「変動金利のほうが得です」は本当? 上がったときに降りられる人の話です
営業トーク
「変動のほうが金利が低いので、変動にしておくほうが得ですよ」
結論
変動金利は、金利が上がったときに一括返済できる人にとっては選択肢が2つある状態です。上がれば返し、上がらなければ払い続ければよいからです。一括返済できない人には、その選択肢がありません。5年ルールと125%ルールは毎月の返済額の上昇を抑えますが、住宅金融支援機構は「1.25倍を超えた未払利息は支払わなくてもよいわけではありません」と明記しています。返済額が抑えられても、支払う総額が抑えられるわけではありません。
住宅ローンの窓口で、よく言われます。
「変動のほうが金利が低いので、変動にしておくほうが得ですよ」
「これまで大きく上がったことはありませんし」
いま、実際に上がっています。
先に結論
この記事の結論
一括返済できる人には
選択肢が2つあります。上がれば返す、上がらなければ払い続ける
できない人には
選択肢がありません。上がった金利を、払い続けるしかありません
5年・125%ルールは
毎月の額を抑えるだけです。超えた分は未払利息として残ります
つまり
「変動が得か」ではなく「上がったときに降りられるか」という質問です
🔴 いま、金利は上がっています
まず事実の確認から。日本銀行の決定です。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、1.25%程度で推移するよう促す (日本銀行「金融市場調節方針の変更について」・2026年9月18日)
2026年6月に0.75%程度から1.0%程度へ(6月16日の決定)、9月に1.25%程度へ引き上げられました。10月30日の会合でも1.25%程度が維持されています(10月30日の決定)。
では、これが住宅ローンにどうつながるのか。住宅金融支援機構が金融機関に聞いた調査があります。
基準金利(店頭金利)の見直しにあたり、主に参照する金利としては、「短期プライムレート」が最も多く、次に「長期プライムレート」などが続いている。 返済中の適用金利の基準金利を見直す時期は、半期毎(4月、10月)が最も多い。 (住宅金融支援機構「2025年度住宅ローン貸出動向調査結果」・金融機関292社への調査)
図解① 政策金利から、あなたの返済額まで
日銀の政策金利
2026年に0.75%→1.0%→1.25%
短期プライムレート
多くの銀行が、基準金利を決めるときに主に参照する指標
基準金利(店頭金利)
見直しは半期ごと(4月・10月)が最も多い
あなたの返済額
ここに5年ルール・125%ルールが入ります
5年ルールと125%ルール ── 守ってくれるように見えて
多くの人が「変動でも急には上がらない」と聞いています。その根拠がこの2つです。
適用金利が上昇した場合の返済額の見直しについては、5年間は返済額が変わらず、その後最大で125%まで増加する、いわゆる「5年・125%ルール」が最も多い。 (同・住宅金融支援機構の調査)
図解② 2つのルールがしていること
5年ルール
金利が上がっても、5年間は毎月の返済額が変わりません
125%ルール
5年後の見直しでも、前の返済額の1.25倍が上限です
ただし
抑えているのは「毎月の額」だけ。金利そのものは半年ごとに上がっています
CHECK
⚠️ 「最も多い」であって、全部ではありません。 このルールがない契約では、上がった分がそのまま返済額に反映されます。 自分の契約はどちらなのか、必ず確認してください。
🔴 未払利息 ── 消えるわけではありません
ここが、この記事のいちばん重要なところです。返済額が抑えられている間、差額はどこへ行くのか。
住宅金融支援機構の説明です。
変動金利型では、半年ごとに借入金利の見直しが行われます。一方で、毎月の返済額の見直しは5年ごとに行われ、見直し後の返済額は、変更前の返済額の1.25倍が限度とされているケースが一般的です。 将来借入金利が大幅にアップし、毎月の「利息の支払額」が毎月の「返済額」を超えてしまった場合は、その超えた分の利息の支払いは繰り延べられることになります。これを「未払利息」といいます。 さらに借入金利のアップが続いた場合……元金は全く減らず、未払利息が積み上がっていく可能性があります(1.25倍を超えた未払利息は支払わなくてもよいわけではありません。ご注意ください。) (住宅金融支援機構【フラット35】「金利のタイプとは?」)
カッコの中が答えです。 未払利息は、免除ではありません。後ろに送られているだけです。
図解③ 抑えられているのは、どれか
抑えられる
毎月の返済額。5年は据え置き、次も1.25倍まで
