📈 投資・資産運用

「1,000万円を超えると保護されません」は本当? 勧められた先は、保護がゼロです

🗣️営業トーク

「1,000万円を超えていますね。このままだと保護されませんよ。こちらに移しておかれてはどうですか」

結論

預金保険が守るのは元本1,000万円までと利息です。ここは事実です。ただし対策として勧められる投資信託や保険や外貨預金は、そもそも預金保険の対象に入っていません。保護が足りないという理由で、保護がない場所へ移すことになります。証券口座にも1,000万円という数字は出てきますが、意味が違います。銀行の預金は銀行への債権で、破綻すれば超過分はカットされ得ます。証券会社に預けた資産は分別管理され、金銭は信託会社に信託されています。1,000万円は分別管理が破られたときの補償の上限です。どちらを選ぶかの前に、この違いを確かめてください。

銀行の窓口で、残高を見ながら言われます。

「1,000万円を超えていますね。このままだと保護されませんよ」

「こちらに移しておかれてはどうですか」

前半は事実です。 預金保険で守られるのは、元本1,000万円までと利息。ここに嘘はありません。

問題は後半です。 その「こちら」が何なのかを確かめます。

先に結論

この記事の結論

預金保険は

1金融機関ごとに元本1,000万円と利息まで。ここは事実です

▼

でも勧められる先は

投資信託・保険・外貨預金。どれも預金保険の対象ではありません

▼

つまり

保護が足りないという理由で、保護がない場所へ移す話になっています

▼

証券口座にも1,000万円

という数字は出ますが、意味がまったく違います

▼

確かめること

「その商品は預金保険の対象ですか」。この一問で分かれます

まず、預金保険の中身

金融庁の説明です。

決済用預金(当座預金や利息の付かない普通預金等)は全額保護されます。 一般預金等(定期預金や利息の付く普通預金等)は、預金者1人当たり1金融機関ごとに合算され、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。 (金融庁「預金保険制度」)

この1,000万円は、法律と政令で決まっています。

保険基準額……法第五十四条第二項に規定する政令で定める金額は、千万円とする。 (預金保険法施行令 第6条の3)

1,000万円+利息(1金融機関・預金者1人あたり)

「1金融機関ごと」で「預金者1人あたり」です。 同じ銀行に3つ口座を持っていても、合算されます。

🔴 では、勧められた先はどうか

ここが、この記事の中心です。預金保険が守るのは「預金等」です。 何が「預金等」なのかは、法律に書いてあります。

この法律において「預金等」とは、次に掲げるものをいう。 一 預金 二 定期積金 三 ……掛金 四 ……元本の補てんの契約をした金銭信託(貸付信託を含む。)……に係る信託契約により受け入れた金銭 五 長期信用銀行債等…… (預金保険法 第2条第2項)

このリストに入っていないものは、最初から対象外です。

移し先として勧められるもの 預金保険の対象か
定期預金・普通預金(円) 対象(1,000万円+利息)
決済用預金 対象(全額)
投資信託 対象外(「預金等」ではありません)
一時払いの保険 対象外(同上)
外貨預金 対象外(政令で除かれています)
仕組預金の一部 元本部分は対象。ただし特約部分の扱いに注意

外貨預金については、政令にはっきり書かれています。

保険金の額の計算上除かれる預金等……一 外貨預金…… (預金保険法施行令 第2条の2)

