「自宅に住んだまま、まとまったお金が入ります」は本当? 入ります。その後に出ていくものを見ます
営業トーク
「自宅に住んだまま、まとまったお金が入りますよ。将来買い戻すこともできます」
結論
リースバックは売却、リバースモーゲージは借入で、別の仕組みです。リースバックでは所有権が移り、その後は家賃を払い続けます。国民生活センターには、6年住んだ後に家賃を7万円から10万円へ値上げされた例、200万円で売った自宅の買い戻しに1,000万円を提示された例が載っています。自宅を不動産業者に売る契約に、宅地建物取引業法のクーリング・オフは適用されません。2026年10月1日からは、家賃・契約期間・違約金・買戻し特約を告げないことが同法上の禁止行為にあたると明確化されます。まとまったお金が入るのは本当です。その後に出ていくものを、同じ紙の上で見てください。
年金だけでは心もとない、という話をしていると出てきます。
「自宅に住んだまま、まとまったお金が入りますよ」
「将来、買い戻すこともできます」
まとまったお金が入るのは、本当です。 問題は、その後に出ていくもののほうです。
そして、来月から国の規制が変わります。
先に結論
この記事の結論
2つは別物です
リースバック=売却/リバースモーゲージ=借入。所有権が移るかが分かれ目
リースバックは
売った後も家賃を払い続けます。住む期間が長いほど、総額が売却代金に近づきます
自宅の売却に
クーリング・オフは適用されません。守られるのは買主だけです
2026年10月1日
家賃・契約期間・違約金・買戻し特約を告げないことが宅建業法上の禁止行為だと明確化されます
見るべきは
入ってくる額と、出ていく総額を、同じ紙の上に並べること
まず、2つは別の仕組みです
名前が並んで出てくるので混ざりますが、まったく違います。
| リースバック | リバースモーゲージ | |
|---|---|---|
| 性質 | 売却 | 借入 |
| 所有権 | 相手に移る | 自分のまま |
| 受け取り方 | 売却代金を一括 | 融資(一括または定期的に) |
| その後の支払い | 家賃 | 利息 |
| 終わり方 | 賃貸借が続く限り住む | 死亡時に一括返済または担保物件を売却 |
| 固定資産税 | かからなくなる | かかり続ける |
「自宅に住んだまま、お金が入る」という結果だけが同じで、中身は別です。
🔴 リースバック:2026年10月1日から、規制が変わります
いちばん新しい動きから書きます。国土交通省が、宅地建物取引業法のガイドラインを作りました。
現状:近年、住み替え円滑化や老後の資金需要で注目される一方、賃料・契約期間・違約金等の相談が高水準で推移。高齢者を狙った「押し買い」も発生。 課題:売買と賃貸借が不可分一体という複雑な契約形態であり、売主である一般消費者にとって取引内容の理解が不十分なまま契約に至るケースあり。 (国土交通省「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法ガイドラインの策定」・令和8年10月1日施行)
🔴 「告げないと違法」の一覧が、そのままトラブルの一覧です
ガイドラインは、故意に事実を告げないことが禁止される事項を具体的に挙げています。そして各項目に、対応するトラブル例が添えられています。
| 区分 | 告げないと違法になる事項 | 対応するトラブル例 |
|---|---|---|
| 売買 | 買戻し特約等に関する事項 | 「買戻し特約がなく断られた」 |
| 賃貸借 | 契約解除・違約金に関する事項 | 「解約時に高額な違約金を請求された」 |
| 賃貸借 | 借賃の額・支払方法 | 「家賃が高額で資金不足となった」 |
| 賃貸借 | 契約期間・更新に関する事項 | 「定期借家契約で退去を迫られた」 |
| 賃貸借 | 修繕費用の負担区分 | 「修繕費が売主負担となっていた」 |
(同・根拠は宅地建物取引業法 第47条第1号)
右の列が、実際に起きていることです。 国が条文の解釈を明確化したのは、これらが繰り返されているからです。
さらに、こう書かれています。
※禁止事項のほか、「対応することが望ましい事項」として、売買価格・賃料の算定根拠や、売買代金と契約期間内の賃料合計額との相応関係を明示 ※過失による不告知の場合も、法第31条第1項(信義誠実義務)に抵触のおそれがある旨も明確化 (同)
CHECK
🔴 「売買代金と契約期間内の賃料合計額との相応関係」 ── ここが核心です。 いくら受け取って、期間中にいくら払うのか。 国はこれを示すことが望ましいとしています。 示されないなら、自分で計算してください。
🔴 国民生活センターの相談事例
2026年8月4日に公表された注意喚起から、そのまま引きます。
事例①:6年後に家賃を値上げされた
6年前、生活が苦しく築40年の分譲マンションのリースバック契約をした。約1000万円で売却し、家賃7万円で賃貸借契約をした。先日、貸主であるリースバック業者から家賃を約10万円に値上げすると言われた。貸主は転売を考えているようで、値上げに不満なら退去するよう言われたが私は退去するつもりはない。 (2025年8月受付 70歳代 女性)
この6年間に払った家賃は、7万円×12か月×6年で504万円です。売却代金1,000万円の半分が家賃に消えています。 そして家賃は上がり、退去を迫られています。
事例②:買い戻しに5倍を提示された
