求めています。つまり、相談先として国が想定している場所です。
図解② 相談する順番
①地域包括支援センター
お住まいの市区町村にあります。相談は無料です
②断られた理由を確かめる
本当に身元保証だけが理由なのか。他の条件と混ざっていませんか
③公的な制度を見る
成年後見、日常生活自立支援事業、居住支援の仕組みがあります
④それでも足りない分
そこで初めて、民間のサービスを比べます
🔴 住まいの問題は、身元保証だけではありません
賃貸で断られるとき、理由は身元保証人の有無だけではありません。収入や資産が審査されているのは、年齢に関係なく同じです。
ここは制度が動いています。改正住宅セーフティネット法が令和7年10月1日に施行されました。
| 改正の内容 | |
|---|---|
| 終身建物賃貸借の利用促進 | 賃借人の死亡時に終了し、相続人に相続されない賃貸借 |
| 居住サポート住宅の認定制度 | 福祉事務所を設置する自治体が認定 |
| 家賃債務保証業者の認定制度 | 国が認定する仕組みを創設 |
| 居住支援法人の業務に残置物処理を追加 | 入居者からの委託にもとづく |
| 市区町村の居住支援協議会設置 | 努力義務化 |
(国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」)
大家が高齢者に貸すのをためらう理由(死後の手続き、残置物、家賃の回収)を、制度側で引き受ける方向に動いています。民間の身元保証サービスだけが選択肢ではありません。
⚠️ ただし、制度が整っても、家賃を払えるかどうかの審査がなくなるわけではありません。 身元保証を付ければ収入や資産の条件が消える、という話でもありません。何が足りなくて断られているのかを、先に切り分けてください。
勧められたら
① まず地域包括支援センターに相談しましたか
無料です。国が相談先として想定している窓口です。
② 断られた理由は、本当に身元保証だけですか
医療機関・介護保険施設なら、それだけを理由にするのは不適当とされています。
③ 預託金はいくらで、どこに置かれますか
事業者の運営資金と区分して管理されているか、管理状況を報告してもらえるかを聞いてください。
④ やめたら、いくら返りますか
計算根拠を説明できるか。ガイドラインが事業者に求めていることです。
⑤ 契約書は出てきますか
その場で交付されないなら、契約しないでください。
消費生活の相談は 188(消費者ホットライン)です。
まとめ
- 🔴 厚生労働省「身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19条第1項に抵触する」(平成30年4月27日通知)
- 同通知は、都道府県に医療機関への適切な指導まで求めています
- 🔴 国のガイドラインも「身元保証人等がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことは不適当」と明記(介護保険施設等を含む)
- 「ないと入れません」は、そのままでは正しくありません
- 一方、このサービス自体は総務省行政評価局が実地調査(令和5年8月)。監督する行政機関が明らかでなかった分野です
- 🔴 預託金は「運営資金等とは明確に区分して管理すること」「定期的に管理状況を報告すること」が望ましい(ガイドライン)
- 解約料は、求められたら算定根拠の概要を説明する努力義務がある(消費者契約法9条2項・ガイドライン)とされています
- 契約書が交付されないという相談が、ガイドラインに例示されています
- 先に行くのは地域包括支援センター。国が相談先として想定しています
- 住まいは改正住宅セーフティネット法(令和7年10月1日施行)で制度が動いています
契約を急がされたときの確認手順は営業されたら確認する10項目に、訪問販売や電話勧誘で契約した場合の解除はクーリング・オフの使い方にまとめています。葬儀にかかる費用の考え方は「お葬式代は用意しておかないと」と保険を勧められたらで扱っています。
📋 契約前にここを確認
- まず地域包括支援センターに相談しましたか?(無料です)
- 預託金はいくらですか? 事業者の運転資金と分けて管理されていますか?
- 解約したら、いくら返ってきますか? 計算根拠を説明できますか?
- 契約書は交付されましたか? サービスの範囲は具体的に書かれていますか?
- 死後事務はどこまで含まれますか? 費用は別ですか?
- 入院・入所を断られたのは、本当に身元保証だけが理由ですか?
参照した情報源
- 厚生労働省「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(平成30年4月27日・医政医発0427第2号)
- 厚生労働省「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」(平成30年8月30日・老高発0830第1号)
- 内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月・預託金の管理、入院入所の拒否)
- 総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書」(令和5年8月)
- 消費者庁「いわゆる『高齢者等終身サポート事業』の利用に関する注意点」
- 国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」(令和7年10月1日施行)