図解① 話の向きが逆になっています

言われたこと

「1,000万円を超える分は保護されません」

▼

勧められた先

投資信託・保険・外貨預金=1円も預金保険の対象ではありません

▼

しかも

これらには元本割れがあります。銀行が健全でも減ることがあります

▼

だから

「その商品は預金保険の対象ですか」と聞くだけで、話が止まります

⚠️ここに注意

「保護される」と「元本が減らない」は、別のことです。 預金保険が守るのは銀行が破綻したとき。 投資信託や外貨預金が減るのは銀行が健全なときでも起こります。

銀行の窓口で投資商品を買うことの構造は「銀行だから安心して投資できます」は本当?にまとめています。

対策になる選択肢は、法律のほうにあります

「1,000万円を超えている」が本当なら、確かめるべき選択肢が別にあります。

① 決済用預金は、全額保護されます

法律で3つの要件が決まっています。

次に掲げる要件のすべてに該当する預金(外貨預金その他政令で定める預金を除く。以下「決済用預金」という。)…… 一 その契約又は取引慣行に基づき……決済に用いることができるものであること。 二 その預金者がその払戻しをいつでも請求することができるものであること。 三 利息が付されていないものであること。 (預金保険法 第51条の2第1項・番号は引用者)

利息を捨てるかわりに、全額保護を取るという選択です。当座預金や、利息の付かないタイプの普通預金がこれにあたります。

⚠️ すべての銀行が扱っているわけではありません。 特にインターネット専業の銀行では、取扱いがないことがあります。使っている銀行に確認することです。

② 銀行を分ける

1金融機関ごとなので、分ければ枠が増えます。ただし、口座が増えれば管理も増えます。

📝補足

残高の把握ができなくなる口座は、それ自体がリスクです。 使っていない口座は、相続のときに探すところから始まります。 枠を増やすことと、管理が回ることは、両立させる必要があります。

🔴 証券口座の「1,000万円」は、意味が違います

ここが、いちばん誤解されるところです。証券口座にも1,000万円という数字が出てきます。でも、まったく別の仕組みです。

証券会社は、顧客の資産を分けて管理します

金融商品取引業者等は、……有価証券を、確実にかつ整然と管理する方法として内閣府令で定める方法により、自己の固有財産と分別して管理しなければならない。 金融商品取引業者等は、……顧客に返還すべき額……に相当する金銭を、自己の固有財産と分別して管理し、……国内において、信託会社等に信託をしなければならない。 金融商品取引業者は、前二項の規定による管理の状況について、……定期に、公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならない。 (金融商品取引法 第43条の2)

証券口座に置いた現金(預り金)は、証券会社の財産ではなく、信託会社に信託されています。 そして、その管理状況は公認会計士の監査を受けます。

投資者保護基金は、その先の話です

前条第一項及び第一項の規定により支払をすべき金額が政令で定める金額を超えるときは、当該政令で定める金額を当該支払をすべき金額とする。 (金融商品取引法 第79条の57第3項)

基金による支払の最高限度額……政令で定める金額は、千万円とする。 (金融商品取引法施行令 第18条の12)

同じ1,000万円です。でも、出番が違います。

図解② 同じ1,000万円でも、意味が逆です

銀行の1,000万円

預金は銀行への債権。破綻したら超過分は財産の状況に応じてカットされ得ます

▼

証券の1,000万円

顧客の資産は分別管理・信託。破綻しても顧客のものとして返るのが原則です

▼

基金が出るのは

その分別管理が守られていなかった場合。最後の砦であって、通常の入口ではありません

▼

つまり

銀行の1,000万円は上限、証券の1,000万円は例外時の備えです

これは「証券口座のほうが安全だ」という話ではありません。 守り方の設計が違うという話です。判断はそのうえでするものです。

証券口座に置くことの、正直な注意点

ここは並べて書きます。

内容
利息 預り金のままでは、ほぼ付きません
すぐ使えるか 銀行への出金に日数がかかることがあります
MRF等に置く場合 投資信託なので元本保証ではありません。預金保険の対象でもありません
破綻したとき 返ってくるのが原則でも、手続きに時間がかかります

