「お葬式代は用意しておかないと」と保険を勧められたら|死亡は確率100%です
営業トーク
「お葬式代くらいは用意しておかないと、残された家族が困りますよ」
結論
保険は「起きるか分からないこと」に備える仕組みです。死亡は確率100%なので、葬儀代のための保険は多くの人にとって払った額のほうが多くなります。まず葬儀にいくらかかるかを自分で調べて、公的給付を差し引いた分を貯蓄で用意するのが素直です。
「お葬式代くらいは用意しておかないと」
「残された家族が困りますよ」
高齢の方が勧められる保険で、いちばん多い切り口かもしれません。家族に迷惑をかけたくない、という気持ちは自然なものです。
でも、ここで一つ考えてほしいことがあります。
CHECK
人はみな、いつか必ず亡くなります。 必ず起きることに、保険をかける意味はあるでしょうか。
先に結論
この記事の結論
保険が成り立つ理由
大勢で出し合って、起きてしまった一部の人に渡すから。多くの人は受け取りません
でも死亡は
確率100%。全員が受け取ります。だから保険料は、その前提で設定されます
結果
長生きするほど、払った総額が保険金を上回っていきます
だから
葬儀にいくらかかるかを自分で調べて、貯蓄で用意するほうが素直です
保険は「起きない人がいる」から成り立ちます
保険の仕組みを、もう一度確認します。
大勢の加入者があらかじめ公平に保険料を負担しあい、「もしも」のことが現在に起きたときに給付を受ける仕組み (生命保険文化センター「生命保険とは」)
大勢で少しずつ出し合って、起きてしまった一部の人に渡す。だから少ない保険料で大きな保障が成り立ちます。
言い換えると、多くの人は受け取らないことが前提です。
では、死亡はどうでしょうか。
実際は
全員が、いつか受け取ります。 死亡率は100%です。 「起きない人がいるから成り立つ」という保険の前提が、ここでは働きません。
保険会社もそれは分かっています。だから「必ず払う」ことを織り込んで保険料を決めます。 そのうえで運営経費も上乗せされます。
結果どうなるか。加入者全体で見れば、払い込む保険料の総額は、受け取る保険金の総額を上回ります。 そうでなければ事業が続きません。
4象限に当てはめると
このブログで使っている4象限で見てみます。
図解① 葬儀費用はどの領域か
確率は
100%。起きるかどうかではなく、いつかの問題です
損失は
数十万円〜。貯蓄で用意できる範囲です
つまり
「高確率・小損失」=貯蓄で備える領域。保険の出番ではありません
保険が力を発揮するのは「めったに起きないが、起きたら貯金ではどうにもならない」損失です。葬儀費用は、確率でも金額でもその条件から外れます。
保険が必要なのは「一家の稼ぎ手が亡くなって、残された家族が数千万円足りなくなる」ような場合です。葬儀費用とは金額の桁が違います。
高齢で入る保険は、条件がさらに厳しくなります
「持病があっても入れます」「告知なしで入れます」というタイプの終身保険があります。高齢の方に勧められやすい商品です。
生命保険文化センターの説明を見てください。
通常の終身保険より保険料は割高です
契約後2年間など一定期間内に病気により死亡した場合は、死亡保険金ではなく既に払い込んだ保険料相当額が受け取れます (生命保険文化センター・無選択型終身保険について)
引受基準緩和型についても、「契約後1年以内の病気による死亡では、死亡保険金額が50%に削減されるのが一般的」とされています(同じ表に「削減されないものもある」とも書かれています)。
ここに注意
入りやすい商品ほど、保険料は割高です。 そして契約から数年以内に病気で亡くなった場合、払った分が戻るだけというケースがあります。
つまり、早く亡くなれば「払った分が戻るだけ」、長生きすれば「払った総額が保険金を超える」。どちらに転んでも、加入者側に有利になりにくい構造です。
公的な給付もあります
葬儀の費用には、公的な給付があります。
- 健康保険(会社員など):埋葬を行った家族に埋葬料5万円。家族が亡くなった場合も家族埋葬料5万円(全国健康保険協会)
- 国民健康保険:葬祭費(金額は自治体によって異なります。お住まいの市区町村で確認してください)
