🏠 住宅・リフォーム

「火災保険を使えば、屋根の修理が無料でできます」は本当? 保険は使えます。業者を通す理由がありません

🗣️営業トーク

「近所を点検して回っています。この傷みは台風のせいですね。火災保険を使えば、自己負担なしで屋根を直せますよ」

結論

火災保険は、台風などの風災、雹災、雪災による損害なら、屋根や雨どいの修理にも使えます。ここは本当です。ただし、経年劣化による損害は支払いの対象外です。問題になっているのは、傷みを災害のせいにして請求させる業者、「請求期限が迫っている」とあおる業者、保険金の3〜4割を手数料として取る業者です。うその理由で請求すると、保険金の返還請求や契約の解除を受けるだけでなく、請求した本人が詐欺罪に問われるおそれがあります。保険金の請求は、自分で保険会社に連絡すればでき、手数料はかかりません。訪問販売で契約してしまっても、書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフできます。

ある日、作業着の人が訪ねてきます。

「近所を点検して回っています。お宅の屋根、傷んでいますよ」

撮った写真を見せながら、こう続けます。

「この傷みは台風のせいですね。火災保険を使えば、自己負担なしで屋根を直せますよ」

前半は、本当のこともあります。 火災保険は、火事だけの保険ではありません。台風や雹、大雪の被害なら、屋根の修理にも使えます。

問題は、その先です。 誰が、何を、どう請求するのか。そこに、法律に触れるやり方が混ざっています。

先に結論

この記事の結論

火災保険は

風災・雹災・雪災などの損害なら、屋根の修理にも使えます

▼

ただし

経年劣化は対象外です。そこを災害のせいにして請求させる業者がいます

▼

うその請求は

業者ではなく請求したあなたが、詐欺罪に問われるおそれがあります

▼

請求は

自分で保険会社に連絡すればできます。手数料はかかりません

▼

契約してしまったら

訪問販売なら、書面を受け取ってから8日以内はクーリング・オフできます

火災保険は、ちゃんと使えば屋根にも使えます

まず、ここをはっきりさせておきます。日本損害保険協会の説明です。

火災保険は、「火事で家が焼けてしまった」場合だけではなく、「落雷、破裂・爆発などで家が損壊した」といった損害も対象としています。 さらに、台風や暴風などの風災による損害や、大雪などの雪災による損害、洪水による床上浸水などの水災による損害についても補償の対象としている商品もあり、自然災害に備える保険ともいえます。 (日本損害保険協会 そんぽ相談ガイド 問51)

同じページで、主な補償として「風災、雹(ひょう)災、雪災」「建物の外部からの物体の落下・飛来、衝突」などが挙げられています。ただし、どこまで補償されるかは契約によって違います。 手元の保険証券と約款を見るか、保険会社に確かめることです。

図解① 使える損害・使えない損害

使えることがある

台風で瓦が飛んだ・雹で屋根材が割れた・大雪で雨どいが曲がった など「いつの、どの災害か」が言える損害

▼

使えない

年月がたって自然に傷んだもの(経年劣化)

▼

火災保険では使えない

地震による損害(地震保険が別に必要です)

経年劣化は対象外だと、国民生活センターも消費者庁も明記しています。

自然災害による住宅の損害については、多くの場合、加入している損害保険で補償されますが、自然の消耗もしくは劣化または性質によるさび等、経年劣化によって生じた損害は支払いの対象とはなりません。 (国民生活センター 2021年9月2日・報告書本文)

🔴 何が問題になっているのか

相談は大きく増えました。国民生活センターによると、「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスの相談は、2019年度2,691件から2020年度5,447件と2倍以上になっています(同・報告書本文)。

問題の手口は、大きく3つに分かれます。

① 傷みを「災害のせい」にして請求させる

消費者庁は2024年6月、ある事業者の手口を注意喚起で公表しています。

「点検は無料なのでやってみましょう」「自然災害でも火災保険の適用になる」「火災保険で修理できてしまう」 ……「これらの破損は、○○(雪、ひょう等)によるもの」 ……「今回、数百万円にしておけば、保険金は数十万円になり、その保険金で修理が可能である」 (消費者庁 令和6年6月27日 注意喚起)

そして、実際にどうなったか。

消費者は、……保険会社に火災保険金の支払を請求しますが、保険会社からは、自然災害によるものではなく火災保険の適用にならない旨の連絡を受けた…… (同)

消費者庁は、この事業者が災害による損傷で保険金が支払われるかのように告げていたことを「不実告知」と確認しています。

② 「請求期限が迫っている」とあおる

国民生活センターの相談事例です。

事業者から「3年前の大型台風で損害を受けている部分があるかもしれない。火災保険の請求期限が迫っている。調査費用は無料なので、調査だけでも受けてはどうか。調査して、火災保険が利用できることが分かれば申請手続を代行し、その保険金の一定割合を手数料でもらう。保険金が出なければ負担はない」と言われた。 (国民生活センター 2021年9月2日・事例1)

