「蓄電池で電気代がほぼゼロ」は本当? 蓄電池は発電しません
営業トーク
「蓄電池を付ければ電気代はほぼゼロになりますよ。昼にためた電気で夜も回せます」
結論
蓄電池は発電しません。電気を貯めて使う時間をずらすだけです。得になるのは「買う電気の単価と売る電気の単価の差」だけで、1kWhあたり約22.7円。毎日フルに充放電できた最良のケースで計算しても、回収には十数年から数十年かかります。電気代がゼロになることもありません。
太陽光を載せている家に、こう言われることがあります。
「蓄電池を付ければ、電気代はほぼゼロになりますよ」
「昼にためた電気で、夜も回せます」
まず、いちばん大事なところから確認します。
CHECK
蓄電池は、電気を作りません。
先に結論
この記事の結論
蓄電池がすること
電気を貯めて、使う時間をずらすだけです。発電するのは太陽光パネルのほうです
だから得になるのは
「買う電気」と「売る電気」の差額だけ。31円 − 8.3円 = 1kWhあたり約22.7円
回収年数は
毎日フルに充放電できた最良のケースでも十数年〜数十年。保証期間と並べてください
国民生活センターは
「必ずしも余剰電力の売電より自家消費する方が経済的なメリットが大きいとは限りません」と書いています
🔴 蓄電池は「移すだけ」です
ここを取り違えると、話が全部ずれます。
図解① 太陽光と蓄電池は役割が違う
太陽光パネル
電気を作る。ここで初めて電気が増えます
蓄電池
作った電気を貯めて、夜に回す。電気の量は増えません。使う時間が変わるだけです
だから
蓄電池で減るのは「夜に買っていた電気代」だけ。ゼロにはなりません
太陽光がない家に蓄電池だけ付ける場合は、さらに話が変わります。作る電気がないので、できるのは「安い時間帯に買って、高い時間帯に使う」ことだけです。時間帯別の料金プランでなければ、そもそも差が出ません。
ここに注意
太陽光なしで蓄電池を勧められた場合、何で得をする計算になっているのかを必ず聞いてください。
🔴 得になるのは「差額」だけです
太陽光がある場合で考えます。貯めて自分で使うと、その分の電気を買わずに済みます。いっぽう、売れば売電収入が入ったはずです。
得になるのは、その差の分です。
| 単価 | 出典 | |
|---|---|---|
| 買う電気 | 31円/kWh(税込・目安単価) | 全国家庭電気製品公正取引協議会 |
| 売る電気(2026年度・5〜10年目) | 8.3円/kWh | 資源エネルギー庁 |
1kWh貯めて使うたびに、22.7円の得。 これが蓄電池の本当の効果です。31円まるごとではありません。
補足
電力料金の目安単価は、家電公取協が「電力取引報」(経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会 公表)の集計値などをもとに算出しているものです。契約している会社やプランによって実際の単価は変わります。
回収に何年かかるか
計算式はひとつです。
年間に浮く額は「容量 × 365日 × 22.7円」。毎日きっちりフルに充放電できて、劣化もせず、貯めた分を全部自分で使い切れた場合の数字です。
| 容量 | 年間に浮く額(最良ケース) |
|---|---|
| 5kWh | 約41,000円 |
| 7kWh | 約58,000円 |
| 10kWh | 約83,000円 |
これで回収年数を出します。
図解② 回収年数(最良ケースでの計算)
10kWh
7kWh
5kWh
毎日フルに充放電し、劣化せず、貯めた分を全部使い切れた場合の数学上の計算です。実際はこれより長くなります。
200万円という金額は、こちらで作った数字ではありません。 国民生活センターに寄せられた実際の相談事例に出てくる契約額です(後述)。
実際は
最良のケースで計算しても、この年数です。 見積書に書かれている保証期間と、この回収年数を並べてみてください。
電気代は「ほぼゼロ」になりません
言葉のとおりには受け取れない理由が、いくつもあります。
- 基本料金は契約している限りかかります
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金も、電気を買う限り払います
- 雨や曇りが続けば貯まりません。冬は日照時間も短くなります
- 貯めた分を使い切れなければ、その日の効果はその分だけ減ります