金額としては大きくありませんが、必ず確認してください。 申請しないと受け取れません。
まず、いくらかかるのかを調べる
順番として、保険を考える前にやることがあります。自分の場合、葬儀にいくらかかるのか。
ここが、実は簡単ではありません。国民生活センターは2026年6月に注意喚起を出しています。
依然として多い葬儀サービスの料金トラブル ー「家族葬だから安い」と思っていませんか?ー (国民生活センター・令和8年6月3日)
相談件数は年間900件前後で推移しています。紹介されている事例は、こういうものです。
| 広告・チラシ | 実際の契約額 |
|---|---|
| 家族葬 50万円のプラン | 約120万円 |
| 一日葬は約30万円 | 約80万円 |
| 家族葬50万円 | 総額200万円超 |
同センターは、報告書でこう書いています。
言葉のイメージにとらわれることなく、参列者の人数や葬儀の実施日数、料金等について具体的な内容を確認しましょう。葬儀サービスは、葬儀社ごとに提供するサービス内容や費用等に一定の幅が見られます (国民生活センター・令和8年6月3日・報告書本文)
つまり「一式いくら」では決まらないということです。
CHECK
だからこそ、元気なうちに、複数の葬儀社から見積もりを取っておく。 これは保険に入るより先にやるべきことです。
同センターのアドバイスも、「事前に複数社から見積もりを取る」「見積書をよく見て、不明な点は確認する」「打ち合わせは複数人で受ける」です。
やる順番はこうです
図解② 「お葬式代」の備え方
STEP 1
どんな葬儀にしたいかを決める(一般葬・家族葬・一日葬・直葬)
STEP 2
複数の葬儀社から見積もりを取る。変動費の項目も確認する
STEP 3
公的給付を差し引く(埋葬料5万円・国保の葬祭費など)
STEP 4
残った金額を貯蓄で用意しておく。家族に「どこにあるか」を伝えておく
保険に入るより、この4ステップのほうが確実です。とくにSTEP 4の「どこにあるかを伝える」は、実務上とても大事です。
貯蓄なら、葬儀以外の用途にも使えます。 医療費が必要になるかもしれませんし、施設に入るかもしれません。保険金は葬儀にしか使えないわけではありませんが、受け取れるのは亡くなったあとです。生きている間には使えません。
家族に迷惑をかけたくない、という気持ちについて
最後に、いちばん大事なところを書きます。
「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちは、とても自然なものです。その気持ちを否定するつもりはまったくありません。
ただ、その気持ちに応える方法として、
- 毎月保険料を払い続ける
- 必要な額を貯めて、家族に伝えておく
このどちらが確実か、という話です。
実際は
保険料を払い続けるより、その分を貯めておくほうが、金額としては多く残ります。 必ず起きることに保険をかけると、そうなります。
そして「どこにいくらあるか」を家族に伝えておけば、残された人が困る場面はかなり減ります。 保険金の請求手続きより、こちらのほうが早く使えます。
まとめ
「お葬式代くらいは用意しておかないと」
用意しておくことは正しい。 手段の話が抜けているだけです。
- 保険は「起きない人がいる」から成り立つ仕組み。死亡は確率100%
- だから多くの人は、払った総額のほうが多くなります
- 高齢で入る商品は保険料が割高で、数年以内の病死は払込額が戻るだけのことも
- 葬儀費用は自分で見積もりを取って調べる(「家族葬だから安い」とは限りません)
- 公的給付(埋葬料5万円など)を引いた残りを、貯蓄で用意する
葬儀費用の話をされたら、保険の収支そのものを聞いてください。
「保険料は全部でいくら払うことになりますか? 保険金と、どちらが多いですか?」
📋 契約前にここを確認
- 保険料は総額でいくら払うことになりますか?(月額×12×加入年数)
- 死亡保険金はいくらですか? 総額と比べてどちらが多いですか?
- 契約から一定期間内に病気で亡くなった場合、いくら支払われますか?
- 葬儀にいくらかかるか、複数の葬儀社から見積もりを取りましたか?
- 埋葬料・葬祭費などの公的給付を確認しましたか?