1年前に自宅マンションを200万円で売却し2年間の定期借家契約を結び、家賃2万円を払って住み続けている。賃貸借契約終了後に退去しなければならない可能性があるので、買い戻したいと不動産業者に申し出たところ、購入額として1000万円を提示され困っている。 (2025年8月受付 70歳代 男性)
「将来買い戻すこともできます」は、金額の約束ではありません。 買戻し特約がなければ、相手の言い値になります。
事例③:リフォームが入口になっていた
母が一人で暮らしている家に業者Aが訪問し、床のリフォーム工事の契約をしたが、支払えないと母が言うと、不動産業者Bを案内された……母はよく分からずに1100万円で自宅を売却し賃貸借契約をした……また、リースバック契約と同じ日に業者Cが訪問し、450万円のキッチン等のリフォーム工事を契約していた……自宅の売却額では3年程しか住み続けられない。 (2026年2月受付 70歳代 女性)
同センターは、この型について明確に書いています。
リフォームによって売却価格が上がるわけではなく、他人の所有物になる住宅のリフォーム代金を払わされている形となり、リースバック契約の利用目的として不適切と考えられます。 (国民生活センター「自宅の『リースバック』トラブルにご注意!」)
訪問のリフォーム営業そのものは「今すぐ外壁塗装が必要です」は本当?にまとめました。
🔴 自宅の売却に、クーリング・オフは効きません
ここは条文で確認できます。宅地建物取引業法のクーリング・オフは、こう書かれています。
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、……当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主は、……書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除……を行うことができる。 (宅地建物取引業法 第37条の2第1項)
守られているのは「買主」です。 リースバックで自宅を売る消費者は売主なので、この条文の外側にいます。
消費者が不動産業者に自宅を売却する場合には、宅地建物取引業法に定めるクーリング・オフが適用されないため、売買契約が成立してしまうと、無条件で契約を解除することはできません。 売主が契約を解除する場合は、手付金の倍額を買主に支払う、いわゆる「手付倍返し」で解除することとなり、手付解除が可能な期間を過ぎると、ほとんどの場合、契約条項に基づく違約金が必要となる (同・国民生活センター)
図解① 訪問販売との違い
買うとき
訪問販売なら特商法、宅建業者から買うなら宅建業法。撤回できる場面があります
売るとき
クーリング・オフの規定がありません。成立したら無条件解除はできません
だから
この取引は「契約する前」しか止められません
クーリング・オフ全般の使い方はクーリング・オフの使い方に、そもそも会わない設計は「話を聞くだけでもどうですか」は本当?に書きました。
リバースモーゲージのほう
こちらは借入です。所有権は自分のまま残ります。
公的な枠組みとして、住宅金融支援機構の【リ・バース60】があります。中身を見ると、営業で語られる姿とはだいぶ違います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 満60歳以上(満50〜60歳未満も可・限度額は異なる) |
| 融資限度額 | 担保評価額の50%または60%(長期優良住宅は55%または65%)、上限1億2,000万円 |
| 毎月の支払い | 利息のみ |
| 元金の返済 | 契約者が亡くなったときに、相続人が一括返済するか担保物件の売却で返済 |
| ノンリコース型 | 売却して残った債務の返済が不要 |
| 金利 | 変動金利と全期間固定金利 |
🔴 実際の利用実態
機構が四半期ごとに公表しています。平均値が、この商品の性格を教えてくれます。
申込者属性(平均)年齢:70.9歳、年収:396万円 資金計画(平均)所要額:3,131万円、融資額:1,615万円、毎月支払額:4.7万円 資金使途(割合)戸建リフォーム(25.0%)、新築マンション(24.4%)、注文住宅(23.5%)、借換え(17.7%)、中古マンション(5.8%) 利用タイプ(割合)ノンリコース型(100.0%) (住宅金融支援機構「【リ・バース60】の利用実績等について」・2025年10〜12月申請分)
図解② 数字が語っていること
毎月4.7万円
「利息のみ」ですが、平均で月4.7万円を払い続けます
所要額3,131万円に対し融資額1,615万円
半分ほどしか借りられていません。担保評価額の50〜60%という上限があるため
資金使途は住まい関係
リフォーム・新築・注文住宅・借換え。「老後の生活費」は入っていません
つまり
これは住み替え・建て替えのためのローンです。生活費のための制度ではありません
実際は
「老後の生活費に」と勧められるリバースモーゲージは、この公的な枠組みとは別のものであることが多くなります。 金利のタイプ、融資限度額、残債務の扱い、推定相続人の同意が要るかどうかは、商品ごとに違います。 公的な枠組みの条件を先に知っておくと、比べる物差しができます。
🔴 「借金だけが残る」は、商品によります
よく言われる心配です。正確に書きます。
ノンリコース型なら、担保物件を売って足りなくても、相続人が残債務を返す必要はありません。 リ・バース60では、利用の100.0%がノンリコース型でした。
ただし、リコース型なら残債務は相続人に残ります。 民間が独自に出している商品には、リコース型もあります。そこは契約ごとに確かめることです。
