「保険はお守りみたいなものですから」は本当? お守りと保険は働く順番が逆です
営業トーク
「まあ、保険はお守りみたいなものですから。持っているだけで安心ですよ」
結論
お守りは災いが起きる前に働くもの、保険は起きた後にお金が出るものです。働く順番が逆で、たとえとして成り立っていません。そして「お守りみたいなもん」は、金額と条件の話をそこで止めてしまう言葉でもあります。いくらのお守りなのかを確認してください。
数字の話をしていたのに、最後にこう言われることがあります。
「まあ、保険はお守りみたいなものですから」
「持っているだけで安心ですよ」
そう言われると、なんとなく納得してしまいます。
でも、この言葉が出てきたら注意してください。
CHECK
「お守りみたいなもん」は、金額と条件の話をそこで止める言葉です。
先に結論
この記事の結論
お守りは
災いが起きる前に働くもの。身代わりになったり、厄を引き受けたりする考え方です
保険は
災いが起きた後にお金が出るもの。起きなければ何も起きません
つまり
働く順番が逆です。たとえとして成り立っていません
お守りは「起きる前」に働くものです
お守りとは何か。ここを確認しておきます。
分かりやすいのがひな人形です。国立国会図書館の解説によると、雛祭りの起源はこうです。
日本では中国の節句行事の習慣と、日本古来の禊祓(みそぎはらい)の風習や人形(ひとがた)を流す風習が入り混じって独自の節句が生まれました (国立国会図書館「雛市と雛まつり」)
同館の別の解説では、こう説明されています。
雛人形は、上巳節に災難や厄を人の身代わり人形に托して川に流す行事と、宮中に伝わる人形遊びが結びついたことに始まるといわれています。 (国立国会図書館「あれもこれも雛人形」)
災いを人形に移して、身代わりに流す。 これが、ひな人形の始まりといわれています。
実際は
ポイントは、災いが起きる前に働くという点です。 厄を移す、身代わりになる、避けさせる。そういう考え方です。
「人形が壊れたのは、その子に降りかかるはずだった災いを代わりに受けてくれたから」——こういう言い伝えを聞いたことがある方もいると思います。これが「お守り」の発想です。
保険は「起きた後」に働くものです
では保険はどうでしょうか。
大勢の加入者があらかじめ公平に保険料を負担しあい、「もしも」のことが現在に起きたときに給付を受ける仕組み (生命保険文化センター)
「起きたときに給付を受ける」。ここがすべてです。
- 事故を防いでくれるわけではありません
- 病気にならなくしてくれるわけでもありません
- 起きて、条件を満たして、請求して、はじめてお金が出ます
図解① 時間軸が逆です
お守り
災いが起きる前に働く(厄を移す・身代わりになる・避けさせる)
保険
災いが起きた後に、条件を満たせばお金が出る
どちらが良い悪いの比較ではなく、働くタイミングがまったく違うという話です。だから「保険はお守りみたいなもの」というたとえは、そもそも成り立っていません。
保険はお金で損失を埋める仕組みであって、災いそのものには何もしません。 そこは正直に理解しておくところです。
補足
本来のお守りは、神社やお寺で受けるものです。信仰にもとづくもので、金額と条件で判断する商品とは性格が違います。それを金融商品のたとえに使うのは、少し無理があります。
この言葉が出たら、話が止まっています
ここからが実用的な話です。
「お守りみたいなもん」という言葉が出るのは、たいてい具体的な話をしている最中です。
- 保険料はいくらか
- どんなときに出るのか
- 出ないのはどんな場合か
- 他と比べてどうか
こうした話をしているときに、この一言が入ると、そこで議論が終わります。
ここに注意
「お守り」と言われた瞬間、金額と条件の話が「野暮なこと」になってしまう。 これがこの言葉のいちばんの働きです。
悪意があるとは限りません。説明が難しいときに便利な言葉だから使われるのだと思います。ただ、こちらとしては、そこで止まってはいけない場面です。
「いくらのお守りですか?」と聞いてみる
対処法はシンプルです。たとえを受け入れたうえで、金額に戻す。
CHECK
「なるほど、お守りですね。それはいくらのお守りですか?」
神社のお守りは、だいたい数百円から千円くらいです。年に一度買い替えるとしても、年間で千円台。
一方、月5,000円の保険を30年払えば、
180万円のお守りです。 そう言い換えると、「じゃあ中身をちゃんと見よう」という気持ちに戻れます。
戻ったら、確認するのは3つです。
| 聞くこと | なぜ |
|---|---|
| 何が起きたらお金が出るか | 対象を確かめる |
| 出ないのはどんな場合か | ここを説明しない商品は要注意 |
| 総額でいくら払うか | 「安心」の値段が分かる |
「安心」は商品名ではありません
もう一歩踏み込みます。
「安心のために入る」という言い方も、よく使われます。これも同じ構造です。安心は感情であって、契約内容ではありません。
契約書に書いてあるのは、
- いくら払うか
- どんなときに、いくら出るか
- どんなときに出ないか
これだけです。安心という項目はありません。
実際は
安心したいなら、中身を理解することがいちばんの近道です。 「よく分からないけど入っている」状態は、安心とは呼びにくいものです。
何に備えているのか、いくら出るのか、いくら払うのか。これが分かっていれば、必要なら入ればいいし、不要なら入らなくていい。 どちらでも落ち着いていられます。
まとめ
「保険はお守りみたいなものですから」
たとえとして成り立っていません。
- お守りは、災いが起きる前に働くという考え方
- 保険は、災いが起きた後にお金が出る仕組み
- 順番が逆です
実務的には、この言葉は金額と条件の話を止める働きをします。悪意がなくても、結果としてそうなります。
言われたら、こう返してみてください。
「それはいくらのお守りですか?」
総額を出してもらえば、話は数字に戻ります。あとは自分で判断できます。
そもそもどのリスクを保険で備えるべきかは、「掛け捨てはお金を捨てている」は本当?で4象限にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- その保険は、何が起きたときにお金が出ますか?
- 出ないのはどんな場合ですか?
- 保険料は総額でいくらになりますか?
- その金額に見合う「安心」ですか?
- 同じお金を貯蓄に回した場合と比べましたか?