「ねずみ講じゃないから、合法です」は本当? 合法かどうかと、あなたがもうかるかは別の話です
営業トーク
「これはねずみ講じゃなくて、ちゃんとした商品を扱うネットワークビジネスだから合法なんだよ。人に紹介するだけで収入になるから」
結論
「ねずみ講ではない」は、多くの場合そのとおりです。ねずみ講(無限連鎖講)は、お金だけを配当する組織で、開設も加入も勧誘も法律で全面的に禁止されています。一方、商品や役務を売り、人を紹介すると利益が入るネットワークビジネス(マルチ商法)は、特定商取引法の「連鎖販売取引」として、禁止ではなく規制の対象です。ただし「合法」は、あなたがもうかることを意味しません。紹介で入る利益の出どころは、あとから入った人の支払いです。1人が2人ずつ誘い続けると、27段目で1億人を超えます。勧誘の目的を告げずに呼び出すこと、嘘をつくこと、借金をさせることなどは法律で禁止されています。契約書面を受け取ってから20日以内ならクーリング・オフでき、その後も退会と、条件つきで商品の返品ができます。
久しぶりに連絡してきた友人に、カフェで言われます。
「これはねずみ講じゃなくて、ちゃんとした商品を扱うネットワークビジネスだから合法なんだよ」
「人に紹介するだけで収入になるから」
前半は、多くの場合そのとおりです。 ネットワークビジネス(マルチ商法)そのものは、法律で禁止されてはいません。
問題は、「合法」と「もうかる」がすり替わっていることです。この記事では、法律が何を禁止し、何を認めているのか、そしてなぜ全員はもうからないのかを確かめます。
先に結論
この記事の結論
ねずみ講は
お金だけを配当する組織。開設も加入も勧誘も、全面的に禁止です
マルチ商法は
商品や役務の取引。特定商取引法の「連鎖販売取引」として規制されています
でも
紹介で入る利益の出どころは、あとから入った人の支払いです
だから
1人が2人ずつ誘い続けると、27段目で1億人を超えます。全員はもうかりません
入ってしまったら
書面を受け取ってから20日以内ならクーリング・オフ。その後も退会できます
🔴 ねずみ講とマルチ商法は、法律がまったく違います
ねずみ講:お金だけが回る組織。全面禁止
ねずみ講には、専用の法律があります。
この法律において「無限連鎖講」とは、金品……を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、順次先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする金品の配当組織をいう。 (無限連鎖講の防止に関する法律 第2条)
あとから入った人のお金を、先に入った人が受け取る。 それだけの仕組みです。
何人も、無限連鎖講を開設し、若しくは運営し、無限連鎖講に加入し、若しくは加入することを勧誘し、又はこれらの行為を助長する行為をしてはならない。 (同 第3条)
加入することまで禁止されています。罰則もあります。
| 行為 | 罰則 |
|---|---|
| 開設・運営 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)(第5条) |
| 業として勧誘 | 1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(第6条) |
| 勧誘 | 20万円以下の罰金(第7条) |
法律は、なぜ禁止するのかも書いています。
この法律は、無限連鎖講が、終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るものであることにかんがみ…… (同 第1条)
マルチ商法:商品や役務の取引。禁止ではなく規制
一方、マルチ商法は特定商取引法の「連鎖販売取引」です。消費者庁の説明です。
具体的には、「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」とか「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料がもらえます」などと言って人々を勧誘し(このような利益を「特定利益」といいます)、 取引を行うための条件として、1円以上の負担をさせる(この負担を「特定負担」といいます。)場合であれば「連鎖販売取引」に該当します。 (消費者庁「特定商取引法ガイド 連鎖販売取引」)
「ネットワークビジネス」「紹介制度」など、呼び名は関係ありません。 人を紹介すると利益が入ると誘い、入会金・商品代・登録料など名目を問わず1円以上払わせれば、この法律の対象です。
