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iDeCoとNISA、どちらを先に使う? 違いは「降りられるかどうか」です

🗣️営業トーク

「iDeCoは掛金が全額所得控除になります。節税になるので、やらないと損ですよ」

結論

iDeCoは掛金が全額所得控除になる一方、受け取るときは課税対象で、退職所得控除や公的年金等控除で減らす仕組みです。つまり非課税ではなく、課税の繰り延べと控除の組み合わせです。しかも2026年1月から、退職金と受給時期をずらす場合の調整期間が前年以前4年内から9年内に延びました。原則60歳まで引き出せず、受給開始年齢は加入期間で決まります。NISAは受け取るとき非課税で手続きも不要、いつでも売れて枠も翌年戻ります。降りられるかどうかが、いちばん大きな違いです。

窓口でも、ネットでも、よく言われます。

「iDeCoは掛金が全額所得控除になります」

「節税になるので、やらないと損ですよ」

前半は本当です。後半に、書かれていないことがあります。

先に結論

この記事の結論

iDeCoの入口は強い

掛金が全額所得控除。ここは制度としてはっきり有利です

▼

ただし出口は課税対象

非課税ではありません。控除で減らす仕組みなので、受け取り方を間違えると税金が出ます

▼

しかも降りられません

原則60歳まで引き出せません。途中で事情が変わっても、待つしかありません

▼

この記事の立場

先に使うなら降りられるほうから。NISAの枠を埋める予定の人が、iDeCoを足す順番です

🔴 3つの場面で比べます

税制優遇の話は、入れるとき・増えるとき・受け取るときの3つに分けると整理できます。

場面 iDeCo NISA
入れるとき 掛金が全額所得控除(所得税法75条) 控除なし。税引き後のお金で買います
増えるとき 運用益は非課税(特別法人税は現在停止中) 運用益は非課税
受け取るとき 🔴 課税対象。 退職所得控除・公的年金等控除で減らします 非課税。 手続きも要りません
引き出し 🔴 原則60歳まで不可 いつでも可
枠の再利用 — 売れば、その分の枠が翌年以降に戻ります
損が出たら — 損益通算・繰越控除はできません

💰実際は

いちばん誤解されているのが「受け取るとき」です。 iDeCoは非課税ではありません。課税を後ろにずらして、控除で減らす制度です。

iDeCoの入口は、たしかに強い

まず、良いところから。条文はこうです。

居住者が、各年において、小規模企業共済等掛金を支払つた場合には、その支払つた金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。 (所得税法75条。同条2項2号で、確定拠出年金の個人型年金加入者掛金が対象と定められています)

「その支払つた金額を」 ——一部ではなく全額です。所得税と住民税の両方が下がります。ここはNISAにない強みです。

ただし、iDeCo公式サイトが注意書きを出しています。

・課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません。 ・所得控除は、本人の所得からのみ控除されます。配偶者の所得からは控除されません。 ・運用資産には、別途、特別法人税が課されますが、現在、課税が停止されています。 (iDeCo公式サイト)

🔍CHECK

所得税を払っていない人には、この優遇は効きません。 専業主婦・主夫の方、収入が扶養の範囲内の方は、入口のメリットがゼロになります。

なお、特別法人税は「廃止」ではなく「停止」です。停止が解除されれば、運用資産に課税される制度が残っています。

🔴 問題は出口です

ここからが本題です。iDeCoで受け取るお金は、税法上「退職手当等」または「公的年金等」として扱われます。

一時金で受け取る場合、退職所得控除で減らします。控除額はこう決まります。

一 勤続年数が二十年以下である場合 四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額 二 勤続年数が二十年を超える場合 八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額 (所得税法30条3項)