減るのは「夜に買っていた電気代」の一部です。ゼロという言葉とは距離があります。
🔴 国民生活センターが注意喚起を出しています
相談は増え続けています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2016年度 | 325件 |
| 2017年度 | 553件 |
| 2018年度 | 926件 |
| 2019年度 | 1,302件 |
| 2020年度 | 1,314件 |
(国民生活センター「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」2021年6月3日公表・PIO-NET登録分)
同センターのアドバイスに、この記事の結論がそのまま書かれています。
家庭用蓄電池導入のメリットだけではなく、それに伴うコストも十分考慮しましょう
必ずしも余剰電力の売電より自家消費する方が経済的なメリットが大きいとは限りません
実際は
「自家消費のほうが得とは限らない」と、公的機関が明記しています。 営業トークの前提そのものが、常に成り立つわけではないということです。
太陽光の点検から誘導されます
相談事例のひとつが、太陽光の記事で扱った点検商法とつながっています。
事業者が「市から委託された」と太陽光パネルの無料点検で訪問した。……「売電するための装置の一部が壊れている」「太陽光パネルが破損している可能性が高い」等と説明された。……「国の補助金が出るので安くなる」と言われたこともあり、約200万円の家庭用蓄電池の契約をした。ところが後日、訪問した工事担当者からは「売電するための装置は壊れていない。部品もモーターも正常だ」と言われた
ほかにも、こうした相談が挙がっています。
- 「今なら工事費、設置費無料」等と長時間勧誘された
- 事業者から「補助金の申請は代行する」と説明されたが実際は申請されていなかった
- 電力会社の関連会社を名乗る事業者に「電気料金が安くなる」と勧誘された
- 「安くできるのはあと2件」等と急かされ、よく検討せずに契約してしまった
CHECK
同センターのアドバイスは、そのまま使えます。 「その場で契約をせずに複数社から見積もりをとり比較検討しましょう」
価格の幅が大きい商品です。 上の表のとおり、100万円と200万円では回収年数が4倍変わります。1社の見積もりだけで決められる買い物ではありません。
公平に書いておきます
蓄電池に意味がない、と言いたいわけではありません。
- 停電時に使えます。 これは金額に換算しにくい価値です
- 電気代が上がるほど、自家消費の価値は上がります(差額が広がるため)
- 卒FIT後(買取期間の10年が終わったあと)は売電単価がさらに下がるため、自家消費に回す判断は理にかないます
「災害に備えたい」という理由で買うなら、それは合理的です。 この記事が言っているのは、「電気代がほぼゼロになるから元が取れる」という理由づけだけは検算しましょうということです。
まとめ
「蓄電池で電気代がほぼゼロになります」
- 蓄電池は発電しません。 貯めて時間をずらすだけです
- 得になるのは差額だけ。31円 − 8.3円 = 1kWhあたり約22.7円
- 回収年数は、毎日フル充放電できた最良ケースでも十数年〜数十年
- 電気代はゼロになりません。 基本料金・再エネ賦課金・雨天は残ります
- 国民生活センターは「必ずしも余剰電力の売電より自家消費する方が経済的なメリットが大きいとは限りません」と書いています
- 相談件数は2020年度で1,314件。太陽光の無料点検から誘導される事例もあります
「ほぼゼロ」は感想です。金額に置き換えてもらいましょう。
「年間でいくら電気代が減る計算ですか? その根拠を見せてください」
出てきた数字で見積書の総額を割れば回収年数が出ます。あとは保証期間と並べてください。
太陽光そのものの損得は「太陽光を載せれば電気代がほぼゼロ」は本当?、その場で契約を迫られたときの対処は営業されたら確認する10項目にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- 蓄電池の容量は何kWhで、総額はいくらですか?
- 保証期間は何年ですか?(回収年数と並べてください)
- 年間でいくら電気代が減る計算ですか?その根拠は?
- 太陽光がない場合、何で得をする計算になっていますか?
- 補助金は誰が申請しますか?いくら出ますか?