図解① 法律上の違い
ねずみ講
お金だけを配当する組織 → 無限連鎖講防止法で全面禁止(加入も禁止)
マルチ商法
商品や役務の取引 → 特定商取引法で規制(勧誘のしかたに厳しい決まり)
つまり
「ねずみ講じゃない」は、違法ではないと言っているだけ。もうかる保証ではありません
🔴 そもそも、全員がもうかる仕組みではありません
紹介で入る利益の出どころ
特定商取引法は、「特定利益」をこう定めています。
……特定利益(その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。……) (特定商取引法 第33条第1項)
紹介で入る利益は、自分の下に入った「他の者」が払うお金から出ます。 自分が受け取るためには、誰かが払わなければなりません。
2人ずつ誘い続けると、どうなるか
ねずみ講の定義にある「二以上の倍率」で、1人が2人ずつ誘い続けた場合を計算してみます(当サイトの計算)。
| 段 | その段の人数 |
|---|---|
| 1段目 | 2人 |
| 10段目 | 1,024人 |
| 20段目 | 約105万人 |
| 27段目 | 約1億3,422万人 |
誘う相手は、どこかで必ず尽きます。 そして尽きたとき、いちばん下にいる人たちは、払っただけで下に誰もいない状態になります。
ここに注意
物販のマルチ商法でも、紹介で稼ぐ部分は同じ構造です。 商品があるぶん、ねずみ講とは法律上の扱いが違います。 でも「人を紹介すれば収入になる」という部分は、あとから入る人がいなくなれば止まります。
「自分は上のほうだから大丈夫」と思えるかどうかは、自分が何段目にいて、自分の下にこれから何人入るのかで決まります。誘ってきた人も、同じ説明を受けて入った人です。
🔴 勧誘のしかたには、厳しい決まりがあります
マルチ商法は禁止されていないぶん、勧誘のルールが細かく決まっています。
最初に、勧誘だと告げなければならない
……その勧誘に先立つて、その相手方に対し、統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者の氏名又は名称……、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品又は役務の種類を明らかにしなければならない。 (特定商取引法 第33条の2)
「久しぶりに会おう」「いい話があるんだけど」だけで呼び出し、会ってから勧誘を始めるのは、この決まりに反します。
禁止されていること
| 禁止されていること | 根拠 |
|---|---|
| 商品の品質、もうかる話(特定利益)、支払う額、解約の条件などについて、嘘をつく・わざと言わない | 34条1項・2項 |
| 威迫して困惑させる(契約させるため、解約させないため) | 34条3項 |
| 勧誘目的を告げずに呼び出し、公衆の出入りしない場所で勧誘する | 34条4項 |
| 若者・高齢者などの判断力不足に乗じて契約させる | 施行規則87条5号 |
| 知識・経験・財産の状況から不適当な勧誘 | 施行規則87条6号 |
| 書面に年齢や職業を偽って書かせる | 施行規則87条7号 |
| 年収などを偽って申告させる/意に反して貸金業者や銀行に連れていく/借金や預金の引き出しを迷惑な方法で勧める | 施行規則87条8号 |
| 解約を迷惑な方法で妨げる | 施行規則87条1号 |
34条に違反すると、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)です(第70条)。
書面は2回もらう
契約の前に「概要書面」、契約の後に「契約書面」を受け取ることになっています(第37条)。消費者庁によれば、契約書面のクーリング・オフの事項は赤枠の中に赤字で書くことになっています。
20日は、契約書面を受け取った日から数えます。書面をもらっていなければ、期間はそもそも始まっていません。
どういう人が誘われているか
国民生活センターに寄せられた「マルチ取引」の相談は、2025年度で4,003件です(2023年度5,158件、2024年度4,132件)。
「マルチ取引」では 20 歳代の割合が最も高く、29.3%を占めています。 (国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況」・16頁)
同じ資料で、マルチ取引の相談が多い商品・役務の上位は次のとおりです。
| 順位 | 商品・役務 | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 健康食品 | 14.6% |