問題は、会社の退職金と枠を取り合うことです。

図解① 控除の枠は共有です

会社の退職金

勤続年数に応じた退職所得控除を使います

+

iDeCoの一時金

加入年数に応じた退職所得控除を使います

▼

近い時期に両方受け取ると

期間が重なる分は差し引かれます。枠が2つ分にはなりません

だから「受け取る時期をずらす」という話が出てきます。

🔴 2026年1月から、そのルールが変わりました

ここが、この記事でいちばん新しい部分です。

iDeCoの一時金を先に受け取り、あとから退職金を受け取る場合、以前は5年空ければ調整の対象から外れるとされていました。それが10年になりました。

(4)退職手当等(老齢一時金(確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金をいう。以下同じ。)を除く。)の支払を受ける年の前年以前9年内に老齢一時金の支払を受けている場合には、当該老齢一時金等について、退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除の特例の対象とする…… (注)上記の改正は、令和8年1月1日以後に老齢一時金の支払を受けている場合であって、同日以後に支払を受けるべき退職手当等について適用する。 (財務省「令和7年度税制改正の大綱」・令和6年12月27日閣議決定)

図解② 「前年以前9年内」が意味すること

以前の考え方

iDeCoを先に受け取り、5年空けてから退職金 → 調整されない

▼

2026年1月から

前年以前9年内に受け取っていれば、重複排除の対象。実質10年空ける必要があります

▼

つまり

60歳でiDeCo、65歳で退職金という段取りは、もう以前と同じ結果にはなりません

⚠️ここに注意

🔴 「5年ルール」と書いてある古い解説記事が、まだたくさん残っています。 制度が変わったのは今年(2026年)からです。受け取り方を決める前に、必ず現在のルールを確認してください。

なお、ここで書いたのはiDeCoを先に受け取る場合の話です。退職金を先に受け取り、あとからiDeCoを受け取る順番では、調整の期間が別に定められています。どちらの順番になるかで結論が変わるので、自分の場合を国税庁または税務署で確認してください。

これが「出口が難しい」の中身です。 何十年も積んだお金の受け取り方を、税制のルールを読んだうえで、一度だけ正しく選ぶ必要があります。

受け取れる年齢も、加入期間で決まります

もうひとつ、知られていない縛りがあります。60歳になれば必ず受け取れるわけではありません。

受け取り始められる年齢 必要な通算加入者等期間
60歳以上61歳未満 10年
61歳以上62歳未満 8年
62歳以上63歳未満 6年
63歳以上64歳未満 4年
64歳以上65歳未満 2年
65歳以上 1月

(確定拠出年金法33条1項。個人型年金には同法73条により準用されます)

50代半ばから始めた人は、60歳では受け取れません。 iDeCo公式も「通算加入者等期間に応じて受給できる年齢が決まります」と書いています。

降りられるか、降りられないか

ここが、いちばん大きな違いです。

図解③ 途中で事情が変わったとき

iDeCo

「60歳になるまで、原則として資産を引き出すことはできません」(iDeCo公式)。掛金を止めることはできますが、お金は出せません

▼

NISA

いつでも売れます。しかも売った分の枠は、翌年以降にまた使えます

▼

差が出るのは

失業・病気・介護・転職・住宅。お金が要るときほど、動かせるかどうかが効きます

NISAの枠については金融庁「NISAを知る」を参照。非課税保有限度額は生涯で1,800万円、売却した分の総枠は再利用できます。

節税額は計算できますが、「30年後に自分が何に困っているか」は計算できません。

判断が難しくなる年齢に、難しい判断が来る

見落とされがちな点を書いておきます。

iDeCoの出口の判断は、60歳から75歳の間に発生します。

図解④ 出口で決めること

①

一時金か、年金か、併用か(適用される控除が変わります)

▼

②

いつ受け取るか(退職金との間隔で控除額が変わります)

▼

③

そのときの税制はどうなっているか(今回のように変わります)

▼

これを

一度だけ、やり直しがきかない形で決めます

📝補足

入るときの判断より、出るときの判断のほうが難しい制度です。 そして出るときは、入るときより十数年から数十年ぶん、年齢が上がっています。

NISAには、この判断がありません。売れば非課税で終わりです。

2026年12月から、iDeCoは大きく変わります

公平に書きます。iDeCoは、これから使いやすくなります。

加入資格 現在(月額) 2026年12月から(月額)
自営業など(第1号被保険者・任意加入被保険者) 68,000円 ※ 75,000円 ※
会社員(会社が企業年金を実施していない) 23,000円 62,000円
会社員(会社が企業年金を実施している) 20,000円(企業年金と合わせて55,000円が上限) 企業年金と合わせて62,000円が上限