抑えられない
金利そのもの。半年ごとに見直されます
抑えられない
支払う総額。元金が減らず、未払利息が積み上がります
ここに注意
「返済額が変わらない」=「負担が増えていない」ではありません。 元金が減っていないなら、それは先送りです。
なお、この説明をしているのは全期間固定型の【フラット35】を扱う住宅金融支援機構です。立場のある説明ではありますが、未払利息のしくみそのものは事実として確認できます。
🔴 だから、分かれ目は「降りられるか」
ここまでが制度の話です。ここからが、判断の話になります。
同じ変動金利でも、借りる人によって意味がまったく違います。
図解④ 金利が上がったとき、何ができるか
一括返済できる人
選択肢が2つ。上がったら返す。上がらなければ、低い金利のまま払い続ける
一括返済できない人
選択肢はゼロ。上がった金利を、払い続けるしかありません
つまり
変動金利が有利に働くのは「途中で降りられる人」です
手元に返せるだけのお金がある人にとって、変動金利は「上がったらやめられる契約」です。 上がらなければ低い金利のまま。上がったら一括で返す。どちらに転んでも対応できます。
返せるお金がない人にとっては、同じ契約が「上がったら逃げ場のない契約」になります。 最終的な返済総額を、自分でコントロールできません。
実際は
「変動と固定、どちらが得か」は、借りる前には分かりません。 将来の金利が分からないからです。 「上がったときに何ができるか」は、借りる前に分かります。 分かるほうで判断できます。
固定金利は、上限を買うことです
では固定金利は何なのか。上限を買う契約です。
図解⑤ 何を買っているのか
変動金利
いまの金利は低い。上限はありません
固定金利
いまの金利は高い。その差が上限を確定させるための代金です
だから
金利が上がらなければ払い損に見えます。それは保険と同じ構造です
「上がらなかったから固定は損だった」は、結果論です。 借りる時点では、総額が確定していること自体に価値があるかどうかを判断することになります。
返済額が読めないと家計が回らない人にとっては、そこに払う価値があります。上がっても返せる人にとっては、その必要は薄くなります。
補足
どちらが正しいという話ではありません。 自分がどちら側なのかで、答えが変わるという話です。
借りる前に、確認できること
図解⑥ 契約前に聞く4つ
①
この契約に5年ルール・125%ルールはありますか
②
基準金利は何を参照して、いつ見直されますか
③
金利が何%になったら、返済額はいくらになりますか
④
繰上返済・一括返済の手数料はいくらですか
③は、その場で試算してもらえます。 「1%上がったら」「2%上がったら」と聞いてください。その金額を見て払えないと感じるなら、それが答えです。
④も大事です。「上がったら返せばいい」という戦略は、返すときの費用まで含めて成り立ちます。
まとめ
「変動金利のほうが得です」
- 政策金利は2026年6月に0.75%から1.0%へ、9月に1.25%へ引き上げられ、10月30日も1.25%程度が維持されています
- 変動金利の基準金利は、短期プライムレートを参照する金融機関が最も多い
- 5年・125%ルールは「最も多い」であって、全部ではありません。 自分の契約を確認してください
- このルールが抑えるのは毎月の返済額だけです
- 🔴 超えた分は未払利息として残ります。 機構は「支払わなくてもよいわけではありません」と明記しています
- 一括返済できる人にとって、変動は「上がったらやめられる契約」です
- できない人にとっては、「上がっても逃げ場のない契約」になります
- 固定金利は、上限を買う契約です。上がらなければ払い損に見えるのは、保険と同じ構造です
聞かれたときに確かめるのは、この一問です。
「金利が2%上がったら、私の返済額はいくらになりますか」
そして、自分に確かめる一問です。
「そのとき、一括で返せますか」
答えが「返せない」なら、変動が得かどうかという話ではなくなります。
家を買うかどうかそのものは「持ち家は資産になります」は本当?、賃貸側の話は家賃の値上げ通知は断れる、リスクの取り方の考え方は「元本保証で増えます」は本当?にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- 自分の契約に5年ルール・125%ルールはありますか?(全部の銀行にあるわけではありません)
- 金利が何%になったら、返済が苦しくなりますか?
- そのとき、一括返済または大きな繰上返済ができますか?
- 繰上返済の手数料はいくらですか?
- 基準金利は何を参照して、いつ見直されますか?