| 2 | 内職・副業その他 | 10.5% |
| 3 | 化粧品 | 9.7% |
| 4 | 商品一般 | 8.6% |
| 5 | ファンド型投資商品 | 8.1% |
健康食品や化粧品だけではありません。 副業や投資の話も上位に入っています。
きっかけは「知っている人」
国民生活センターの最近の相談事例です。
友人に勧められオンラインゲームのアフィリエイトの副業を申し込み借金して支払ったが、マルチ取引のようだ。 職場の先輩から補正下着を勧められマンションの一室に行き補正下着の高額な契約をした…… マッチングアプリで知り合った女性にセミナーへ連れていかれた。このセミナーを人に紹介するとお金がもらえるという。断り切れずにセミナーの契約をしてしまった。 (国民生活センター「マルチ取引」)
国民生活センターは、若者の相談について、問題点をこうまとめています。
契約のきっかけは友人・知人からの誘い 人を紹介すれば報酬を得られることばかり強調されるが、儲け話の実態はよく分からない 友人・知人から勧誘されると断りにくい。借金をしてまで契約するケースも (国民生活センター 2019年7月25日)
図解② 付け込まれやすい場面
相手が
友人・先輩・知人。断ると関係が壊れそうに感じる
自分が
収入を増やしたい・副業を探している。「紹介するだけ」が魅力に聞こえる
お金が
手元にない。「借りても紹介すればすぐ返せる」と言われる
場所が
カフェ・部屋・セミナー。複数人に囲まれ、その場で決めさせられる
実際は
「お金がない」は、断る理由になりません。 借金をさせてでも契約させようとする相手がいるからです。 断るときは理由を言わず、「やりません」だけで足ります。理由を言うと、その理由をつぶす話が始まります。
断り方の考え方は「話を聞くだけでもどうですか」は本当?にもまとめています。
🔴 入ってしまったら:やめ方は3つあります
① クーリング・オフ(20日以内・無条件)
……第三十七条第二項の書面を受領した日(……商品につき最初の引渡しを受けた日がその受領した日後であるときは、その引渡しを受けた日……)から起算して二十日を経過したとき……を除き、書面又は電磁的記録によりその連鎖販売契約の解除を行うことができる。 この場合において、その連鎖販売業を行う者は、その連鎖販売契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。 (特定商取引法 第40条第1項)
- 契約書面を受け取った日(商品の引渡しが後ならその日)から20日以内
- 書面か、メールなどの電磁的記録で通知する。通知を出した時点で効力が生じます(同条2項)
- 違約金は払わなくてよく、商品の引き取り費用も業者の負担です(同条1項・3項)
- 嘘や脅しでクーリング・オフを妨げられた場合は、20日を過ぎていてもできます
消費者庁は、書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便など、メールなら送信したメールを保存するなど、証拠を残すことを勧めています。
クーリング・オフの書き方は「クーリング・オフの使い方」にまとめています。
② 中途解約(20日を過ぎても、いつでも退会できる)
20日を過ぎても、将来に向かって契約を解除(退会)できます(第40条の2第1項)。
さらに、次の条件をすべて満たす商品は、返品して代金を取り戻せます(同条2項)。
| 条件 |
|---|
| 入会してから1年たっていない |
| 商品の引渡しから90日たっていない |
| 商品を再販売していない |
| 商品を使っていない・消費していない(業者に使わされた場合を除く) |
| 自分の責任でなくしたり壊したりしていない |
返品した場合に業者が請求できるのは、その商品の販売価格の10分の1まで(と法定利率による遅延損害金)です(同条4項)。これより不利な特約は無効です(同条6項)。
③ 取消し(嘘をつかれて契約した場合)
もうかる話や支払う額などについて嘘をつかれた、またはわざと言われなかったために誤解して契約した場合は、契約を取り消せます(第40条の3)。取消しは、気づいた時から1年、契約から5年以内です(同条2項で準用する第9条の3第4項)。
図解③ やめ方の選び方
20日以内
クーリング・オフ。理由は不要。違約金なし
20日を過ぎた
中途解約で退会。入会1年以内・引渡し90日以内・未使用の商品は返品できる
嘘をつかれていた
取消し。気づいてから1年・契約から5年
迷ったら
