🛡️ 保険

「個人年金は税金の控除があるからお得」は本当?節税額を計算してみた

🗣️営業トーク

「個人年金なら税金の控除が使えますよ。節税しながら老後資金が準備できます」

結論

個人年金保険料控除で減る税金は、年8万円払って約6,900円(所得税率10%の場合)です。そのために60歳まで資金を拘束されます。そして節税をアピールされるということは、商品そのものの魅力では売れないということでもあります。中身は貯蓄型保険です。

「個人年金なら、税金の控除が使えますよ」

「節税しながら老後資金が準備できます」

節税と聞くと、得な気がします。

でも、いくら得なのかを聞いたことはあるでしょうか。

先に結論

この記事の結論

節税額は

年8万円払って、減る税金は年およそ6,900円(所得税率10%の場合)

▼

その代わり

60歳まで引き出せません。途中でやめれば元本割れします

▼

そして

節税をアピールされるということは、商品そのものでは売りにくいということでもあります

「控除」は、税金がその額だけ戻ることではありません

まず、いちばん誤解されやすいところから。

個人年金保険料控除で「4万円の控除」と言われたとき、4万円が戻ってくるわけではありません。

🔍CHECK

控除とは、税金の計算のもとになる金額(課税所得)から差し引くことです。 「税金が4万円減る」ではなく、「課税対象が4万円減る」という意味です。

実際に減る税金は、そこに税率をかけた分だけになります。

いくら減るのか、計算します

国税庁の規定はこうです。

  • 所得税:新契約で年間の支払保険料が8万円を超える場合、控除額は一律4万円(国税庁 No.1140)
  • 住民税:控除額の上限は2万8,000円

ここに税率をかけます。住民税は原則10%です。

所得税率 減る税金(年間)
5% 約4,800円
10% 約6,900円
20% 約11,000円
23% 約12,200円

(所得税+復興特別所得税+住民税の合計。控除は上限まで使った場合)

多くの会社員が当てはまる所得税率10%なら、

6,900円(年間の節税額)

💰実際は

年8万円払って、戻るのは約6,900円。 払込額の8.6%です。 そしてこの額は、いくら多く払っても増えません。控除には上限があるからです。

年10万円払っても、年20万円払っても、控除額は4万円のまま。節税効果は頭打ちです。

60歳まで引き出せません

この控除を使うには、契約が要件を満たす必要があります。国税庁の規定です。

保険料等は、年金の支払を受けるまでに10年以上の期間にわたって、定期に支払う契約であること

年金の支払は、年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払うとされている10年以上の定期または終身の年金であること

(国税庁 No.1141)

つまり、

  • 10年以上払い続ける
  • 受け取れるのは60歳以降
  • 受け取りにも10年以上かかる

30歳で契約すれば、30年間資金が拘束されます。途中でやめれば、貯蓄型保険と同じく元本割れします。

年6,900円のために、30年間の拘束を受け入れる。 これが取引の中身です。

節税をアピールされる時点で、答えが出ています

ここが、この記事でいちばん言いたいところです。

考えてみてください。本当に増える商品なら、増えることをアピールするはずです。

「この商品は年◯%で増えます」「他と比べてこれだけ有利です」——そう言えるなら、そう言います。

💰実際は

商品の中身ではなく、税制の話で売られている。 それは、商品そのものでは勝負しにくいということでもあります。

節税は、どの商品でも同じように効きます。個人年金保険料控除は、この商品が優れているから付いているのではなく、制度としてそこにあるだけです。

だから聞くべきはこれです。

🔍CHECK

「節税を抜きにしたら、この商品はいくら増えるんですか?」

中身は貯蓄型保険です

個人年金保険は、名前は違っても貯蓄型保険の一種です。

  • 払った保険料から、保険会社の事業費が差し引かれる(生命保険文化センター)
  • 途中でやめれば元本割れする
  • 増え方は契約時の条件で決まる

学資保険の記事でも触れましたが、貯蓄型保険は名前を変えて売られます。学資保険、養老保険、個人年金保険、低解約返戻金型終身保険。呼び方が違うだけで、保障と積立がセットになっているという構造は同じです。

名前ではなく、構造で見てください。

まとめ

「個人年金は税金の控除があるからお得」

控除は事実です。 ただし金額は、年8万円払って約6,900円(所得税率10%の場合)。しかも上限があるので、たくさん払っても増えません。

その代わりに、60歳まで資金が拘束されます。

そして何より、節税をアピールされているということは、商品そのものの魅力では説明されていないということです。

節税の話が出たら、節税を外した状態で見せてもらってください。

「節税を抜きにしたら、これはいくら増えるんですか?」

📋 契約前にここを確認

  • 控除で実際に減る税金は、年間いくらですか?
  • そのために毎年いくら払いますか?
  • 何歳まで引き出せませんか?
  • 途中で解約したら、いくら戻りますか?
  • 節税以外に、この商品を選ぶ理由は何ですか?

参照した情報源

  1. 国税庁「No.1140 生命保険料控除」(新契約の控除額・年8万円超で一律4万円)
  2. 国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」(個人年金保険料控除の要件)
  3. 生命保険文化センター「保険料の仕組み」(予定事業費率)

あわせて読みたい

🛡️ 保険2026-11-01

貯蓄型保険、解約したほうがいい? 判断はタイミングで変わります

解約返戻金は一直線には増えません。払込満了の前後で大きく上がることがあるため、あと1〜2年なら待つ価値があります。解約する前に確認すべきことと、解約以外の選択肢(払済保険・減額・延長保険)もまとめました。

🛡️ 保険2026-11-01

「お葬式代は用意しておかないと」と保険を勧められたら|死亡は確率100%です

死亡は必ず起きます。必ず起きることに保険をかけると、多くの人は払った額のほうが多くなります。高齢者向けの終身保険は保険料が割高で、2年以内の病死は保険金ではなく払込額が戻るだけのことも。葬儀費用は調べて貯蓄で用意するのが素直です。

🛡️ 保険2026-10-20

「持病があっても入れます」は本当? 入れます。ただし、告知が消えるわけではありません

引受基準緩和型は告知項目が3〜5項目に絞られた保険です。入りやすいのは本当ですが、告知義務そのものはなくなりません。生命保険協会のガイドラインは「健康体であれば保険料が割安な商品がある」ことを、お客さまに認識してもらうべき事項として挙げています。

🛡️ 保険2026-10-09

「保険はお守りみたいなものですから」は本当? お守りと保険は働く順番が逆です

お守りは災いが起きる前に働くもの、保険は起きた後にお金が出るもの。時間軸が逆です。「お守りみたいなもん」は金額の話を止める言葉でもあります。いくらのお守りなのかを確認してください。

← 記事一覧に戻る