図解③ リバースモーゲージで本当に効くリスク
① 長生きしたとき
融資枠は担保評価額の5〜6割。使い切ったら、そこで資金は止まります
② 家の価値が下がったとき
担保評価が下がれば、借りられる額も下がります
③ 金利が上がったとき
変動金利なら、毎月の利息が増えます(平均で月4.7万円)
共通するのは
自分では止められない要因で、条件が変わることです
金利が上がる側の考え方は「変動金利のほうが得です」は本当?にまとめています。
2つに共通していること
図解④ どちらも「家の価値を先に受け取る」契約です
共通点
将来の家の価値を、いま現金にして受け取ります
だから
受け取れるのは市場価格より少ない額です。差が相手の取り分になります
そして
その後家賃または利息を払い続けます。長く住むほど総額は増えます
比べる相手は
普通に売って住み替える場合。そちらは市場価格で売れて、家賃は住む家の分だけです
「普通に売る」という選択肢を、必ず横に置いてください。 手放すのが同じなら、市場で売ったほうが受け取る額は大きくなります。 住む場所は別に探すことになりますが、家賃はそちらでも発生します。
補足
この記事は「使うな」とは書きません。 住み替え先が決まらない、思い入れがある、引っ越す体力がない──成り立つ場面はあります。 ただしその判断は、金額を並べてからするものです。
⚠️ 生活費に困っているなら、順番が違います。 国民生活センターも「『お金が払えないからリースバック』は危険」と書いています。公的な支援の窓口に先に相談してください。
聞かれたときに確認する4つ
図解⑤ 提案を受けたら
①
「これは売却ですか、借入ですか」(所有権が移るかどうか)
②
「契約期間中に払う家賃の合計はいくらですか」(売却代金と並べてください)
③
「普通借家ですか、定期借家ですか」(定期借家なら期間で終わります)
④
「買戻し特約はありますか。いくらで買い戻せますか」
②と④は、2026年10月1日から「告げないと違法になる」項目です。 聞いて答えないなら、それ自体が判断材料になります。
そして、その場で決めないこと。 この取引はクーリング・オフができません。止められるのは契約前だけです。
まとめ
「自宅に住んだまま、まとまったお金が入ります」
- リースバックは売却、リバースモーゲージは借入です。所有権が移るかが分かれ目です
- 🔴 2026年10月1日、リースバックに宅地建物取引業法のガイドラインが施行されます
- 買戻し特約・違約金・家賃の額・契約期間・修繕費の負担を告げないことが、同法47条1号の禁止行為にあたると明確化されます
- 国交省は「売買代金と契約期間内の賃料合計額との相応関係」を示すことが望ましいとしています
- 国民生活センターの事例:約1,000万円で売却・家賃7万円が6年後に10万円へ値上げ/200万円で売った自宅の買い戻しに1,000万円を提示
- 🔴 自宅の売却にクーリング・オフは適用されません。 宅建業法37条の2が守るのは買主です
- リ・バース60の実態は、平均年齢70.9歳・融資額1,615万円・毎月支払額4.7万円
- 借りられるのは担保評価額の50〜60%。所要額3,131万円に対し融資額は1,615万円でした
- 資金使途はリフォーム・新築・注文住宅・借換え。 公的な枠組みは住まいのためのローンです
- ノンリコース型なら残債務は相続人に残りません(リ・バース60は利用の100.0%)。ただしリコース型もあります
聞かれたときに確かめるのは、この一問です。
「契約期間中に払う家賃の合計は、いくらですか」
そして、自分に確かめる一問です。
「普通に売った場合と、並べて比べましたか」
まとまったお金が入るのは本当です。 見ていないのは、その後に出ていくもののほうです。
家そのものの見方は「持ち家は資産になります」は本当?、相続をからめた不動産の営業は「相続税対策になりますよ」は本当?、向こうから来る営業の断り方は「話を聞くだけでもどうですか」は本当?にまとめています。
📋 契約前にここを確認
- それは売却ですか、借入ですか?(所有権が移るかどうかが分かれ目です)
- 賃貸借は普通借家ですか、定期借家ですか?何年ですか?
- 契約期間中に払う家賃の合計は、売却代金のいくらにあたりますか?
- 買戻し特約はありますか。買い戻せる金額はいくらですか?
- 家賃はどういうときに、いくらまで上がりますか?
- 修繕費は誰の負担ですか?
参照した情報源
- 国民生活センター「自宅の『リースバック』トラブルにご注意!」(2026年8月4日公表・相談事例)
- 国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」(2025年5月21日公表)
- 国土交通省「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法ガイドラインの策定」(令和8年10月1日施行)
- 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(令和4年6月)
- e-Gov 宅地建物取引業法 第37条の2(クーリング・オフ)・第47条(業務に関する禁止事項)・第31条(業務処理の原則)
- 住宅金融支援機構「リ・バース60」(融資限度額・毎月の支払・ノンリコース型)
- 住宅金融支援機構「【リ・バース60】の利用実績等について」(令和8年2月27日・2025年10〜12月分)