消費者ホットライン188。最寄りの消費生活センターにつながります
ここに注意
「退会すると違約金がかかる」「商品は返品できない」と言われても、そのまま信じないでください。 法律は、業者が請求できる額に上限を設け、消費者に不利な特約を無効にしています。 解約についての嘘も、34条で禁止されている行為です。
公平に書いておきます
- マルチ商法そのものは違法ではありません。 法律を守って運営している事業者もあります
- 商品そのものに満足して、自分で使うために買っている人もいます。 商品が良いかどうかと、紹介でもうかるかどうかは、別に考える必要があります
- ただし、法律がこれだけ細かく勧誘のルールと解約の権利を定めているのは、それだけトラブルが多い取引だからです。国民生活センターへの相談は、毎年4,000件を超えています
- この記事は特定の会社を指したものではありません。確かめるべきは会社の評判ではなく、自分がお金を払う仕組みです
誘われたら、この4つを聞く
図解④ その場で聞くこと
①
「会社名と、何を売るのか、最初に教えて」(勧誘に先立って告げる義務があります)
②
「紹介で入るお金は、誰が払ったお金?」(答えは「あとから入った人」です)
③
「何人入れば、払った分を取り戻せる?」(数字で答えられない話は、判断できません)
④
「書面を持ち帰って、1週間考えていい?」(だめと言われたら、それが答えです)
まとめ
「ねずみ講じゃないから、合法です」
- ねずみ講(無限連鎖講)は、お金だけを配当する組織。 開設・運営・加入・勧誘まで全面禁止です
- マルチ商法は、特定商取引法の「連鎖販売取引」。 禁止ではなく規制の対象です
- 呼び名は関係ありません。紹介で利益が入ると誘い、1円以上払わせればこの法律の対象です
- 🔴 「合法」と「もうかる」は別の話です。紹介で入る利益の出どころは、あとから入った人の支払いです
- 🔴 1人が2人ずつ誘い続けると、27段目で1億人を超えます。 全員はもうかりません
- 勧誘の前に会社名・勧誘目的・商品の種類を告げる義務があります。目的を隠した呼び出しは違反です
- 嘘・脅し・判断力不足に乗じること・借金をさせることなどは禁止されています
- 相談は2025年度に4,003件、20歳代が29.3%で最多。健康食品・副業・化粧品・投資が上位です
- 🔴 やめ方は3つ。 ①書面から20日以内のクーリング・オフ ②その後も中途解約(条件を満たす商品は返品可・請求は販売価格の10分の1まで) ③嘘をつかれたなら取消し
- 迷ったら、消費者ホットライン188
誘われたときに聞くのは、この一問です。
「紹介で入るお金は、誰が払ったお金?」
クーリング・オフの手順は「クーリング・オフの使い方」、そもそも誘いに近づかない考え方は「話を聞くだけでもどうですか」は本当?、SNSで知り合った人からの投資の誘いは「先生の言うとおりにすれば、必ずもうかります」は本当?にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- 誘われたとき、最初に「勧誘が目的」と会社名・商品の種類を告げられましたか?
- 紹介で入る利益は、誰が払ったお金から出ていますか?
- 自分の下に何人が入って、いくら買えば、自分の支払いを取り戻せますか?
- 契約前に「概要書面」、契約後に「契約書面」を受け取りましたか?
- 契約書面を受け取った日から、20日たっていませんか?
- 借金やクレジットカードで払うように勧められていませんか?
- 断ったら友人関係が壊れる、と感じていませんか?
参照した情報源
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 連鎖販売取引」
- e-Gov 特定商取引に関する法律 第33条(定義)・第33条の2(氏名等の明示)・第34条(禁止行為)・第37条(書面の交付)・第40条(クーリング・オフ)・第40条の2(中途解約)・第40条の3(取消し)・第70条(罰則)
- e-Gov 特定商取引に関する法律施行規則 第87条(連鎖販売取引における禁止行為)
- e-Gov 無限連鎖講の防止に関する法律 第1条〜第3条・第5条〜第7条
- 国民生活センター「マルチ取引(各種相談の件数や傾向)」
- 国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況」(2026年8月5日)
- 国民生活センター「友だちから誘われても断れますか?若者に広がる『モノなしマルチ商法』に注意!」(2019年7月25日)