💰実際は

「保護のされ方」だけで決める話ではありません。 すぐ使うお金なら、引き出しやすさのほうが効きます。 何を重く見るかで、置き場所が変わります。

🔴 その前に。本当に超えていますか

いちばん大事な確認です。

預金保険の枠は、1金融機関ごと・預金者1人あたり1,000万円+利息。 ここを超えていないなら、この話は最初から関係ありません。

図解③ 確かめる順番

①

1つの銀行の残高を合算して、1,000万円を超えていますか

▼

②

超えていないならここで終わりです。対策は要りません

▼

③

超えているなら、まず決済用預金・銀行を分けるを確かめます

▼

④

そのうえで、置き場所の設計を選びます

「対策」を売りに来る側は、②で終わる可能性を先に言いません。 それは嘘をついているのではなく、そこで終わると商品が売れないからです。

聞かれたときに確認する4つ

図解④ 窓口で言われたら

①

「その商品は預金保険の対象ですか」(対象外なら、対策になっていません)

▼

②

「元本割れはありますか」(破綻以外で減る可能性の話です)

▼

③

「決済用預金はありますか」(全額保護される預金です)

▼

④

「手数料は年いくらですか」(対策の代金です)

①だけで、話の大半は整理できます。 「保護されないので、保護されない商品へ」という提案なら、それは保護の話ではありません。

まとめ

「1,000万円を超えると保護されません」

  • 前半は事実です。 一般預金等は1金融機関ごと・預金者1人あたり元本1,000万円と利息まで
  • 🔴 ただし勧められる投資信託・一時払いの保険・外貨預金は、預金保険の対象ではありません
  • 預金保険が守るのは法律が定める「預金等」です。投資信託や保険は、その定義に入っていません
  • 「保護される」と「元本が減らない」は別です。後者は銀行が健全でも起こります
  • 決済用預金は全額保護されます。要件は決済に使える・いつでも払い戻せる・利息が付かないの3つ
  • 🔴 証券口座の1,000万円は意味が違います。 顧客資産は分別管理され、金銭は信託会社に信託され、公認会計士の監査を受けます
  • 基金の1,000万円は、その分別管理が守られなかったときの上限です。銀行の1,000万円は「そこまでしか守らない」上限
  • ただし証券口座にも注意点があります。利息はほぼ付かず、出金に日数がかかり、MRF等は元本保証ではありません
  • 口座を増やすことと、管理が回ることは両立させる必要があります

聞かれたときに確かめるのは、この一問です。

「その商品は、預金保険の対象ですか」

そして、自分に確かめる一問です。

「1つの銀行で、本当に1,000万円を超えていますか」

超えていないなら、この話はここで終わります。


銀行の窓口で投資商品を勧められたときは「銀行だから安心して投資できます」は本当?、「減らない」と説明されたときは「元本保証で増えます」は本当?、口座と商品を混同しやすい話は「NISAをやらないと損ですよ」は本当?にまとめています。

📋 契約前にここを確認

  • そもそも、1金融機関で1,000万円を超えていますか?
  • 勧められた商品は、預金保険の対象ですか?(投資信託・保険・外貨預金は対象外です)
  • その商品に元本割れはありますか?
  • 「保護される」と「元本が減らない」を、同じ意味で説明されていませんか?
  • 決済用預金という選択肢は説明されましたか?
  • 口座を増やすことで、管理が回らなくなりませんか?

参照した情報源

  1. 金融庁「預金保険制度」(決済用預金は全額保護/一般預金等は元本1,000万円と利息)
  2. e-Gov 預金保険法 第2条第2項(「預金等」の定義)・第51条の2(決済用預金の要件)・第54条(保険金の額)
  3. e-Gov 預金保険法施行令 第6条の3(保険基準額は千万円)・第2条の2(保険金の額の計算上除かれる預金等)
  4. e-Gov 金融商品取引法 第43条の2(分別管理・顧客の金銭は信託会社等に信託)
  5. e-Gov 金融商品取引法施行令 第18条の12(投資者保護基金による支払の最高限度額は千万円)
  6. 預金保険機構「保護の範囲」

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