※国民年金基金と合わせた上限です。公務員など、ほかの区分にはそれぞれ別の上限があります。

さらに、70歳になるまで掛金を出せるようになります。

❷ 70歳になるまで掛金の拠出が可能に 例えば、50歳の方がiDeCoを始めても最大20年間の掛金の拠出が可能に (厚生労働省「iDeCoがパワーアップします!」)

🔍CHECK

入口はさらに強くなります。 企業年金のない会社員なら、月23,000円が62,000円です。 ただし、出口の難しさは変わりません。 むしろ、金額が大きくなるぶん、間違えたときの差も大きくなります。

どちらも国の制度です

最後に、両方に共通することを。

iDeCoもNISAも、法律でつくられた制度です。だから、法律が変われば変わります。

図解⑤ 実際に変わったこと

2026年1月

退職金との調整期間が前年以前4年内 → 9年内に

▼

2026年12月

拠出限度額の引き上げ、70歳まで拠出可能に

▼

つまり

いま有利な設計が、30年後も有利とは限りません

縛りが長い制度ほど、ルール変更の影響を受ける期間も長くなります。 iDeCoは60歳まで動かせないので、その間に何度もルールが変わり得ます。

まとめ

「iDeCoは節税になるので、やらないと損ですよ」

  • 入口は本当に強いです。掛金が全額所得控除(所得税法75条)
  • ただし課税所得がない人には効きません。本人の所得からのみ控除されます
  • 🔴 出口は課税対象です。非課税ではなく、控除で減らす仕組みです
  • 🔴 2026年1月から、退職金との調整期間が5年から10年になりました。古い解説はもう使えません
  • 受け取れる年齢は加入期間で決まります。50代から始めると60歳では受け取れません
  • 原則60歳まで引き出せません。NISAはいつでも売れて、枠も翌年戻ります
  • 出口の判断は、年齢が上がったあとに一度だけやってきます
  • 2026年12月から拠出限度額が上がり、70歳まで拠出できるようになります
  • どちらも国の制度なので、ルールは変わります

先に使うなら、降りられるほうから。NISAの枠を埋める予定がある人が、その次にiDeCoを足す——制度の性質から見ると、この順番になります。

聞かれたときに確かめるのは、この一問です。

「受け取るときは、いくら税金がかかりますか」

そこまで説明されていない「節税」は、話の半分です。


NISAという制度そのものは「NISAをやらないと損ですよ」は本当?、会社の企業型DCとの関係は企業型DCとiDeCo、手数料はどちらが安い?、中で何を買うかは信託報酬の差は30年でいくらかにまとめています。

📋 契約前にここを確認

  • いま課税所得はありますか?(ないと所得控除は効きません)
  • 60歳まで引き出せなくても困りませんか?
  • 会社の退職金は、いつ、いくら出ますか?
  • iDeCoの一時金と退職金を、何年ずらす予定ですか?(2026年から10年になりました)
  • NISAの枠は、もう使い切っていますか?

参照した情報源

  1. 所得税法 第75条(小規模企業共済等掛金控除)/第30条(退職所得・退職所得控除額)・e-Gov法令検索
  2. 確定拠出年金法 第33条(老齢給付金の支給要件・通算加入者等期間)/第73条(個人型年金への準用)・e-Gov法令検索
  3. 財務省「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日閣議決定・退職手当等と老齢一時金の調整期間を前年以前9年内に。令和8年1月1日以後に適用)
  4. 厚生労働省「iDeCoがパワーアップします!」(令和8年12月からの拠出限度額と加入可能年齢の引き上げ)
  5. iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCoの特徴・ご注意いただきたいこと」(60歳まで引き出せない/課税所得がない方は所得控除を受けられない/特別法人税は現在停止)
  6. 金融庁「NISAを知る」(年間投資枠・非課税保有限度額1,800万円・総枠の再利用)

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