保険金を請求する権利に期限があるのは本当です。

保険給付を請求する権利……は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。 (保険法 第95条第1項)

でも、期限が本当でも、その損害が災害によるものかどうかは別の話です。期限の話で急がせて、中身の確認を飛ばさせる。そこが手口です。

③ 保険金の3〜4割を手数料で取る

訪問した事業者から「修理代を上回る保険金が受け取れる。手数料は40%だが損はない」と言われ、損がないならと契約することにした。……よく考えると、保険会社の査定が見積もり通りとは限らないと思い、解約を申し出たが、解約できないと言われた。 (同・事例2)

日本損害保険協会にも、こんな事例が載っています。

「火災保険で外壁、雨樋、ベランダの手すりの修理ができる。申請の手伝いをするが、完全成功報酬型で、保険金が支払われた時にのみ保険金の30%を請求する」という説明を受けて契約をした。その後保険金が100万円下りたので、住宅メーカーに修理を依頼したところ、70万円では修理できないといわれてしまった。 (日本損害保険協会「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」)

図解② 手数料30%だと、どうなるか(損保協会の事例)

保険金

100万円が支払われた

▼

業者の手数料

30%=30万円

▼

手元に残るのは

70万円。その額では修理できないと言われた

▼

足りない分は

自己負担です。「自己負担なし」ではありませんでした

保険金は、保険会社が損害の額を査定して決めます。 そこから3〜4割を抜かれれば、修理代が足りなくなることがあります。

🔴 うその請求で罪に問われるのは、あなたです

ここが、いちばん知っておいてほしいところです。

保険会社に請求するのは、業者ではなく契約者であるあなたです。 業者に言われるまま、経年劣化を「台風のせい」として請求すれば、うその請求をしたのはあなたになります。

経年劣化による損傷と知りながら、自然災害などによる損傷と申請するなど、うその理由で保険金を請求すると、保険会社から保険金の返還請求や保険契約の解除をされたり、刑事罰(詐欺罪)に問われるおそれもありますので、絶対にしないでください。 (国民生活センター 2021年9月2日・報告書本文)

法律ではこうなっています。

保険者は、次に掲げる事由がある場合には、損害保険契約を解除することができる。 ……二 被保険者が、当該損害保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。 (保険法 第30条)

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。 (刑法 第246条第1項)

図解③ うその請求の行き着く先

業者が言う

「これは雪のせいです」「数百万円にしておけば」

▼

請求するのは

契約者のあなたです

▼

うそだと分かれば

保険金の返還請求・保険契約の解除

▼

さらに

経年劣化と知りながら請求すれば、詐欺罪に問われるおそれ

⚠️ここに注意

「業者がそう言ったから」は、守ってくれません。 経年劣化だと知りながら災害のせいにして請求すれば、それは自分の請求です。 「本当に、あの台風で壊れたのか」を自分で説明できない損害は、請求しないことです。

業者の側にも、法律の決まりがあります

訪問して契約する場合、業者は特定商取引法の「訪問販売」のルールに従う必要があります。

販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し……次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。 ……六 顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項 (特定商取引法 第6条第1項)

「災害で壊れているから、修理が必要」と事実と違うことを言うのは、この「契約を必要とする事情」についての嘘にあたりえます。消費者庁が前述の事業者について確認したのも「不実告知」でした(こちらは消費者安全法にもとづく注意喚起です)。

解約を妨げるために嘘をつくこと、脅して困惑させることも禁止されています(同条1項5号・3項)。

🔴 保険金の請求は、自分でできます

国民生活センターは、注意喚起の副題にこう書いています。

申請サポートを受ける前に、損害保険会社に連絡を 保険金の請求は、加入者ご自身で!! (国民生活センター 2021年9月2日)

日本損害保険協会も同じです。

保険金の請求は保険契約者ご自身で簡単に行うことができ、手数料はかかりません。 (日本損害保険協会「あなたの保険金が狙われています!」)

図解④ 本来の順番

①

自分の保険会社か代理店に連絡(保険証券の番号を手元に)

▼

②

損害の状況を伝え、請求書類を受け取る

▼

③

修理業者から見積もりをもらう(複数社で比べる)

▼

④

保険会社が損害を査定し、保険金が決まる。それから修理を契約する

順番が逆になると危険です。 保険金がいくら出るか分からないうちに修理を契約すると、査定が見積もりより低かったとき、差額はあなたが払うことになります。日本損害保険協会も、先に業者と契約すると「保険金が支払われずに修理代金を自己負担することになったり、解約しようとすると高額な解約手数料を要求される」ことがあるとしています。

契約してしまったら

訪問販売なら、8日以内はクーリング・オフ

業者が家に来て契約した場合(訪問販売)や、電話で勧誘されて契約した場合は、契約書面を受け取った日から8日以内なら、無条件で契約をやめられます(特定商取引法 第9条)。

  • 書面か、メールなどの電磁的記録で通知する。通知を出した時点で効力が生じます
  • 違約金や損害賠償は払わなくてよい
  • 嘘や脅しでクーリング・オフを妨げられた場合は、8日を過ぎていてもできます

📝補足

自分から「家に来て契約してほしい」と頼んだ場合は、訪問販売のルールが適用されないことがあります(特定商取引法第26条第6項第1号)。 インターネット広告を見て自分から連絡した場合なども、事情によって扱いが変わります。国民生活センターも「クーリング・オフができる場合があります」という書き方をしています。 迷ったら、消費者ホットライン188に相談してください。

8日を過ぎても、違約金には上限があります

訪問販売の契約を解除した場合、業者が請求できる金額には上限があります。例えば、工事などの役務の提供を始める前に解除したなら、業者が請求できるのは「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」までです(特定商取引法第10条第1項第4号)。

「保険金の4割を払え」という違約金の条項があっても、そのとおり払わなければならないとは限りません。

クーリング・オフの書き方はクーリング・オフの使い方にまとめています。

公平に書いておきます

  • 火災保険で住宅を直すこと自体は、正当な使い方です。 台風や雹の被害を知らずに放置しているなら、確かめる価値はあります
  • 請求を手伝うサービスがすべて違法なわけではありません。 問題は、うその理由で請求させることと、説明のない高額な手数料・違約金です
  • 本当に災害の被害を受けた家に、業者の指摘がきっかけで気づくこともあります。その場合も、まず自分の保険会社に連絡すれば足ります
  • この記事は特定の会社を指したものではありません。確かめるべきは、その損害が本当に災害によるものかと、業者を通す必要があるかです

言われたら、この4つを確かめる

図解⑤ その場で確かめること

①

「いつの、どの災害で壊れたんですか」(答えがあいまいなら、経年劣化の可能性があります)

▼

②

「まず自分の保険会社に連絡します」(これで困る業者なら、それが答えです)

▼

③

「手数料と、解約したときの違約金はいくらですか」(書面で確かめます)

▼

④

「保険金が決まってから、修理を決めます」(査定の前に契約しない)

まとめ

「火災保険を使えば、屋根の修理が無料でできます」

  • 火災保険は、風災・雹災・雪災などの損害なら、屋根の修理にも使えます。 ここは本当です
  • 🔴 ただし経年劣化は対象外。地震の損害も火災保険では出ません
  • 相談は2019年度2,691件から2020年度5,447件と2倍以上に増えました
  • 問題の手口は3つ。①傷みを災害のせいにする ②「請求期限が迫っている」とあおる ③保険金の3〜4割を手数料で取る
  • 🔴 うその理由で請求すると、請求したあなたが保険金の返還請求・契約解除を受け、詐欺罪に問われるおそれがあります
  • 業者が「修理が必要な事情」について嘘をつくのは、特定商取引法の不実告知にあたりえます
  • 🔴 保険金の請求は、自分で保険会社に連絡すればでき、手数料はかかりません
  • 順番は、保険会社に連絡 → 査定 → それから修理を契約
  • 訪問販売で契約したなら、書面から8日以内はクーリング・オフ。迷ったら188

言われたら、こう答えるのが一番です。

「まず、自分の保険会社に連絡します」


訪問で塗装や屋根工事を勧められたときは「今すぐ外壁塗装が必要です」は本当?、地震の損害については「地震保険も入っておきましょう」は本当?、クーリング・オフの手順はクーリング・オフの使い方にまとめています。

📋 契約前にここを確認

  • その損害は、いつの、どの災害によるものですか? 自分で説明できますか?
  • 業者と契約する前に、自分の保険会社か代理店に連絡しましたか?
  • 「保険金の○割」という手数料や、解約したときの違約金の説明を受けましたか?
  • 「請求期限が迫っている」と急かされていませんか?
  • 業者の見積もりどおりに保険金が出る、と思い込んでいませんか?
  • 契約書面を受け取った日から、8日たっていませんか?

参照した情報源

  1. 国民生活センター「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!」(2021年9月2日)
  2. 国民生活センター「被災地域は特に注意!災害後の住宅修理トラブル」(2022年6月16日)
  3. 消費者庁「『火災保険を使って実質的に無料で修理ができる』などとうたい、火災保険金を利用した修理工事契約を締結させる事業者に関する注意喚起」(令和6年6月27日)
  4. 日本損害保険協会「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」
  5. 日本損害保険協会「あなたの保険金が狙われています!」(2022年度版注意喚起チラシ)
  6. 日本損害保険協会 そんぽ相談ガイド 問51(火災保険で補償される範囲)
  7. e-Gov 保険法 第30条(重大事由による解除)・第95条(消滅時効)
  8. e-Gov 刑法 第246条(詐欺)
  9. e-Gov 特定商取引に関する法律 第6条(禁止行為)・第9条(クーリング・オフ)・第10条(損害賠償等の額の制限)・第26条第6項

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